どうやらこの物語、ヒロインが一度死ぬ仕様です

山口三

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7話 ダイエット指南役?

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 ミーガン叔母様は私が一度死んだことを知らなかった。

 ローズが心臓発作で亡くなったその日に私の魂が入り目を覚ましたので、叔母には話が行かなかったらしい。

 なので私は一度死んでしまった話をして、痩せる決意をしたと叔母に語った。

「そんな大変な事があったとは知らなかったわ……」
「健康になろうと思ったんです。今日はちょっと甘いものを食べてしまいましたけど」

 私はバツが悪そうに笑った。だが叔母は私の努力とその成果にいたく感心していた。その別れ際、近々サトリア家に遊びに来ると笑顔で約束した。


____

 

 一週間後、約束通りミーガン叔母様はサトリア家にやって来た。前回会ったときと同様、護衛騎士が付き、お供の侍女も二人いた。

 でもお父様に会うなら皇宮の方が都合がいいだろうに。皇妃さまは当然皇宮暮らし、お父様も皇宮で働いているんだから。

 その理由は応接間に呼ばれてすぐ判明した。

「ローズ、先日以来ね」
「ミーガン叔母様、ようこそいらっしゃいました」

 応接間で父と母、叔母様と私の四人がお茶を囲んだ。皇宮で供される高級なお茶を、叔母様の侍女が丁寧に淹れてくれていた。

「わあ~いい香り。美味しいお茶ですね」

「ローズにご馳走したくて持って来たのよ。あなた、お茶にお砂糖を入れなくなったのね」

 私はもともとストレートで飲むのが好き。でもここは、最近そうするようにしていると言わなくては。それにしても叔母様はよく見てるわね。

「はい、その方がお茶の味もよく分かると気づきました」

 ミーガンはにっこりと頷いた。

「お兄様、お義姉様。ローズをぜひ皇宮に上がらせてほしいのです」
「えっ」
「それは、お前の侍女としてという事かな?」

 私ははびっくりしたのに、父は別段驚きもせず質問している。

「いえ、第一皇子様の健康管理官として働いてもらいたいの」

 私はもう一度「えっ」と言ってしまった。これにはさすがに父も母も驚いていた。

「ローズが一年ほどでここまで痩せられたのは、本人の努力はもちろんのこと、そのノウハウがあったからしょう? それを皇子様にも実践してほしいのよ」

 それって皇子様も太ってらっしゃるってことかしら? 皇室じゃ毎日美味しいものを山ほど召し上がって、嫌でも体重が増えちゃうのかもしれないわ。

「あの、叔母様。第一皇子様って身の回りのお世話をする方がたくさんいらっしゃるんじゃ?」
「ええ、たくさんいらっしゃるわ。ただ皇子様は痩せて健康になることに興味をお持ちじゃないのよ」

「皇帝陛下にはなんと相談されたのだ?」

 父は慎重な態度を崩さない。ローズの事が心配なのね。

「このままでは皇子様の健康が心配だから、皇帝の命令で健康管理官を置いて強制的に痩せて頂くのはどうか、と申し上げたわ」

 皇帝も息子の現状を憂慮していたらしい。だが皇子の側近や秘書官が何を言っても効果がなく、本人にその気もない。だから皇帝命令で強制的に痩せさせようという計略らしい。

 第一皇子も第二皇子も、亡き皇后の息子だ。でもミーガン叔母様はそのどちらも我が子のように可愛がってると聞く。第一皇子は息子というより姉弟に近い年齢らしいが……。

「わ、私には無理ですわ。一介の男爵令嬢が第一皇子様のダイエット指南なんて」
「ダイエット?」

「あ、ええと減量することです。減量とか痩身のことです」
「それはいいわね。ダイエット管理官で行きましょう!」

 ……それコメディみたいじゃない。日本で言うならダイエット大臣って事でしょ? 

『第○○代内閣・ダイエット大臣 南出冬華』……滑稽だよ、絶対。

 ところが父は意外にも好反応を示した。私と皇子の年齢が近いこともあるし、私自身が成功の証明になるんだからやってみなさい、だって。

 でも相手は皇子様だよ、第一皇子ってことは次期皇帝でしょ?  

 いくら年が近いからってお友達になるんじゃないんだから。食事制限とか運動を提案して、『不敬だー』とか『生意気だー』ってお手打ちにされやしませんか? せっかく生き返ったのに、二年もたたないうちいまた死ぬなんて絶対嫌だわ!

 それに、痩せなければ失敗、失敗すれば皇帝命令の不履行。それって――私の首が飛ぶってことじゃない? やっぱり死亡フラグじゃないの!

「そんなに気負わなくても大丈夫よ。皇子様は根はいい方だから、皇子様のためだって理解していただければきっと協力してくださるわ」

 全然気負ってません。それにって言い方、すっごい気になる! 

 私の考えを読んだかのように、叔母様は付け足した。

「皇子様のお世話係が何人かね、辞めたりしたくらいだから」

 色々言い訳をしてみたが聞き入れてもらえず、準備もあるでしょうから三週間後に迎えを寄越すと言ってミーガン叔母様は帰って行った。

 ミーガン叔母様が去った後、ふと応接間に残った沈黙が重くのしかかった。父も母も、誰一人として「断ろう」とは言わない。
――まだ顔も知らない第一皇子様の存在が、もうすぐ私の日常を壊しに来る。
 
 
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