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第三話︰紬の決断
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紬が打ち明けた秘密に、彗月は驚くことなく頷いた。左右の二人は、彗月を挟んで顔を見合せている。
「普通の人間では持ち得ないような力がご自身にあるから、あやかしの話も否定できなかったのでしょう」
「はい……これは、郷守の巫女の力だったんですね。」
「ええ。暁の里に入れば、巫女の能力は最大限に引き出される。今よりも強い力が使えるようになるはずですよ」
いよいよ、自分が普通の人間ではないことを思い知らされる。
過去と未来が視える今以上に、なんて、空でも飛べるようになるんだろうか。
「……と、ここまで話してきましたが。」
「!」
「私との結婚による里入りは強制ではない、ということは確かにお伝えしておきます。貴女の人生を縛るに等しい政略結婚ですので、紬さんの意思でご判断を」
「……!彗月様、」
覆面の男が腰を浮かして何かを言いかけたが、すぐにウッと脇腹を押さえて、大人しくなる。さっき肘を入れられたのが未だに効いているらしい。
(……彗月さんは、こう言ってくれるけれど)
この縁談をつっぱねるということは、すなわち、郷守の巫女としての役目を放棄するのと同義。
生まれ変わりの運命に反して、暁の里を見捨てる、ということになる。
「更に言うと、極少数とはいえあやかしの中には、巫女の存在を嫌っている者もいます。」
「えっ。……里を守る存在なのに?」
「はい。」
ですから、と彗月は横の二人を一瞥する。
「郷守の巫女として里に来れば、時に厳しく当たられることもあるでしょう。先程のように。」
「……」
「是非とも、それを踏まえた上でご検討ください。」
「……」
皮肉交じりで補足する彗月の両脇で、二人はバツが悪そうに身を縮めた。なるほど、初対面でやたらと当たりが強かったのは、そういうことだったらしい。
理解はできたが理不尽である。こちらは魂を選んで生まれてきたわけではないのだから、強く当たられても。
「彗月さんは、嫌ってはいないんですね」
「ええ、もちろん。」
曰く彼の家系は、代々の郷守の巫女を妻に迎えることが決められている、とのこと。里を代表して来ているのも納得だ。
「ちなみにそちらのお二人は、どうして彗月さんとご一緒に?」
「貴女が本当に郷守の巫女であるかどうかを、妖術で確かめる──言ってしまえば検証役です。」
「はあ……」
妖術ですって、と紬は心の中で呟いた。あやかしといい妖術といい、つい昨日まで非現実的だったはずの言葉が、当たり前のように出てくる。
妖術を使うということは、覆面の二人はあやかしなのだろう。検証のために使う術は一体どんなものなのか。興味がある。
「その検証というのは、いつ行うんですか?」
「おや。案外前のめりですね」
「妖術だなんて、今まで見たことがありませんから。気になります」
「……どんな術をかけられるかも分からないのに?」
「やっぱり気にならなくなってきました」
「冗談ですよ」
彗月は覆面の二人と視線を交わしてから、紬の目を見た。
「もう、検証は済んでいます。」
「!」
「紬さんには、面をした二人の姿が見えているのでしょう?それで十分です。」
「……え。普通の人には、見えないんですか」
目を見張ってから、そういえば、と思い返す。
三人の来訪を伝えに来た芳江は、男前の遣いがいるとしか言っていなかった。子どもたちはこの三人を前に、「お兄さんたち」ではなく「お兄さん」と言っていた。
そして自分も、最初は彗月ばかりを見ていた。不自然な程に、覆面の彼らには気がつかなかった。
「先ほど私に肘を入れられたのが沖。そして、こちらが連。二人は対象の存在を認識させない、いわゆる“認識阻害”の妖術を使います。」
