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9話 皇子の怠惰な1日
しおりを挟むさっそく翌日から皇子のダイエットが開始された。
俄然やる気になった私は、皇子の一日の食事や過ごし方を知るために、三日間、皇宮に泊まり込みさせてもらうことにした。
朝は九時ごろに起きてすぐ朝食。それも夕食並みの量で。
一日目の朝食にはチキン丸焼きの半身、スープは五人分の容器ごと。卵料理の付け合わせにはバターでソテーした野菜が少しとソーセージが七本、白パンが五個、ミルクとお砂糖をたっぷり入れたお茶、最後に果物がどっさり出されていた。
食後は図書室へ直行して今日読む本を選び出し、皇子の秘書官に部屋まで運ばせる。昼まで部屋でお菓子をつまみながら本を読んで、昼になったら昼食。
昼食はピザに似たようなパンが三枚、ポークとトマトのガーリック煮込が大皿で一枚出て来た。プラス、茹でたトウモロコシが一本分とマッシュポテトが山盛りで出てきた。あれはまさに、マッシュポテトのおむすびよ。
昼食の後は二時間も昼寝をして、三時になったらおやつの時間。おやつはプリンが三個とチョコレートケーキが二個とフルーツが少し。
四時から五時までは皇子が担当している政務の報告を受け、五時なったら軽いお茶。
お茶が終わると皇太子教育の時間。ピアノのレッスン、ダンスのレッスン、三日目は外国語のレッスンだった。
でもダンスは椅子に座って見ているだけ! あれはレッスンと言わないわ。鑑賞よ、鑑賞。
夕食まで時間がある時は自室でゴロゴロして過ごし、夕食以降もほぼ部屋から出ず、部屋で飼っている鳥と遊んだり本を読んだりして過ごしていた。
ちなみに夕食はもうメモするのも嫌になるような有様で、見てるだけで気持ちが悪くなった私は、食堂から出てしまった。
本来なら剣術の稽古が午前にあるらしい。だが皇子は体を動かすことを嫌がって拒否しているのだそうだ。そうよね、ダンスすら見てるだけなんだから。
皇子の一日はなんとも緩慢に過ぎて行った。帝国の次期皇帝の一日がこんな調子で本当に大丈夫なの?
皇子の肥満の原因は、まず圧倒的な食べ過ぎ。
その上、どうも甘い物がお好きなようで、暇があったらお菓子を口に運んでいる。水分の取り方は平均的。脂肪分と塩分は多めね、食事の味付けがとても濃い目だ。
食事の改善はもちろん、これはもう基本的な生活態度からひっくり返していかないといけないだろうな。皇子は私のダイエット計画を受け入れてくれるだろうか……。初めて会った時の面倒そうな態度を思い出すと不安になる。
私、本当に大丈夫かな。皇子を変える前に、私が潰れてしまうんじゃないかしら……。
皇宮に来て四日目。まずはダイエットの基本、食事の改善から取り掛かった。
この世界にも大豆に似た豆があったので、それを細かく砕き乾燥させて粉にする。パンを焼くときに少量混ぜて、まずパンの糖質を下げた。
大豆粉が多いとボサボサした食感になるので初めは少しずつ。皇子の食事を作っているコックと試行錯誤しながら作ったパンだ。他にも全粒粉を使ったパンなど数種類を作成。白いパンは全面廃止。
卵料理はバターたっぷりのオムレツを禁止。かさを増すためにジャガイモやホウレンソウを入れたキッシュタイプにした。もちろん生クリームは抜き。毎日中の具材を変えれば飽きないだろう。
毎食のスープも基本はコンソメにして、都度中身を変えるように指示をした。
いきなり量を減らすとストレスになるので、初めは油分カット、塩分カット、糖質カットを心掛ける。
皇子も減量となればまず食事を減らされるだろうと予測していたのか、量的にいつもと変わらない食事が出されると意外そうな顔をした。
「これが、そのダイエット料理とかいうものか?」
「はい、ですが本格的なものではなく、続けやすいように工夫してございます」
「パンは黒っぽいな。なんだ、バターはこれだけか? こんな量ではとても足りないぞ」
「その量でおしのぎ下さいませ」
皇子は皿に乗ったバターとパンを見比べていたが黙って食べ始めた。だがすぐパンを皿に放り出して言った。
「まずい、こんなまずいパンは食べられない」皇子は子どものように顔をしかめて、皿を遠ざけた。
そうして他の料理に移ったが、まずいと思った皿は一口食べただけでそれ以上は絶対に手を付けなかった。
仕方ないわ。初めからすんなり受け入れられるとは思ってなかったもの。
午後のおやつも大豆粉を混ぜたパンケーキを用意した。普段は生クリームをたっぷり盛り付けてチョコレートソースやキャラメルソースの滝を流すらしいが、今日は半分の量のクリームだけにしてフルーツを少しトッピングした。
「お茶に入れる砂糖は白糖ではなくミネラルが豊富なブラウンシュガーに致しました。ですが量は少しずつ減らして行って下さい。ミルクもいけません」
「なんと! お茶やコーヒーにミルクを入れるなと?」
「はい。いずれはお砂糖も入れないで飲むことに慣れて頂きます」
皇子の目が丸くなる。でも朝と昼の食事を残したせいか、午後のパンケーキは物足りないと言いながらも完食していた。砂糖が入っていないお茶にも顔をしかめたが、パンケーキには飲み物が必須だものね、仕方なく飲んでいたわ。
まだまだよ! 皇子様のダイエット地獄はこれから始まるんだから!
ため息をつきながらお茶を飲む皇子を見て、私は内心そう呟いた。
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