25 / 51
25話 いい雰囲気に!
しおりを挟むルイスは応接間に通された。
出迎えた執事が下がると、すぐお茶を持ってローズの母親が部屋に入って来た。
「先日はローズを助けて下さってありがとうございます。ローズはすぐ参りますから、それまでお茶をどうぞ」
「私は出来るだけのことをしたまでですから。サトリア男爵夫人自らお茶を……ありがとうございます」
ルイスは慌てて立ち上がり挨拶した。普通はメイドがお茶を運ぶものだろうに、先日の礼を伝えたかったのだろうかとルイスは考えた。
「今日はいいお天気で……オペラ日和ですわねぇ」
チラチラとルイスを見ながらお茶の用意をしたサトリア夫人が出て行くと、またすぐノックがして今度は兄のリックが入って来た。
「こんにちは、先日以来ですね。ご挨拶が遅れました、僕は兄のリック・サトリアと言います。あ、お茶はもう出てますね。ローズはすぐ来るはずですからそれまで僕が話し相手に……」
リックがソファに腰かけようとすると、ドアの向こうでローズの声がした。
「お父様、ここで何をしてらっしゃるんですか?」
「うん、いや何、その……」
「お待たせしているので失礼しますね、ルイス様お待たせしまし……」
再びノックがしてドアが開くとローズが顔を出したが、そこにリックがいるのを見て目を丸くした。
「お兄様まで何してるんですか?!」
「えーと、ほら! お一人ではブラウン副団長が暇を持て余すと思って、話し相手になりに来たんだよ」
リックの目はローズを避けて泳いでいる。ローズの後ろからサトリア男爵が現れ、わざとらしくコホンと咳払いした。
「そうだ。私もリックと同じ考えで来たんだよローズ、お客様を退屈させては申し訳ないではないか。それに先日のお礼もまだきちんと述べておらんしな」
ルイスはまた立ち上がり、サトリア男爵に挨拶した。
「私はローズの父で……」
「ルイス様、早く参りましょう!」
サトリア男爵が挨拶を始めると、ローズはルイスの手を掴んでさっさと部屋を出て行った。
___________
「やっぱり彼女以上のプリマドンナはいませんね!」
オペラが終わってレストランで食事をしているローズとルイスは、オペラ談議に花を咲かせていた。
「ローズ様に喜んで頂けて良かった。頑張ってチケットを取った甲斐がありました」
(ジャックに言われた通りにして良かった。闘犬試合なんかに連れて行かなくて正解だったな)
「それにしてもうちの家族ったら……お恥ずかしいですわ、入れ替わり立ち替わりルイス様を煩わせてしまって」
「いえ、煩わしいなんて。ローズ様はとてもご家族に愛されていらっしゃるんですね」
「そうですわね、煩わしいことがあっても大切な家族ですわね。でも私のことを放っておいてもらう為には、まず兄に先に結婚していただかなくては!」
「気をそらす作戦ですか?」
「そうです。兄も自分の相手が出来れば、私を構ってる暇は無くなるでしょうし」
「誰でも好きな人が出来たら、その人から目を離せなくなりますね」
そう言ってルイスはじっとローズの瞳を見つめていた。
(うわぁっ、その眼差しはいけません。せっかく緊張も解けてスムーズに話が出来るようになった所だったのに、そんな顔して見つめられたら頭の中が真っ白になっちゃう)
【ヒュ~~ヒュ~~】と冷やかすような声が聞こえてきた。と同時に私の正面、ルイスの頭の辺りに文字が浮かび上がった。
『只今の視聴率3.8%』
ついで、右下辺りにカンペが浮かんだ。『もっといい雰囲気に!』
(なんですか、それは。いい雰囲気になんて強制されると、逆にしらけちゃうわ……。こういうのは無視していいよね)
「デザートも美味しかったですね。私も真似して作って皇子様にお出ししてみようかしら」
話題を変えてみると、ルイスは少し寂しそうな表情を見せたが、静かに微笑んだ。
「ローズ様は本当にジェイミー様によく尽くしていらっしゃる」
「私、頑張るのは得意なんです。よく周りにはそこまでしなくても、って言われますけど」
「ジェイミー様が羨ましい……」ルイスは小声で呟いた。
「えっ?」
「いえ、何でもありません。遅くなってはご家族が心配されますね、お屋敷まで送ります」
______
「只今戻りました」
私が帰るとぞろぞろと家族が出て来て私を居間へ引っ張り込んだ。
「どうだったの? オペラは楽しかった? まさか、ボックス席で二人きり?」
「食事をしてきたのか? お腹は空いてないか?」
「こんな暗くなるまで帰ってこないで……心配したぞ、変なことはされてないだろうな?」
も~~~う、小学生じゃあるまいし!
