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アル視点

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 目の前でよがり狂う少年の、

 強調しよう、少年の

 快楽に叫ぶ声を聴きたい。

 酩酊するような甘いにおいをもっと嗅ぎたい。

 その柔らかい肌を舐めまわして俺のにおいを染み込ませたい。

 出来ることなら俺が――――狂わせたい。


 四肢に力を込めるが、押さえつける触手はびくともせず。


「くっそっ――――!! 」

 少年をめちゃめちゃにしたくてたまらなくなっている俺はもうすでに狂っているのだろう。
 獣人である俺が、こんなにもただの少年を貪りつくしたいなんて。


 恋愛対象でも、ましてや番いでもないはずの少年を。




 獣人という種族ほど哀れな種族はないと俺は思っている。
 腕力も脚力も優れている点は騎士として働いていく上で役に立ったが、ヒトにだってすごい奴はたくさんいるしそれまでだ。
 心のど真ん中に大きく空いた穴を、抱えながら生きていくのは辛い。
 コロコロ女が変わる悪友のように刹那的な恋愛を楽しみたいと何度思ったことか。
 それを脈々と受け継いできた俺の遺伝子は、受け付けない。
 満たされない感情は年々強く激しくなっていく。
 そんな中、王命により俺は世界を救ってくれる少年聖女様の護衛を引き受けることになった。


 ――――くそっ。
 油断してた。転移に巻き込まれたミコトに間一髪で間に合ったこと、腕の中の柔らかさに意識が一瞬向いてしまったことが、迂闊だった。


 関節をがっしり固めながら、指先しか動かせない状態で宙に持ち上げられる。

 先ほどまで抱きしめていたから、手を伸ばせばすぐでも手が届きそうな目の前にミコトがいるのに、この状態ではモンスターに怯え震える肩を抱きしめてやることも――――

 いや、何を考えてるんだ俺は。
 もう13にもなるいい年の男だぞ。
 幸い、こいつらは体液を欲しがるだけで命に危険はない。
 死ぬほど搾り取られるらしいが、満足すれば解放される。
 むしろ与えられる快感にハマって自ら身体を差し出すド変態もいると聞く。
 成長期前の少年にはいささか辛いかもしれないが、多少の天国を見るだけで……
 待て。ミコトはどこから体液を搾取されるんだ?
 幼いころの不幸によりあいつには男の象徴が――――

 俺の思考を中断させるかのように触手の凌辱が始まった。
 1本の太い触手が服の中に入ってきて胸の周りにまとわりついた。そのまま女性の胸当てのように俺の胸囲を1周巻いた後、左右にうねりだす。


 くっ――胸で感じる趣味はなかったはずだが。
 さすが噂の触手さまだ。媚薬に濡れながら、ひねりつぶされた乳首がどんどん勃起していくのがわかる。
 下半身に血流が流れ込んでいくのが手に取るように感じ、触手の手練手管にあっという間にそそり立ってしまった。

 別の触手が顔の横でくぱぁとその口を開けた。口の中は、媚薬でしとどに濡れ、細かい小さな触手がびっしりと生え1本1本が意思を持っているかのようにうねうねと動いている。


 それはアカンやつや。


「こんにちは! 」とでもいうかのようにぺこりとお辞儀をしたその触手は戸惑いもなく下着の中に侵入してきた。

「………ぅっ………」

 熟練の娼婦のように搾り取られる手つきにただただ、与えられる快楽を享受することしかできない。亀頭に吸い付かれながら竿全体を包み込んだ触手が大きく動く。腰から全身に広がる快楽に一気に持っていかれた。
 ピークの直前まで触手は俺を追いやるが、そこは俺も男だ。
 こんな簡単にイカされたくなくて、腹筋に力を込めて耐える。


「アルっ……!! 」

 快楽に呆けていた脳みそに、ミコトの声が届いた。

 その声にピンク色になっていた頭の霧が晴れたようで、呼ばれた声に導かれるように視線を前へ向けた。


 おい、ふざけるなよ。
 なんでなんだって男のくせに――――

 頬を上気させ、目に涙を浮かべ、恐怖と快楽の狭間で揺れている、
 少年の姿を目にした途端、
 脳天から爪先まで全身に雷に打たれたかのような衝撃が走り、
 不覚にも暴発してしまった。

 心臓が早鐘を打つ。
 一度意識してしまうと、正面から目が離せない。
 あの服の下でどんな凌辱を受けているんだ。
 俺と同じようにか。どこで感じてるんだ。

 あらぬ妄想で頭がいっぱいになる。
 妄想で人を貶める行為なんて、普段の俺ならしないはずだが、触手からの快楽と、この宴が始まってから漂い始めた甘いにおいと、目の前の少年に――馬鹿になってしまったのだろうか。今すぐこの手で抑え込んでめちゃめちゃに犯し尽くしたい欲望にかられ困惑する。理性が警報を鳴らすが、俺の本能は犯せと囁きかけてくる。

