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40話 年越しの日2
しおりを挟む「そなたがローズ・サトリアか、よくジェイミーをサポートしてここまで導いてくれた。礼を言うぞ」
「過分なお言葉でございます。私のした事はほんの小さな手助けに過ぎません。全て皇子様の努力の賜物でございます」
私が挨拶すると皇帝は表情を崩してにこやかに話された。私の緊張は頂点に達していたが、それを見越したかのように皇帝の声は優しくなった。
「ジェイミーが話していた通りの賢い女性だ。シャルルもとてもそなたに懐いているようだな。細かいコトは気にせず、
.今夜は存分に楽しんでいきなさい」
私と皇子様は皇帝の前から下がった。ミーガン叔母様も皇帝の隣で微笑んでいる。
はああぁぁぁぁ~緊張したぁあああ。
でもでもでも! 憧れのハリウッドスターに会えるなんて感激だわ! まぁこの世界では皇帝であって、役柄を演じているわけじゃないけれど。
だがほっとしたのもつかの間、陛下とのやり取りを見ていた貴族たちが、私と皇子様の周りに続々と集まって来た。
そこからは挨拶のラッシュだった。
今日この広間に来ている貴族全員と話したのでは、と思った頃にネイサンが皇子に声を掛けてくれた。
「皇子殿下、ローズ様、二階にお飲み物をご用意致しました。ご休憩下さい」
ネイサンは私達を二階にある休憩室へ案内してくれた。そこには飲み物と軽食が用意されていた。さすが第一皇子の従者、気の利き方が半端じゃないわ。
皇子と私はソファにどっさりと腰を下ろした。
「ふぅ~こんなに囲まれたのはカトリーヌの誕生日以来だな」
あっ! そうだカトリーヌはどうなったんだろう?
「あの、皇子様、今日はまだカトリーヌ様と一度も踊っていらっしゃいませんよね? 大丈夫なのでしょうか?」
「ああ、本当なら先にカトリーヌとの婚約を解消すべきだったのだが……すまない。先にローズを誘ってしまって。だが父上には話をしてあるんだ、婚約解消の許可も頂いている。後はメッサ―家に申し入れるだけなのだ」
ええっ、そんな大事になってるの?! まさか……私のせいじゃないでしょうね。
「ローズが気に病むことは無い。元々カトリーヌとは親同士が決めた結婚だ。それにカトリーヌも皇后の器ではないと、皇帝陛下も気づいておられたのであろう」
「そうなのですね」
そっか、良かった。別に私が原因じゃなくて、皇子様はもともとカトリーヌに愛情を持ってなかったのね。ほっとした半面、寂しさも同時に感じてしまうのは何故なんだろう。
心のもやもやに気を取られていると、外で大きな音がした。と、窓の外が急に明るくなった。花火が上がったのだ。
「あっ 花火ですね!」
私はパっと立ち上がって窓の前へ行った。花火って大好き! わぁ~~こっちの世界の花火もすっごく綺麗だわ。上がる間隔が短くて、次から次へと夜空に大倫の花が咲いていく。
皇子も私の隣に来て花火を見上げた。
「綺麗だな」
「ええ、とても綺麗です。ずっと見ていても飽きません」
皇子がなにか言った。でも次々上がる花火の音が大きくて、皇子の声が聞こえない。
私が首を振って聞こえない仕草をすると、皇子は私に顔を近づけ耳元で囁いた。
「ローズ、君が好きだ」
不意を突かれた。
私は今どんな顔をしている? 驚き呆けて間抜けな顔をしているに違いない……。
皇子の手が私の頬に触れた。その瞳には、色とりどりの花火と私が映っている。
どうしてだろう? どうして私は目を閉じたのだろう? 夜空に上がる美しい花火に心動かされた?
それとも私は……。
皇子のキスはふんわりと優しく、だがすぐ私から離れた。
「あっ、す、すまない。つい……」
「今日の皇子様は謝られてばかりですね」
皇子も私も頬を染めて笑い合った。私の手を取った皇子は、窓から離れて声が聞こえる場所でまた私と向き合った。
「ローズ、僕は真剣なんだ。ずっと僕の傍にいて欲しい。君は……嫌だろうか?」
『嫌だろうか』きっとその言葉は皇子の不安を表している、そう思うと急に彼が可愛いく思えてしまった。だが同時にルイス様の顔も脳裏に浮かび上がる。
「いえ、その、あまりに突然で……」
「そうだな、僕が性急過ぎた。カトリーヌのことをきちんと片付けてからまた正式に申し込もう」
皇子様と私はまた広間に戻った。休憩室のドアを閉める時、まだ花火が見える窓に大きく見慣れた文字が浮かび上がった。
『只今の視聴率10.8%』二桁になったせいだろうか、数字が点滅している。
広間に戻ると、今度は私の家族達が囲まれて大変なことになっていた。
次から次へと見知らぬ貴族に挨拶され、お兄様は大勢の令嬢とダンスを踊り、疲れてヘロヘロになっていた。これは明らかに皇子様が私とファーストダンスを踊ったせいね……。
「お兄様、モテ期ですね!」
「モテき? それは何だ? それより助けてくれローズ、もうフラフラだよ」
私は飲み物を給仕から飲み物をもらって、壁際のソファに兄と腰かけた。
「それで……皇子殿下とどうだった?」
「はあ?」
ど、どうだったって、『何かあったはず』を前提として話を振らないでよ!
「ローズの表情が輝いている。他人には分からないかもしれないが、僕は兄だからな。何かいいことがあったのは顔を見れば分かるさ」
「その……好きだと言われました」
「そりゃそうだろうな。好意もないのにあんな贈り物はしてこないよな。で?」
「で、って……そ、それだけです!」
「ほんとに? あ、口紅が取れてるぞ」
えっ! 私は思わず口元へ手を持って行った。リックは隣でクックッと忍び笑いをもらしている。
「お兄様!!」
「父上には内緒だな。ジェイミー皇子殿下に突撃していったら大変だ!」
しばらくするとカウントダウンが始まった。
皇族は奥のひな壇に揃って並んだ。
年明けを告げる鐘が鳴らされると、皇帝が「新年おめでとう」と宣言。皆が祝杯を挙げた。
平和そのものだった。
少し眠そうにしているシャルル皇子と、ひな壇から私に微笑みかけるジェイミー皇子。皇帝と乾杯のグラスを合わせるミーガン叔母様も。
この平和を破壊しようと企む影は、ひな壇の隣に控えていた。
さもこの帝国の繁栄を称えるかのような笑顔で、皇帝に祝杯を掲げた人物は皇帝の弟だった。
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