悪役が英雄を育てるカオスな世界に転生しました(仮)

傍にいるよ

ぴちぴちと鳥の囀りが聞こえてゆっくりと目を開ける。
いつの間にか寝ていたのか地面に丸まって寝ていた。

顔を上げてカインを見ると、昨日とは違い寝息が落ち着いてきた。
良かった…熱下がったみたいだ。

熱を測る方法が人肌しかなくてカインの額と俺の額を合わせた。

昨日よりは熱くないが、まだ安静にしてないとな。

タオルをまた冷やさないとと外に出た。

すっかり嵐が止み、青空が出ていた。
地面は柔らかくなっていて歩きづらいが川に向かって歩いた。
ついでに栄養になる木の実を取りに行こう。

片手いっぱいに木の実を持ち、もう片手に濡れたタオルを握り洞窟に戻ってくる。
すると座っているカインが見えて慌てて駆け寄る。

「カイン！寝てなきゃダメじゃないか！」

「…ルーエンさん、もう平気…こほっ」

「ほら、寝てなよ…もう今日は何処にも行かないから」

カインを寝かせて着れなくなった昔の服を布団にして、額にタオルを乗せる。
木の実の皮を向きカインの口に持っていく。

カインはまだ俺がいなくなるんじゃないかと心配して袖を掴んだ。
俺はその手を掴み両手で握りしめた。

「俺はここにいるよ」

「……う、ん」

カインは瞳を閉じて寝息が聞こえた。

俺はずっとカインを見つめていた。

大きくなったな、もうすぐカインは俺と初めて会った時の俺の年齢になるのか。

今のところ大きな事件はなく平和だ。
母と妹は何しているのだろうか、気になるがカインがいるから会いにはいけない。
カインの事は絶対に知られてはいけないからな。

治癒魔法も覚えた方がいいな、黒魔法使いである俺が魔法の中で一番使いにくい魔法だが避けていたがカインがまた風邪を引いたり怪我をしたら治癒魔法が必須になるだろう。

まぁ、それも全てカインが元気になってからだ。

明日の事を考えながら俺はポンポンとカインを寝かせる。






ーーー

数日寝ていたからかぐんっと背伸びする。
俺はカインが着ていた服を畳んだ。

「カイン、もう平気か？」

「心配掛けた、ありがとうルーエンさん」

すっかり元気を取り戻したカインは俺に笑い掛けた。

今日、魚を狩りに行こうと愛用の手作り槍を持つカインの手を掴んだ。
カインは驚いた顔をしてこちらを見る。

治ったからってまだ病み上がりだ、カインにさせられない。
俺はカインの槍を持つ。

初めて持ったが結構ずっしりとしていてカインはいつもこれを扱ってたのか、凄いなと感心する。

「カイン、今日は俺が魚を狩ってくるから楽しみに待ってろ！」

「…え、でも…ルーエンさんやった事あるのか？」

「大丈夫だ、何とかなる」

不安げなカインの頭を撫でて今日はカインに部屋の掃除を任せた。
…とは言っても毎日掃除をしているから塵一つないが…

川に入り槍を構えてジッと泳ぐ魚を見る。

いつも食べてるとは思うがあまり見すぎると愛着が…

このままだと収穫なしで日が沈んでしまう。
目を瞑り、川に突き立てた。

そして数時間後、洞窟に帰ってきた。

「…た、ただいまぁ」

「お帰りなさ……ルーエンさん！？どうかしたのか！？」

驚いたカインが駆け寄ってくる、そりゃあ全身ずぶ濡れで帰ってきたら心配もするか。
俺はカインに今日の収穫を見せた。

魚二匹…これで今夜は大丈夫だろう。

カインが楽々こなしていたからあんなに大変だとは思わなかった。
狙いを定めた筈なのにスルッと槍から逃げて、足に魚が体を擦り付けてくるから驚いて転けてこの様だ。

やっと二匹捕まえる事が出来た…槍じゃなく風魔法使ったが…

カインはよく毎回あんなに大量に捕まえられるなぁとカインの苦労がよく分かった。
今度教えてもらおう、そう思った。

「とりあえず着替えるな」

「…あ、あぁ」

俺がローブを脱ぐとカインは俺に背を向けた。
うーん、嫌われてるわけではない事はもう分かっているが別に見たって構わないのにこの行動は謎だ。
まぁ、好き好んで男の裸なんて見たくないよな。

カインが背を向けてる時に急いで魔法で乾かす。
今のところ上手く魔法を隠せていると思っている。

多分それはカインが本物の魔法を見た事がないからだろうな。
カインは俺の魔法を本気で手品だと思ってるからなと苦笑いした。