「オペラは素晴らしかったし、食事も美味しかったし、変なこともされてません! 今日は疲れたので部屋に戻ります!」
変なこと、ってどんなことよ! 部屋に戻ってエリーに着替えを手伝ってもらったあと、やっと私は一人になってベッドに体を投げ出した。
「あ~疲れた。でもあのデザートは美味しかったな。ちょっと工夫して皇子のデザートにしたら喜ばれそう……」
ぼんやり考えていると天井に文字が浮かび上がった。
『只今の視聴率3.6%』
あ、数字が戻っちゃった。ルイスとの仲を進展させなかったからかな? ま、いいや。
アメリカのTVドラマは視聴率1%前後になると番組の打ち切りもあるらしいけど、この世界が打ち切りになるなんてことはないだろうし。数字もまだまだ大丈夫だろうし……。
私は深く考えずに、そのまま眠ってしまった。
0
あなたにおすすめの小説
お城のお針子~キラふわな仕事だと思ってたのになんか違った!~
おきょう
恋愛
突然の婚約破棄をされてから一年半。元婚約者はもう結婚し、子供まで出来たというのに、エリーはまだ立ち直れずにモヤモヤとした日々を過ごしていた。
そんなエリーの元に降ってきたのは、城からの針子としての就職案内。この鬱々とした毎日から離れられるならと行くことに決めたが、待っていたのは兵が破いた訓練着の修繕の仕事だった。
「可愛いドレスが作りたかったのに!」とがっかりしつつ、エリーは汗臭く泥臭い訓練着を一心不乱に縫いまくる。
いつかキラキラふわふわなドレスを作れることを夢見つつ。
※他サイトに掲載していたものの改稿版になります。
ストーカー婚約者でしたが、転生者だったので経歴を身綺麗にしておく
犬野きらり
恋愛
リディア・ガルドニ(14)、本日誕生日で転生者として気付きました。私がつい先程までやっていた行動…それは、自分の婚約者に対して重い愛ではなく、ストーカー行為。
「絶対駄目ーー」
と前世の私が気づかせてくれ、そもそも何故こんな男にこだわっていたのかと目が覚めました。
何の物語かも乙女ゲームの中の人になったのかもわかりませんが、私の黒歴史は証拠隠滅、慰謝料ガッポリ、新たな出会い新たな人生に進みます。
募集 婿入り希望者
対象外は、嫡男、後継者、王族
目指せハッピーエンド(?)!!
全23話で完結です。
この作品を気に留めて下さりありがとうございます。感謝を込めて、その後(直後)2話追加しました。25話になりました。
「わざわざ始まるまでまたないで、今のうちに手を打ったってよくない?」
イチイ アキラ
恋愛
アスター公爵令嬢エステルは、夢をみる。それは先を映す夢。
ある日、夢をみた。
この国の未来を。
それをアルフレッド王太子に相談する。彼女を愛して止まない婚約者に。
彼は言う。
愛する君とぼくの国のためなら、未来を変えるのも仕方なくない?
【完】瓶底メガネの聖女様
らんか
恋愛
伯爵家の娘なのに、実母亡き後、後妻とその娘がやってきてから虐げられて育ったオリビア。
傷つけられ、生死の淵に立ったその時に、前世の記憶が蘇り、それと同時に魔力が発現した。
実家から事実上追い出された形で、家を出たオリビアは、偶然出会った人達の助けを借りて、今まで奪われ続けた、自分の大切なもの取り戻そうと奮闘する。
そんな自分にいつも寄り添ってくれるのは……。
愛する人は、貴方だけ
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
下町で暮らすケイトは母と二人暮らし。ところが母は病に倒れ、ついに亡くなってしまう。亡くなる直前に母はケイトの父親がアークライト公爵だと告白した。
天涯孤独になったケイトの元にアークライト公爵家から使者がやって来て、ケイトは公爵家に引き取られた。
公爵家には三歳年上のブライアンがいた。跡継ぎがいないため遠縁から引き取られたというブライアン。彼はケイトに冷たい態度を取る。
平民上がりゆえに令嬢たちからは無視されているがケイトは気にしない。最初は冷たかったブライアン、第二王子アーサー、公爵令嬢ミレーヌ、幼馴染カイルとの交友を深めていく。
やがて戦争の足音が聞こえ、若者の青春を奪っていく。ケイトも無関係ではいられなかった……。
春告竜と二度目の私
こもろう
恋愛
私はどうなってもいい。だからこの子は助けて――
そう叫びながらも処刑された王太子の元婚約者カサンドル。
目が覚めたら、時が巻き戻っていた。
2021.1.23番外編追加しました。
行動あるのみです!
棗
恋愛
※一部タイトル修正しました。
シェリ・オーンジュ公爵令嬢は、長年の婚約者レーヴが想いを寄せる名高い【聖女】と結ばれる為に身を引く決意をする。
自身の我儘のせいで好きでもない相手と婚約させられていたレーヴの為と思った行動。
これが実は勘違いだと、シェリは知らない。
ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~
紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。
毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる