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27話 ダンスのレッスン
しおりを挟む「ローズ、頼みがあるのだ」
朝、皇子に挨拶に行くと開口一番で私はこう言われた。
「はい、私に出来る事でしたら何なりと」
____
ダンスのレッスンは午後からだった。
ダンスの先生はフォロー小伯爵様。私がちょっと苦手なタイプ。だって何を考えてるか全然分からないんだもの。
「今日はローズ嬢が皇子殿下のお相手をされるのですね。ではお二人とも私の生徒という事でビシバシ参りますよ」
確かにビシバシだった。フォロー小伯爵の手拍子に合わせて踊るのだがステップはもちろん、腕の高さから角度まで、それはそれは高い完成度を求められた。
「皇子は格段に動きが良くなってまいりました。ローズ嬢はもう少しリズムを感じて下さい」
リズムを感じるのかあ、難しいな。音楽があればいいのに。
~♪♪~私の思ったことが伝わったかのように、音楽が流れてきた。
あっ、これワルツかな。きっと私にだけ聞こえるんだろうけど、これで随分踊りやすくなるわ。ADさん、グッジョブ!
「おや、ローズ嬢も急に良くなりましたね、その調子です!」
音楽があるとダンスも楽しくなってきた。皇子の表情もリラックスしていてダンスを楽しんでいるようだ。
「ローズとは踊りやすいな」
「そうなのですか? 私、舞踏会でもあまり踊った事がなくて」
そうだった。前のローズの記憶でも彼女はひたすら食べてばかりで、踊っている記憶は皆無だった。
「その……君に礼が言いたかった。こうやって変わる事が出来たのはローズのおかげ……」
皇子が言いかけた時、ドアが少し開いてネイサンの声が聞こえてきた。
「ですからまだレッスン中なのです、応接間でお待ちい……」
「レッスンの相手なら私がするわ! 皇子のフィアンセは私なのよ!」
カトリーヌが部屋に乱入してきた。明らかにご立腹の様子である。後ろに申し訳なさそうに眉尻を下げて、ネイサンが立っていた。
「すみません、ローズ様とご一緒にレッスンをされているとメイドから聞いたようで……」
「ジェイミー様、ダンスの相手が必要なら、私を呼んでくださったらいいではありませんか?」
カトリーヌのあまりの剣幕にフォロー小伯爵が割って入った。
「カトリーヌ様、これはただのレッスンです。皇子殿下がローズ様を相手に選ばれたのに深い意味はございません」
「フォロー様は口を挟まないで下さいませ!」
こわっ! これって私は退場したほうがいいわよね、絶対!
「あの、カトリーヌ様、私は下がらせていただきますから、皇子様のお相手をお願い致します」
「そうして頂戴、これからはダンスの相手は私が務めますわ」
私が部屋を出て行こうとすると皇子が言った。
「今日はもう時間だ。ダンスのレッスンは終わりだから、カトリーヌも下がりなさい。フォロー小伯爵、そうですね?」
皇子の堂々たる物言いに、小伯爵はすっかり圧倒されていた。
「はい、今日はここまでです。お疲れ様でごございました」
小伯爵は私を追い越して、そそくさと先にドアから出て行ってしまった。皇子はカトリーヌを促して一緒に部屋を出て行く。
ネイサンと私は目が合った。
「カトリーヌ様はその……少々我が強い方でして。ローズ様にはご迷惑をおかけします」
少々どころの話じゃないわね。結婚したら苦労しそうで、気の毒な皇子様。でもカトリーヌの言いなりにはなってないわね。ちゃんと主導権は皇子様が握ってるわ。
カトリーヌが帰るまでは私は皇子に近づかない方がいいと判断して、私はずっと図書室で待機していた。でも今日は剣術の稽古もない。私は帰ってもいいような気がしてきた。
私は皇子の部屋と続き部屋になっている、自分用の小さな執務室へ行き帰り支度を始めた。すると廊下側ではなく皇子の部屋と繋がるドアからノックが聞こえた。
「ローズいるか?」
「はい? おります」
皇子が入って来た。私が帰り支度をしているのを皇子は横目で見ている。
「すまない、気を悪くしただろう。知っての通り、カトリーヌは我がままで嫉妬深いのだ。君とダンスをしていることがカトリーヌに知られるとは思っていなかった。僕が浅慮だった」
「そんな……皇子様のせいではありませんし、皇子様が謝る事ではありません」
「君はいつも寛大だな」
「いえ、むしろその反対だと自分では思っております。皇子様こそ私のような者に謝ってくださるなんて、優しいお心をお持ちだと思いますわ」
ジェイミー皇子は自分が優しいと言われて、恥ずかしそうに頬を染めた。
「そんな風に言われると気恥ずかしいものだな」
「本当の事なんですから堂々と受け止めて下さい!」
私はまじめくさって胸を張った。皇子はプッと吹き出した。
(可愛い人だ。ぎゅっと抱きしめたい衝動に駆られる。今ここでそうしては……いけないだろうな)
皇子はクックッと笑っている。そんなおかしな事を言ったかしら。
『只今の視聴率3.8%』皇子の頭の横に文字が浮かび上がった。
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