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第二十二話︰最悪な可能性
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「……あ。」
みんなに好かれる奥様といえば。
つい先程、時紀達からよろしく伝えるように言われたことを思い出した。今更ながら、彼らのことを話題に挙げる。
「そういえばさっきまで、時紀さんに日暮さん、文音さんと一緒にいたんです。皆さん、奥様によろしくと。」
「まあ、そうだったの!早くみんなとも会いたいわ。日暮くんにはお仕事を任せてしまっているし、お礼をしないと。」
「お仕事?」
首を傾げると、横で彗月が「そうでしたね」と相槌を打つ。
「あれから一週間、日暮はようやく学校に馴染んできているそうで。」
「あらぁよかった。それなら、もう少しくらい任せちゃおうかしら?なーんて。」
「ふふ、お身体が万全になったら戻ってあげてください。みんな、待ち侘びていますから。」
二人のやり取りを聞いた紬は、もしかしてと察しがついた。
「奥様、教師をなさっているんですか?」
「そうなの。非常勤だけど、里の学校で古典の先生をしていてね。瘴気にあてられて倒れてしまってからは、日暮くんに代理をお願いしているの。」
柄じゃないし面倒だとゲンナリした顔をしつつも、奥様のためならと渋々教師をつとめる日暮の姿が、容易に想像できる。
「あの日、学校で突然倒れちゃって……一緒にいた子たちには、怖い思いをさせてしまったわ。」
「学校で……ですか?」
「ええ。たまたま時紀くんがいる日でね、色々と対応にあたってくれたから、時紀くんには感謝してもしきれない。紅蓮邸に連絡してくれたのも彼なのよ。」
長寿であり、紅蓮邸に馴染みがある時紀だからこそ、迅速な判断と行動が取れた──非常勤講師の彼が出勤していたことは、不幸中の幸いだったと言える。
「瘴気について、学校の方には?」
「伝えていないわ。生徒たちにも先生方にも言っていない。私が倒れた原因は、過労による体調不良ということにしたみたい。」
そうなんですか、と紬が目を向けると、彗月は頷いて口を開く。
「奥様の身が瘴気に蝕まれ、治る見込みがない──そんなことが知れ渡れば、里は大変な騒ぎになります。ただでさえ退魔の結界が弱まっている今、これ以上の不安感を与えるわけにはいかなかった。」
「なるほど……」
里長の妻の命が危ぶまれていること。彼女をそれ程までに蝕む瘴気を操る魔物が、里に侵入していること。これらの情報が下手に流出すれば、里が混乱に陥るのは必至。紅蓮邸が隠蔽の判断をとったのも納得できる。
「魔物については、内密に調査を進める予定でしたが、急遽中止しました。」
「中止?どうしてまた」
「というのも……同時期に、郷守の巫女と思しき“占い娘”の噂を聞きつけ、大きな希望が見えたからです。そちらの対応を優先して正解だった。」
「!」
紬は思わず自分を指さしてから、そうかと顎に手を添えた。
「郷守の巫女さえ里に来れば、退魔の結界が復活する。巫女の実力によっては、奥様を治すこともできる。……魔物の居場所を突き止めずとも、万事解決だというわけですか」
「その通りです。」
もちろん、突き止めるに越したことはないが、大々的な調査が出来ない中では難しいだろう。郷守の巫女を里に引き入れることが最も現実的であり、最善の策だった。
自分の存在が、認識以上に里の運命を左右していたのだ。本当に里入りを決めて良かった、霊力が強くて良かったと、紬は大きく胸を撫で下ろした。
(……それにしても、奥様が学校で倒れたというのが気になる……)
瘴気というものは、体内に入りこんだ途端に効果を発揮する。紬は己の身体に瘴気がうつる瞬間を見たからこそ、そうだと知っている。
仮にゆっくり毒が回ったのだとしても、日和と魔物が接触したのがその日中だということは、間違いない。
「奥様。瘴気によって倒れた日は、朝から学校に?」
「いいえ、あの日は午後からだったわ。お昼過ぎにお屋敷を出て、少しお店を見て回って……」
そうなると、学校へ向かう道中、店屋通りでやられた可能性がある。魔物は人型に化けることが出来るのだから、人混みに紛れて、気付かないうちに背後から……というのは十分にありえる。
(むしろ、そうであってほしい。だって、そうじゃないと──)
「そうそう。文音ちゃんが、髪飾りが欲しいと言っていたからね、一緒に似合うものを探したのよ。」
「……えっ。」
期待を外れた証言に、紬は眉を上げて聞き返した。
「文音さんと一緒に?……じゃあ、屋敷の外で、奥様が一人でいた時間は」
「ほとんどなかったかなぁ。外を歩く時は文音ちゃんが護衛についてくれたし、学校では、生徒のみんなや先生方がいるから。」
「……そう、でしたか」