「!」
「貴女だけは二人の妖術にかからなかった──正確には、かけられた術を無意識的に解いた。それが、郷守の巫女であることの証明です。」
妖術を無意識的に解く。
我ながら、そんな力があったなんて。
自分で自分に感心しかけたところで、紬はふと気になって、待ったをかける。
「ということは……?私や彗月さんがこのお二人と話していた時、はたから見ると、どういう状態になっていたんでしょう」
虚空に向かって話しかける変な人になっていたんだろうか。そう杞憂するが、彗月は「ご安心を」と笑う。
「“認識阻害”は、そこに誰かがいるのではと思うことすら阻害しますから。皆さんには、我々二人だけが会話をしているように見え、聞こえたはずですよ。」
「そうなんですか、よかった。なんて都合の良い妖術……」
「使い勝手が良いと言え」
沖がぶっきらぼうに口を挟み、連は腕を組んで、揃って紬の方を見やる。
「我々の妖術の練度は、主様のお墨付きだ」
「それを無意識下で解いてみせたのだから、貴様……貴女が只者でないことは、認めよう」
「……どうも?」
“郷守の巫女”という言葉こそ出てこないものの、どうやら認めてもらえたらしい。当たりの強さも、少しだけやわらいだような気がする。未だに不服そうな様子は丸出しだが。
「沖さん連さんだけでなく、彗月さんも……あやかしなんですか?」
様子を伺いつつ聞くと、彗月は「はい」とあっさり頷いた。
「貴女のことですから、私がこの家に訪れた時から、“あやかしの気”は感じ取っていたのでは?」
「……!」
彗月を初めて見た時。紬は馴染まないと感じた。
あれはただ、彼の美貌に圧倒されたからだと思っていた。ボロ家に立ち入る男前という光景に対する単純な違和感だと、思っていたけれど。
(あれは彗月さんが、人間じゃなかったから──)
「里外にいる今、巫女としての霊感や霊力は大きく制限されているはず。それでも私の気を感じ取り、過去も未来も視ることが出来るとは……お見事ですよ。紬さん」
「はあ……ありがとう、ございます」
郷守の巫女の能力の基準がわからないので、どれくらい「お見事」なことなのか分からない。しかしお世辞でもないようなので、曖昧にお礼を言っておく。
「あやかしなら、妖術が使えるんですよね。彗月さんはどんな術を?」
「秘密です。」
「えっ」
「私はこれでも、あやかしの頭領の側近ですので。立場上、能力の情報はなるべく明かさないことにしています。この場では言えません。」
ニコリと笑顔で拒否する彗月。……いくら整った顔立ちであるとはいえ、ここまで笑顔しか見せてこないと、麗しさよりも胡散臭さが勝つ。
(出会った時から、この貼り付けたような表情。わざと壁を作っているみたいなのよね……)
彼なりの処世術なのか。あるいは、素の顔を隠したいのか。
見えない隔たりを感じながら、紬は、さてどうしたものかと考え込んだ。
そろそろ決断しないといけない。
郷守の巫女としてこの人に嫁ぎ、暁の里を守る役目を果たすか。
断って、これからも変わらず、小さな村の占い娘として過ごすか。
(……もし、この結婚を断ったら)
郷守の巫女がいないことで、退魔の結界とやらが完全に崩壊したら、暁の里は一体どうなってしまうだろう。
生まれ変わりの運命に背いて、ひとつの里を見捨てて生きるだなんて、明日からの寝覚めは最悪なんじゃないか。
「……」
ちらりと彗月を見やる。変わらず微笑みをたたえる顔がそこにある。
「……この縁談を断る選択肢なんて、最初から無いようなものでしょう」
「ええ──」
「でも、ちゃんと逃げ道を作ってくれましたね。彗月さんは」
「!……」
彗月は、薄く開いた口をそっと閉じた。
(──縁談を持ちかけるという形でやって来ているけれど、彼の役割はきっと、私を是が非でも里に連れ帰ること。)
二百年に一度の危機に瀕している里側からすれば、郷守の巫女のことは、何としてでも里入りさせなければと考えているはず。脅迫なども厭わないんじゃないか。
しかし彗月は、紬の意思を尊重している。紬に判断を委ねる彼に対して、沖が反応していたあたり恐らく、選択の余地を与えようとしているのは彗月の独断だろう。
「里の命運がかかっているのでしょうに、私に判断を委ねてくださって。更に、嫁入りの嫌な点も包み隠さず話してくださって。ありがたいことです」
「き、貴様……」
連が上げた声には焦りが滲んでいる。面で隠されているが、こちらを睨みつけていることは分かる。
「この期に及んで、縁談を断ろうというのか……!?」
「連」
「情けをかけてやるべきでは無かったのです、彗月様。やはり脅してでも……!」
制止を聞かず、ちゃぶ台に身を乗り出す勢いの連を見て、彗月が小さく息を吐いた。面倒だと思っているんだろうか、ここにきてようやく感情らしいものが見えた。
「そうでもしなければ、この者は里を見殺しに」
「ちょっと、違います。人聞きの悪いことを言わないでくださいよ。──覚悟ができるから、ありがたいと言ったんです。」
「!」
ハッと固まる連。彗月は紬に目を向けた。
「私は、自分のこの力は天からの授かりものだと思って、ささやかな人助けに使ってきました。けれど……真に成すべきことがあるのなら。役目を与えられ、この世に生まれ落ちたというのなら。それを果たさずしてどうしましょう。」
毅然とした顔で言い放つ紬を見て、沖と連は体を強ばらせ、息を飲んだ。
もちろん、紬とて余裕があるわけではない。顔に出ないだけだ。深く呼吸をすると、吐き出した息がかすかに震える。
大変な、引き返せないところに足を踏み出すのだと思って、心臓が大きく脈打っている。
後悔する生き方なんてもったいない。両親はいつもそう言っていた。
私だってそう思う。後悔しないし、恥じないような生き方がいい。
今日名を知ったばかりの里だとしても、見捨ててしまえば、きっと夢見が悪くなる。
「──彗月様。この縁談、お受けします。」
「!」
「貴方の妻として、そして郷守の巫女として。この魂を持って生まれた役目を果たすべく、尽力いたしましょう。」
「普通の人間では持ち得ないような力がご自身にあるから、あやかしの話も否定できなかったのでしょう」
「はい……これは、郷守の巫女の力だったんですね。」
「ええ。暁の里に入れば、巫女の能力は最大限に引き出される。今よりも強い力が使えるようになるはずですよ」
いよいよ、自分が普通の人間ではないことを思い知らされる。
過去と未来が視える今以上に、なんて、空でも飛べるようになるんだろうか。
「……と、ここまで話してきましたが。」
「!」
「私との結婚による里入りは強制ではない、ということは確かにお伝えしておきます。貴女の人生を縛るに等しい政略結婚ですので、紬さんの意思でご判断を」
「……!彗月様、」
覆面の男が腰を浮かして何かを言いかけたが、すぐにウッと脇腹を押さえて、大人しくなる。さっき肘を入れられたのが未だに効いているらしい。
(……彗月さんは、こう言ってくれるけれど)
この縁談をつっぱねるということは、すなわち、郷守の巫女としての役目を放棄するのと同義。
生まれ変わりの運命に反して、暁の里を見捨てる、ということになる。
「更に言うと、極少数とはいえあやかしの中には、巫女の存在を嫌っている者もいます。」
「えっ。……里を守る存在なのに?」
「はい。」
ですから、と彗月は横の二人を一瞥する。
「郷守の巫女として里に来れば、時に厳しく当たられることもあるでしょう。先程のように。」
「……」
「是非とも、それを踏まえた上でご検討ください。」
「……」
皮肉交じりで補足する彗月の両脇で、二人はバツが悪そうに身を縮めた。なるほど、初対面でやたらと当たりが強かったのは、そういうことだったらしい。
理解はできたが理不尽である。こちらは魂を選んで生まれてきたわけではないのだから、強く当たられても。
