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47話 ループ
しおりを挟む僕は現実の世界で、このドラマの子供時代のシャルル皇子を演じていた。それがすべての始まりだった。
子供時代のシャルル皇子の出番は少ない。
現実の世界での最後の日、僕はシャルル皇子に扮したまま、自分の出番を待ちながらトレーラーでうたた寝をしていた。ところが目が覚めた場所はドラマの世界の中だったんだ。
僕の実年齢は十四だから、ドラマの中のシャルルよりは年上だ。でもまだまだ子供の僕が、こんな中世みたいな世界に一人放り出されて、初めは死ぬほど辛かった。
だが皇帝はシャルルを可愛がっているし、なんたって皇子様だから暮らしは贅沢だ。スマホもゲームもないから退屈だったけど、そんなことはすぐに言っていられなくなった。
世界はドラマの筋書き通りに進み、とうとう謀反が起こる。僕は助かるけど皇帝一家は皆殺し、帝国の重鎮たちもその家族もみんな殺されてしまう。
だが本当の地獄はここからだった。
ドラマでは僕を助けた皇帝の秘書官ケニス・トールスと、他国へ生き延びてついには復讐を遂げるという流れになるはずだった。
だが謀反から一夜明けると、またこの世界に来た日に戻ってしまうのだ。
僕がこの世界に来たのはシャルルが十一歳のときだ。
十一歳で登場して、約二年後に謀反が起きる。僕はもう六回もこの二年を過ごした。本当なら僕はもう二十六歳だ……。
シナリオが少し違っていたことも、一度か二度あった。皇后が存命のパターンやカトリーヌが出てこないパターンもあった。
でも僕が違う行動を取っても筋書きは同じで、ジェイミーは役立たずの皇太子、ロデロ大公が反乱を起こす、皇帝一家は僕以外全員死んでしまう。
思いつく限りのことをやってみたがダメだった。
子供のふりをするのにも疲れ、こんな地獄を味わい続けるくらいならいっそ死んでしまおうかと思っていた矢先、まったく予想外の展開が訪れた。
ミーガン皇妃の姪であるローズという女性が現れ、皇子をまるで別人のように変えてしまったのだ。
僕はワクワクした。こんなに胸が躍るような気持ちになったのは初めてだった。
僕はいつもコソコソと嗅ぎ回って謀反の進行状況を探っていたから、今回も建国記念舞踏会で何かが起こることを知っていた。
ローズの後をつけたのはただ一緒にいたかっただけの偶然だったが、彼女が誘拐される瞬間を目撃してしまった。そのまま追いかけることはできたものの、結局ローズを助けることはできなかった。
これで終わると思ったのに……これから僕はどうなるんだろう? 物語はどう展開していくんだろう?
涙が自然と流れてきた。優しかったローズ。この地獄を終わらせてくれたローズ。
僕はぎゅっと目をつぶった。だがまぶたの裏に明るい光を感じて目を開けると、天井に文字が浮かび上がっていた。
『只今の視聴率28.7%・おめでとうございます! このドラマの歴代最高視聴率を更新しました』
え? 何だこれ……視聴率だって? こんな文字を見たのは初めてだ。
続けて違う文字が浮かび上がった。
『続編制作は決定しています。視聴率更新のボーナスで、続編に登場させたい人物を優先的に指定できます』
なんだって! 続編に登場させたい人物! そんなの決まってるじゃないか!
出演者一覧と題し、名前がずら~っと出てきた。
アルファベット順か。えーと、R……R……っと。
ローズ・サトリアの名前をタッチした。すると、どこからかざわざわと人の話し声のような音が聞こえてきた。内容までは分からないが、どうやら何かを議論しているようだ。
……まだ声が聞こえている。ずいぶん長い議論だ、もう三十分近く経った。
話し声がやんだと思うと、また文字が浮かび上がった。
『要求が承認されました。ストーリーが改変されます。ご注意ください』
その文字がまだ消えきらないうちに、周りの景色が大きく歪んだ。まるでサーカスの歪んだ鏡の中の世界みたいで、自分がめまいを起こしたと錯覚するほどの感覚だった。そしてそれは信じられないほどの速さで巻き戻っていった。
気がつくと、僕は南の宮の前の茂みに身を潜めるように立っていた。
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