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6話 テロップは便利です
しおりを挟むサトリア家の領地は帝国の東側にある。だが私たちの住まいは、首都の貴族が住む界隈の外れにある。首都には本当に数えきれないほどのブティックが並んでいた。
私はエリーともう一人メイドを連れて、以前から贔屓にしているブティックへ来ていた。
「うーん、もう少しシンプルなデザインがいいかな」
目の前にズラリと並べられたドレスを見て、目をチカチカさせながら私は言った。
ドレスにぎっしりと縫い付けられたビーズやレース、ドレスを覆い尽くしそうなほどのリボンの量。その色合いも、派手なんて域をはるかに超えているわ。
どうやらこの店のドレスは、全部こんなデザインみたいだ。考えてみれば前のローズが贔屓にしていた店だものね。
私はローズのクローゼットにあったドレスを思い浮かべていた。彼女の好みなんだから当然か。
仕方ない店を変えるしかないわ。
「ローズ様、どちらへ参りましょうか?」
「困ったわねえ」
派手派手ブティックの店先で少し考えていると
「あら、エリーじゃない?」
三十代位の品のいい女性がエリーに声を掛けた。
「あ、ミーガン様」
私がその女性に視線を移すと、『ミーガン・クリストウ三十六歳・皇帝の第一皇妃・ジェームズの妹』
と女性の胸元にテロップが浮かび上がった。反射的に瞬きをしたが、消えない。
ええ~これってテロップ?! 異世界って便利じゃん! 親戚の顔を思い出すまで時間がかかってたら怪しまれるもんね。
そのミーガンは、ぱっと見ではローズだと気づかなかった。
「まさか……ローズなの?」
「ミーガン叔母様。はい、ローズです。ご無沙汰しております」
相手は皇妃様なんだから丁寧にご挨拶しないとね。
ミーガンはなぜか面食らっている。そしてもう一度まじまじとローズの顔を見直した。
「あら、痩せたせいか態度まで大人びて見えるわね。ところでお買い物かしら」
ミーガンの視線の先にはブティックがあった。ここがローズ御用達と言うことを知ってるのね。
「それが……気に入るデザインが無くて困ってました」
痩せてドレスが必要になったこと、違うブティックを探すところだった旨をミーガンに話した。
「それなら私がいい所を紹介するわ。ちょうど私も行く用事があったのよ」
にこやかに私たちを招いてくれるミーガン叔母さまは、さすが帝国の第一皇妃様、侍女やら護衛の騎士やらをぞろぞろと引き連れていた。
そのご一行様に加わった私たちは、派手派手ブティックからほど遠くない上品な、それでいて豪華なブティックに連れられて行った。
そこで私は、ミーガン叔母さまにも見立ててもらいながら数着ドレスを注文した。一時間以上かけてやっと終わると、彼女は私をお茶に誘った。
「この先にスィーツがとても美味しいお店があるのよ。ローズはスィーツに目がないでしょう?」
まだダイエット中だったが、久しぶりに会った叔母の誘いを無下に断るわけにもいかず、私はミーガンに従った。
向こうの世界での私はスリムだったし食の好みも淡泊だったけど、実は甘い物には目が無かったのよね。
(あああああ、スイーツの誘惑には勝てない!)
ミーガンが好意で注文したスイーツはかなりの量で、しかも、どれもこれも美味しそうなものばかりだった。
この世界の食のレベルは高い! それは男爵家での食事でも実感していた。素材の良さを生かすという味付けは、日本人の感覚と近いものがある。
「遠慮せず食べてね。それで……ローズはどうしてそんなに痩せられたの?」
またもとの体重に戻ってしまいそうな誘惑をこんなに並べておいて、そんなことを聞くんですか叔母さま!?
でも――まるで、その答えを最初から知っているみたいな聞き方だった。
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