「彗月さんは、嫌ってはいないんですね」
「ええ、もちろん。」
曰く彼の家系は、代々の郷守の巫女を妻に迎えることが決められている、とのこと。里を代表して来ているのも納得だ。
「ちなみにそちらのお二人は、どうして彗月さんとご一緒に?」
「貴女が本当に郷守の巫女であるかどうかを、妖術で確かめる──言ってしまえば検証役です。」
「はあ……」
妖術ですって、と紬は心の中で呟いた。あやかしといい妖術といい、つい昨日まで非現実的だったはずの言葉が、当たり前のように出てくる。
妖術を使うということは、覆面の二人はあやかしなのだろう。検証のために使う術は一体どんなものなのか。興味がある。
「その検証というのは、いつ行うんですか?」
「おや。案外前のめりですね」
「妖術だなんて、今まで見たことがありませんから。気になります」
「……どんな術をかけられるかも分からないのに?」
「やっぱり気にならなくなってきました」
「冗談ですよ」
彗月は覆面の二人と視線を交わしてから、紬の目を見た。
「もう、検証は済んでいます。」
「!」
「紬さんには、面をした二人の姿が見えているのでしょう?それで十分です。」
「……え。普通の人には、見えないんですか」
目を見張ってから、そういえば、と思い返す。
三人の来訪を伝えに来た芳江は、男前の遣いがいるとしか言っていなかった。子どもたちはこの三人を前に、「お兄さんたち」ではなく「お兄さん」と言っていた。
そして自分も、最初は彗月ばかりを見ていた。不自然な程に、覆面の彼らには気がつかなかった。
「先ほど私に肘を入れられたのが沖。そして、こちらが連。二人は対象の存在を認識させない、いわゆる“認識阻害”の妖術を使います。」
「!」
「貴女だけは二人の妖術にかからなかった──正確には、かけられた術を無意識的に解いた。それが、郷守の巫女であることの証明です。」
妖術を無意識的に解く。
我ながら、そんな力があったなんて。
自分で自分に感心しかけたところで、紬はふと気になって、待ったをかける。
「ということは……?私や彗月さんがこのお二人と話していた時、はたから見ると、どういう状態になっていたんでしょう」
虚空に向かって話しかける変な人になっていたんだろうか。そう杞憂するが、彗月は「ご安心を」と笑う。
「“認識阻害”は、そこに誰かがいるのではと思うことすら阻害しますから。皆さんには、我々二人だけが会話をしているように見え、聞こえたはずですよ。」
「そうなんですか、よかった。なんて都合の良い妖術……」
「使い勝手が良いと言え」
沖がぶっきらぼうに口を挟み、連は腕を組んで、揃って紬の方を見やる。
「我々の妖術の練度は、主様のお墨付きだ」
「それを無意識下で解いてみせたのだから、貴様……貴女が只者でないことは、認めよう」
「……どうも?」
“郷守の巫女”という言葉こそ出てこないものの、どうやら認めてもらえたらしい。当たりの強さも、少しだけやわらいだような気がする。未だに不服そうな様子は丸出しだが。
「沖さん連さんだけでなく、彗月さんも……あやかしなんですか?」
様子を伺いつつ聞くと、彗月は「はい」とあっさり頷いた。
「貴女のことですから、私がこの家に訪れた時から、“あやかしの気”は感じ取っていたのでは?」
「……!」
彗月を初めて見た時。紬は馴染まないと感じた。
あれはただ、彼の美貌に圧倒されたからだと思っていた。ボロ家に立ち入る男前という光景に対する単純な違和感だと、思っていたけれど。
(あれは彗月さんが、人間じゃなかったから──)
「里外にいる今、巫女としての霊感や霊力は大きく制限されているはず。それでも私の気を感じ取り、過去も未来も視ることが出来るとは……お見事ですよ。紬さん」
「はあ……ありがとう、ございます」
郷守の巫女の能力の基準がわからないので、どれくらい「お見事」なことなのか分からない。しかしお世辞でもないようなので、曖昧にお礼を言っておく。
