どうやらこの物語、ヒロインが一度死ぬ仕様です

山口三

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25話 いい雰囲気に!

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 ルイスは応接間に通された。

 出迎えた執事が下がると、すぐお茶を持ってローズの母親が部屋に入って来た。

「先日はローズを助けて下さってありがとうございます。ローズはすぐ参りますから、それまでお茶をどうぞ」

「私は出来るだけのことをしたまでですから。サトリア男爵夫人自らお茶を……ありがとうございます」

 ルイスは慌てて立ち上がり挨拶した。普通はメイドがお茶を運ぶものだろうに、先日の礼を伝えたかったのだろうかとルイスは考えた。

「今日はいいお天気で……オペラ日和ですわねぇ」

 チラチラとルイスを見ながらお茶の用意をしたサトリア夫人が出て行くと、またすぐノックがして今度は兄のリックが入って来た。

「こんにちは、先日以来ですね。ご挨拶が遅れました、僕は兄のリック・サトリアと言います。あ、お茶はもう出てますね。ローズはすぐ来るはずですからそれまで僕が話し相手に……」

 リックがソファに腰かけようとすると、ドアの向こうでローズの声がした。

「お父様、ここで何をしてらっしゃるんですか?」
「うん、いや何、その……」

「お待たせしているので失礼しますね、ルイス様お待たせしまし……」

 再びノックがしてドアが開くとローズが顔を出したが、そこにリックがいるのを見て目を丸くした。

「お兄様まで何してるんですか?!」

「えーと、ほら! お一人ではブラウン副団長が暇を持て余すと思って、話し相手になりに来たんだよ」

 リックの目はローズを避けて泳いでいる。ローズの後ろからサトリア男爵が現れ、わざとらしくコホンと咳払いした。

「そうだ。私もリックと同じ考えで来たんだよローズ、お客様を退屈させては申し訳ないではないか。それに先日のお礼もまだきちんと述べておらんしな」

 ルイスはまた立ち上がり、サトリア男爵に挨拶した。

「私はローズの父で……」

「ルイス様、早く参りましょう!」

 サトリア男爵が挨拶を始めると、ローズはルイスの手を掴んでさっさと部屋を出て行った。


___________



「やっぱり彼女以上のプリマドンナはいませんね!」

 オペラが終わってレストランで食事をしているローズとルイスは、オペラ談議に花を咲かせていた。

「ローズ様に喜んで頂けて良かった。頑張ってチケットを取った甲斐がありました」

(ジャックに言われた通りにして良かった。闘犬試合なんかに連れて行かなくて正解だったな)

「それにしてもうちの家族ったら……お恥ずかしいですわ、入れ替わり立ち替わりルイス様を煩わせてしまって」

「いえ、煩わしいなんて。ローズ様はとてもご家族に愛されていらっしゃるんですね」

「そうですわね、煩わしいことがあっても大切な家族ですわね。でも私のことを放っておいてもらう為には、まず兄に先に結婚していただかなくては!」

「気をそらす作戦ですか?」

「そうです。兄も自分の相手が出来れば、私を構ってる暇は無くなるでしょうし」

「誰でも好きな人が出来たら、その人から目を離せなくなりますね」

 そう言ってルイスはじっとローズの瞳を見つめていた。

(うわぁっ、その眼差しはいけません。せっかく緊張も解けてスムーズに話が出来るようになった所だったのに、そんな顔して見つめられたら頭の中が真っ白になっちゃう)

 【ヒュ~~ヒュ~~】と冷やかすような声が聞こえてきた。と同時に私の正面、ルイスの頭の辺りに文字が浮かび上がった。

『只今の視聴率3.8%』

 ついで、右下辺りにカンペが浮かんだ。『もっといい雰囲気に!』

(なんですか、それは。いい雰囲気になんて強制されると、逆にしらけちゃうわ……。こういうのは無視していいよね)

「デザートも美味しかったですね。私も真似して作って皇子様にお出ししてみようかしら」

 話題を変えてみると、ルイスは少し寂しそうな表情を見せたが、静かに微笑んだ。

「ローズ様は本当にジェイミー様によく尽くしていらっしゃる」

「私、頑張るのは得意なんです。よく周りにはそこまでしなくても、って言われますけど」

「ジェイミー様が羨ましい……」ルイスは小声で呟いた。
「えっ?」

「いえ、何でもありません。遅くなってはご家族が心配されますね、お屋敷まで送ります」


______


「只今戻りました」

 私が帰るとぞろぞろと家族が出て来て私を居間へ引っ張り込んだ。

「どうだったの? オペラは楽しかった? まさか、ボックス席で二人きり?」
「食事をしてきたのか? お腹は空いてないか?」
「こんな暗くなるまで帰ってこないで……心配したぞ、変なことはされてないだろうな?」

 も~~~う、小学生じゃあるまいし!

「オペラは素晴らしかったし、食事も美味しかったし、変なこともされてません! 今日は疲れたので部屋に戻ります!」

 変なこと、ってどんなことよ! 部屋に戻ってエリーに着替えを手伝ってもらったあと、やっと私は一人になってベッドに体を投げ出した。

「あ~疲れた。でもあのデザートは美味しかったな。ちょっと工夫して皇子のデザートにしたら喜ばれそう……」

 ぼんやり考えていると天井に文字が浮かび上がった。

『只今の視聴率3.6%』

 あ、数字が戻っちゃった。ルイスとの仲を進展させなかったからかな? ま、いいや。

 アメリカのTVドラマは視聴率1%前後になると番組の打ち切りもあるらしいけど、この世界が打ち切りになるなんてことはないだろうし。数字もまだまだ大丈夫だろうし……。

 私は深く考えずに、そのまま眠ってしまった。




 
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