──これは。一番イヤな可能性を引いたかもしれない。
今の受け答えを聞いて、彗月も同じことを考えたのだろう。密かに眉を寄せている。
「……?二人とも、どうしたの?」
「ああいえ、その」
日和に首を傾げて聞かれ、誤魔化そうとしたところで、「お話し中のところ失礼します」と声がかかってきた。
振り返ると、そこには春子の姿がある。
「みなさま、お夕食の準備ができましたよ。」
「!ありがとうございます」
「すっかり話し込んでしまいましたね。……では、おいとましましょうか」
彗月の言葉に頷いて、紬は日和に向き直る。
「今日は、お声がけありがとうございました。」
「いえいえ~、こちらこそありがとう。またお話しましょうね。他にもお買い物とか、お料理とか、紬ちゃんとやりたいことが色々あるの。」
「いいんですか……!ぜひ。一緒にやりましょう」
日和はにこりと笑った。そして、紬の頭を撫でた。
「!」
「この里のために、たくさんがんばってくれてありがとう。……紬ちゃん、お花はお好き?」
「は……はい。桜とか……」
「よかったぁ。私ね、お花を咲かせる妖術を使えるの。術を使えるくらい元気になったら、みんなでお花見をしましょうね。」
「……はい。」
日和の手はとても優しかった。小さい頃、母に撫でられた時のことを思い出して、なんだかくすぐったい気持ちになる。
そして──この優しさを知れば知るほど、彼女を酷く苦しめた魔物への怒りが、紬の腹の底でふつふつと湧いた。
紬と彗月は花の間を出て、並んで歩く。
「──彗月さん。学校を調査しましょう。」
静かに口を開いて言った。
彗月はこちらを見て、頷いた。
「そうですね。今日の話を聞く限り……うっかり里を彷徨っていた程度の魔物が、奥様に近づけるとは思えない。ましてや、あれほどの強い瘴気をあてるだなんて」
知らぬ間に紅蓮邸に魔物が侵入していた、などという可能性はまず考えられない。魔物が日和に接触したのは、屋敷の外だ。
学校に向かう道中は、文音が護衛についていた。彼女の実力は今日の稽古で十分にわかっている。猫族の嗅覚を持ち、優れた結界術を使う彼女が、易々と魔物の接触を許すとは思えない。
となると──魔物が日和を襲ったのは、学校。
「学校の警備体制が知りたい。私が直接調べに行けるよう、手を回してくれませんか。」
「分かりました。私も同行します。……もし、警備に問題が無かったなら」
「ええ」
やはり考えることは同じだ。彼が言いかけた言葉を、紬が引き継いだ。
「事故ではなく、事件の可能性も、考慮するべきかと。」
みんなに好かれる奥様といえば。
つい先程、時紀達からよろしく伝えるように言われたことを思い出した。今更ながら、彼らのことを話題に挙げる。
「そういえばさっきまで、時紀さんに日暮さん、文音さんと一緒にいたんです。皆さん、奥様によろしくと。」
「まあ、そうだったの!早くみんなとも会いたいわ。日暮くんにはお仕事を任せてしまっているし、お礼をしないと。」
「お仕事?」
首を傾げると、横で彗月が「そうでしたね」と相槌を打つ。
「あれから一週間、日暮はようやく学校に馴染んできているそうで。」
「あらぁよかった。それなら、もう少しくらい任せちゃおうかしら?なーんて。」
「ふふ、お身体が万全になったら戻ってあげてください。みんな、待ち侘びていますから。」
二人のやり取りを聞いた紬は、もしかしてと察しがついた。
「奥様、教師をなさっているんですか?」
「そうなの。非常勤だけど、里の学校で古典の先生をしていてね。瘴気にあてられて倒れてしまってからは、日暮くんに代理をお願いしているの。」
柄じゃないし面倒だとゲンナリした顔をしつつも、奥様のためならと渋々教師をつとめる日暮の姿が、容易に想像できる。
「あの日、学校で突然倒れちゃって……一緒にいた子たちには、怖い思いをさせてしまったわ。」
「学校で……ですか?」
「ええ。たまたま時紀くんがいる日でね、色々と対応にあたってくれたから、時紀くんには感謝してもしきれない。紅蓮邸に連絡してくれたのも彼なのよ。」
長寿であり、紅蓮邸に馴染みがある時紀だからこそ、迅速な判断と行動が取れた──非常勤講師の彼が出勤していたことは、不幸中の幸いだったと言える。
「瘴気について、学校の方には?」
「伝えていないわ。生徒たちにも先生方にも言っていない。私が倒れた原因は、過労による体調不良ということにしたみたい。」
そうなんですか、と紬が目を向けると、彗月は頷いて口を開く。
「奥様の身が瘴気に蝕まれ、治る見込みがない──そんなことが知れ渡れば、里は大変な騒ぎになります。ただでさえ退魔の結界が弱まっている今、これ以上の不安感を与えるわけにはいかなかった。」
「なるほど……」