「あやかしなら、妖術が使えるんですよね。彗月さんはどんな術を?」
「秘密です。」
「えっ」
「私はこれでも、あやかしの頭領の側近ですので。立場上、能力の情報はなるべく明かさないことにしています。この場では言えません。」
ニコリと笑顔で拒否する彗月。……いくら整った顔立ちであるとはいえ、ここまで笑顔しか見せてこないと、麗しさよりも胡散臭さが勝つ。
(出会った時から、この貼り付けたような表情。わざと壁を作っているみたいなのよね……)
彼なりの処世術なのか。あるいは、素の顔を隠したいのか。
見えない隔たりを感じながら、紬は、さてどうしたものかと考え込んだ。
そろそろ決断しないといけない。
郷守の巫女としてこの人に嫁ぎ、暁の里を守る役目を果たすか。
断って、これからも変わらず、小さな村の占い娘として過ごすか。
(……もし、この結婚を断ったら)
郷守の巫女がいないことで、退魔の結界とやらが完全に崩壊したら、暁の里は一体どうなってしまうだろう。
生まれ変わりの運命に背いて、ひとつの里を見捨てて生きるだなんて、明日からの寝覚めは最悪なんじゃないか。
「……」
ちらりと彗月を見やる。変わらず微笑みをたたえる顔がそこにある。
「……この縁談を断る選択肢なんて、最初から無いようなものでしょう」
「ええ──」
「でも、ちゃんと逃げ道を作ってくれましたね。彗月さんは」
「!……」
彗月は、薄く開いた口をそっと閉じた。
(──縁談を持ちかけるという形でやって来ているけれど、彼の役割はきっと、私を是が非でも里に連れ帰ること。)
二百年に一度の危機に瀕している里側からすれば、郷守の巫女のことは、何としてでも里入りさせなければと考えているはず。脅迫なども厭わないんじゃないか。
しかし彗月は、紬の意思を尊重している。紬に判断を委ねる彼に対して、沖が反応していたあたり恐らく、選択の余地を与えようとしているのは彗月の独断だろう。
「里の命運がかかっているのでしょうに、私に判断を委ねてくださって。更に、嫁入りの嫌な点も包み隠さず話してくださって。ありがたいことです」
「き、貴様……」
連が上げた声には焦りが滲んでいる。面で隠されているが、こちらを睨みつけていることは分かる。
「この期に及んで、縁談を断ろうというのか……!?」
「連」
「情けをかけてやるべきでは無かったのです、彗月様。やはり脅してでも……!」
制止を聞かず、ちゃぶ台に身を乗り出す勢いの連を見て、彗月が小さく息を吐いた。面倒だと思っているんだろうか、ここにきてようやく感情らしいものが見えた。
「そうでもしなければ、この者は里を見殺しに」
「ちょっと、違います。人聞きの悪いことを言わないでくださいよ。──覚悟ができるから、ありがたいと言ったんです。」
「!」
ハッと固まる連。彗月は紬に目を向けた。
「私は、自分のこの力は天からの授かりものだと思って、ささやかな人助けに使ってきました。けれど……真に成すべきことがあるのなら。役目を与えられ、この世に生まれ落ちたというのなら。それを果たさずしてどうしましょう。」
毅然とした顔で言い放つ紬を見て、沖と連は体を強ばらせ、息を飲んだ。
もちろん、紬とて余裕があるわけではない。顔に出ないだけだ。深く呼吸をすると、吐き出した息がかすかに震える。
大変な、引き返せないところに足を踏み出すのだと思って、心臓が大きく脈打っている。
後悔する生き方なんてもったいない。両親はいつもそう言っていた。
私だってそう思う。後悔しないし、恥じないような生き方がいい。
今日名を知ったばかりの里だとしても、見捨ててしまえば、きっと夢見が悪くなる。
「──彗月様。この縁談、お受けします。」
「!」
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