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「私、今日でお店辞めるんです」
え、そうなの。彼女を彼女の家まで送る帰り道の途中、あまりに唐突すぎることを打ち明けられ、僕は上手くリアクションが出来なかった。
「専門学生の就活って遅いんですよ。夏休みから。それで、これからは就活に専念しますんで、今日でケーキ屋さんのアルバイトは終わりってわけです」
「そうだったんだ。もっと早くに言ってくれたらよかったのに」
「だって、なんだかしんみりしちゃうじゃないですか」
そう言う彼女の横顔は確かに寂しそうで、ちゃんと店員仲間として接したのはここ二、三ヶ月間だけだったとはいえ僕も切ない思いがする。
「……まーちゃんと初めて会ったのは、私が高二のときでしたね。アルバイトとしてあのお店に採用してもらって、初めて出勤した日に出かけのまーちゃんを見て。実はちょっとかっこいいなって思いました」
「ああ、もう四年になるのか」
しみじみと高校二年生だった彼女を思い出そうとして、あまり思い出せないことに気付きまずいなと思った。三木さんのことはただのアルバイトの子としてしか見てなかったから、高校のときの三木さんがどうだったとかっていう話をされても、上手く返事が出来る自信が無い。
「高三で受験で少しバイトをお休みして。無事専門学校に受かってまたバイトを始めた時、久しぶり、元気してた?って言ってくれて、嬉しかったんですよ」
そういえばそんなこともあったな、と思う。時が経つのはあっという間だな。大学一年生が大学四年生、高校二年生が就活、だもんな。
「三ヶ月前からまーちゃんも一緒に働くようになって、まーちゃんって呼んでくれていいよって言ってくれて。私ちょっとどきっとしました」
「そうなの?」
そんなことでどきっとしてもらえるならいいな。あの子にも言ってみようか、まーちゃんって呼んでねって。流石にきもいか。
「それで、私。あの……まーちゃんのこと、ずっと前から……好きでした」
「……え?」
はっとなって僕は横を見た。三木さんはうつむいていて、それでも耳が真っ赤になっているのを見て、たった今進行形でその顔を赤くしていることが窺えた。
三木さんが……僕のことを、好きだって?
「えっと、」
何か返さなくては、と僕は取り乱す。三木さんの横顔には「頼むからそれ以上見ないで」と書いてある様に思えた。それで余計に僕は言葉を失う。
ふと、あの女の子の顔が頭をよぎる。
自分は相手のことをなんとも思っていなかったとしても、相手は自分のことをどうしようもなく好きで。
告白されるって、こういうことなのか。
こんなに恥ずかしくて、予想外すぎて、天と地がひっくり返ってしまいそうな気持ち――。
「ごめん」
なるべく穏やかな声を出すよう僕は努めた。三木さんが顔を挙げる。しかしこちらは見なかった。
「僕、好きなひといるんだ」
「……それは、大学の人ですか?」
彼女はきっと気付いているのだろう。視線を落とすと、彼女は拳をぎゅっと握り締めていた。
「……いや、違うよ」
「そうですか。……ありがとうございます」
それから彼女の家に着くまでの間、お互い口を開くことはなかった。しかし、不思議と不快な空気ではなかった。
え、そうなの。彼女を彼女の家まで送る帰り道の途中、あまりに唐突すぎることを打ち明けられ、僕は上手くリアクションが出来なかった。
「専門学生の就活って遅いんですよ。夏休みから。それで、これからは就活に専念しますんで、今日でケーキ屋さんのアルバイトは終わりってわけです」
「そうだったんだ。もっと早くに言ってくれたらよかったのに」
「だって、なんだかしんみりしちゃうじゃないですか」
そう言う彼女の横顔は確かに寂しそうで、ちゃんと店員仲間として接したのはここ二、三ヶ月間だけだったとはいえ僕も切ない思いがする。
「……まーちゃんと初めて会ったのは、私が高二のときでしたね。アルバイトとしてあのお店に採用してもらって、初めて出勤した日に出かけのまーちゃんを見て。実はちょっとかっこいいなって思いました」
「ああ、もう四年になるのか」
しみじみと高校二年生だった彼女を思い出そうとして、あまり思い出せないことに気付きまずいなと思った。三木さんのことはただのアルバイトの子としてしか見てなかったから、高校のときの三木さんがどうだったとかっていう話をされても、上手く返事が出来る自信が無い。
「高三で受験で少しバイトをお休みして。無事専門学校に受かってまたバイトを始めた時、久しぶり、元気してた?って言ってくれて、嬉しかったんですよ」
そういえばそんなこともあったな、と思う。時が経つのはあっという間だな。大学一年生が大学四年生、高校二年生が就活、だもんな。
「三ヶ月前からまーちゃんも一緒に働くようになって、まーちゃんって呼んでくれていいよって言ってくれて。私ちょっとどきっとしました」
「そうなの?」
そんなことでどきっとしてもらえるならいいな。あの子にも言ってみようか、まーちゃんって呼んでねって。流石にきもいか。
「それで、私。あの……まーちゃんのこと、ずっと前から……好きでした」
「……え?」
はっとなって僕は横を見た。三木さんはうつむいていて、それでも耳が真っ赤になっているのを見て、たった今進行形でその顔を赤くしていることが窺えた。
三木さんが……僕のことを、好きだって?
「えっと、」
何か返さなくては、と僕は取り乱す。三木さんの横顔には「頼むからそれ以上見ないで」と書いてある様に思えた。それで余計に僕は言葉を失う。
ふと、あの女の子の顔が頭をよぎる。
自分は相手のことをなんとも思っていなかったとしても、相手は自分のことをどうしようもなく好きで。
告白されるって、こういうことなのか。
こんなに恥ずかしくて、予想外すぎて、天と地がひっくり返ってしまいそうな気持ち――。
「ごめん」
なるべく穏やかな声を出すよう僕は努めた。三木さんが顔を挙げる。しかしこちらは見なかった。
「僕、好きなひといるんだ」
「……それは、大学の人ですか?」
彼女はきっと気付いているのだろう。視線を落とすと、彼女は拳をぎゅっと握り締めていた。
「……いや、違うよ」
「そうですか。……ありがとうございます」
それから彼女の家に着くまでの間、お互い口を開くことはなかった。しかし、不思議と不快な空気ではなかった。
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