里長の妻の命が危ぶまれていること。彼女をそれ程までに蝕む瘴気を操る魔物が、里に侵入していること。これらの情報が下手に流出すれば、里が混乱に陥るのは必至。紅蓮邸が隠蔽の判断をとったのも納得できる。
「魔物については、内密に調査を進める予定でしたが、急遽中止しました。」
「中止?どうしてまた」
「というのも……同時期に、郷守の巫女と思しき“占い娘”の噂を聞きつけ、大きな希望が見えたからです。そちらの対応を優先して正解だった。」
「!」
紬は思わず自分を指さしてから、そうかと顎に手を添えた。
「郷守の巫女さえ里に来れば、退魔の結界が復活する。巫女の実力によっては、奥様を治すこともできる。……魔物の居場所を突き止めずとも、万事解決だというわけですか」
「その通りです。」
もちろん、突き止めるに越したことはないが、大々的な調査が出来ない中では難しいだろう。郷守の巫女を里に引き入れることが最も現実的であり、最善の策だった。
自分の存在が、認識以上に里の運命を左右していたのだ。本当に里入りを決めて良かった、霊力が強くて良かったと、紬は大きく胸を撫で下ろした。
(……それにしても、奥様が学校で倒れたというのが気になる……)
瘴気というものは、体内に入りこんだ途端に効果を発揮する。紬は己の身体に瘴気がうつる瞬間を見たからこそ、そうだと知っている。
仮にゆっくり毒が回ったのだとしても、日和と魔物が接触したのがその日中だということは、間違いない。
「奥様。瘴気によって倒れた日は、朝から学校に?」
「いいえ、あの日は午後からだったわ。お昼過ぎにお屋敷を出て、少しお店を見て回って……」
そうなると、学校へ向かう道中、店屋通りでやられた可能性がある。魔物は人型に化けることが出来るのだから、人混みに紛れて、気付かないうちに背後から……というのは十分にありえる。
(むしろ、そうであってほしい。だって、そうじゃないと──)
「そうそう。文音ちゃんが、髪飾りが欲しいと言っていたからね、一緒に似合うものを探したのよ。」
「……えっ。」
期待を外れた証言に、紬は眉を上げて聞き返した。
「文音さんと一緒に?……じゃあ、屋敷の外で、奥様が一人でいた時間は」
「ほとんどなかったかなぁ。外を歩く時は文音ちゃんが護衛についてくれたし、学校では、生徒のみんなや先生方がいるから。」
「……そう、でしたか」
──これは。一番イヤな可能性を引いたかもしれない。
今の受け答えを聞いて、彗月も同じことを考えたのだろう。密かに眉を寄せている。
「……?二人とも、どうしたの?」
「ああいえ、その」
日和に首を傾げて聞かれ、誤魔化そうとしたところで、「お話し中のところ失礼します」と声がかかってきた。
振り返ると、そこには春子の姿がある。
「みなさま、お夕食の準備ができましたよ。」
「!ありがとうございます」
「すっかり話し込んでしまいましたね。……では、おいとましましょうか」
彗月の言葉に頷いて、紬は日和に向き直る。
「今日は、お声がけありがとうございました。」
「いえいえ~、こちらこそありがとう。またお話しましょうね。他にもお買い物とか、お料理とか、紬ちゃんとやりたいことが色々あるの。」
「いいんですか……!ぜひ。一緒にやりましょう」
日和はにこりと笑った。そして、紬の頭を撫でた。
「!」
「この里のために、たくさんがんばってくれてありがとう。……紬ちゃん、お花はお好き?」
「は……はい。桜とか……」
「よかったぁ。私ね、お花を咲かせる妖術を使えるの。術を使えるくらい元気になったら、みんなでお花見をしましょうね。」
「……はい。」
日和の手はとても優しかった。小さい頃、母に撫でられた時のことを思い出して、なんだかくすぐったい気持ちになる。
そして──この優しさを知れば知るほど、彼女を酷く苦しめた魔物への怒りが、紬の腹の底でふつふつと湧いた。
紬と彗月は花の間を出て、並んで歩く。
「──彗月さん。学校を調査しましょう。」
静かに口を開いて言った。
彗月はこちらを見て、頷いた。
「そうですね。今日の話を聞く限り……うっかり里を彷徨っていた程度の魔物が、奥様に近づけるとは思えない。ましてや、あれほどの強い瘴気をあてるだなんて」
知らぬ間に紅蓮邸に魔物が侵入していた、などという可能性はまず考えられない。魔物が日和に接触したのは、屋敷の外だ。
学校に向かう道中は、文音が護衛についていた。彼女の実力は今日の稽古で十分にわかっている。猫族の嗅覚を持ち、優れた結界術を使う彼女が、易々と魔物の接触を許すとは思えない。
となると──魔物が日和を襲ったのは、学校。
「学校の警備体制が知りたい。私が直接調べに行けるよう、手を回してくれませんか。」
「分かりました。私も同行します。……もし、警備に問題が無かったなら」
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