 触手が邪魔だ。

 どんなに力を入れてもまとわりつく腕を絶対に緩めない触手にイラつく。
 でもこいつのおかげで俺は目の前の少年を汚さずにすむ。

 とりあえず欲望のままに散々吐き出して、早く触手を満足させるしかないだろう。ミコトはきっと精を出せないから俺がメインとなるはずで――――


 細い触手がミコトの服の中に侵入してからの乱れ具合がおかしい。
 耳まで真っ赤にして唯一動く顔を左右に振って何かを逃すように――
 そのまま背筋に力が入ってグッと身体を反らせる。

「見ないで――――っ!! 」

 今イッたのか――!?
 どこで! どうやって!!
 あぁくっそ。顔が見たい。触手のクソ野郎。

 ミコトの痴態にギチギチに張り詰めた息子を触手は遠慮なしに絡めとり扱いていく。
 いけないことはわかっているけれど、止められない本能に従い、ミコトをオカズにしながら2度目の精を吐き出した。


 さすがに連続で2度も吐き出せば、少しは俺の息子もおとなしくなる。
 あとどれだけすればいいんだ。
 ミコトで興奮した罪悪感が、吐き出した後の冷静な頭に深く影を落とす。
 一度目を閉じ、落ち着くために大きく息をついて、再びミコトを見た。


 ななななんでそれを!!!
 くっそ触手め!!!

 萎えたはずの息子が一気に熱を取り戻した。

 ミコトが声を震わせ怯えるそれは――――
 俺自身によく似た形の肉棒触手だった。

 あぁくっそ。それをどこにツッコむ気だ。
 自慢じゃないが俺のものは――まぁ獣人だし、ガタイに見合ったそれなりの大きさをしている。
 年端も行かない子どもに使うなんて裂けちまうぞ。

 やめろ!という自分と裏腹に、ゆっくりと肉棒触手がミコトに近づいていく様子から目が離せない。肉棒触手はミコトの柔らかい頬に自身を擦り付けた後にゆっくりと離れた。先端からにじみ出た粘液がミコトとの間に細い銀色の橋を作る。テラテラと輝いたミコトの頬が、横顔が、表情は怯えているのに、どこか期待しているようにも見えて――――おい、どこでそんな色っぽいことを学んできた。

 興奮して目が離せない。

「あぁぁぁぁ~~!! 」

 どう考えたってキャパオーバーなはずの肉棒を咥えたミコトの悲鳴は痛みに泣き叫ぶものではなく、快楽を喜び受け入れているようにも聞こえて――

 俺の形を少年が受け入れ、よがっているという現実に更に興奮する。


 俺はとんでもない変態だったのか?
 もっと声が聞きたい。我慢せずに喘いでよがってもっと欲しがればいい。
 ミコトから発せられるフェロモンだろうか、甘いにおいがどんどん濃くなってきて呼吸すればするほど脳みそを焼き焦がす。

「……っぁあ!! 」

 おそらく2回目だろう、一生懸命声を噛み殺し、隠そうとしながらも隠しきれていない絶頂を迎えた少年の痴態に、理性の糸がプツンと切れる音がした。


 もう駄目だと、少年が、ミコトが、甘さを孕んだ震える声でいう。
 そうか、もう無理なのか、早く終わってほしいのか。

 なら――
 俺ががんばれるようにもっと喘いでよがり狂っておかしくなればいい。


 首筋に顔を寄せると、先ほどから俺をおかしくさせていた、甘いにおいがさらに濃くなり思考回路をいかれさせる。

 あぁやべぇ。気持ちいい。
 ヌルヌルの触手に扱かれながら、目の前のオカズを堪能する。

 なんで声を我慢するんだ。お前のことをもっと教えてくれよ。
 俺の形の触手をそんなに美味しそうに食べやがって。

 嫌がりながらも絞り出される嬌声、
 真っ赤に染まった細い首筋、
 甘ったるいにおい

 全てに興奮する

 なぁ、一緒にもっともっと気持ちよくなろうぜ――――





 あぁ。最悪だ。俺は最低最悪の男で護衛騎士失格だ。
 嫌がる少年が、無理やり高められている姿を見て、人生最高に興奮してしまった。
 最悪だ。ヒトとしても、獣人としても、最も底辺だ。

 何回吐き出したかわからない精を出した徒労感で身体に全く力が入らない。そして先ほどまでの饗宴を思い出し、激しい後悔から顔を向けることも出来ない。なんて馬鹿なことをしたんだ。一番狂ってたのは俺だ。ミコトへの罪悪感が深くのしかかる。大人の男のイヤらしい興奮材料に使われるなんて……嫌われただろうか――――

「……アル、この水で身体清めて。早くここから離れよう。」

「……あぁ。」

 ミコトは先ほどのことは忘れるようにしたらしい。
 少年のくせにやけに大人な対応だな。


 でも、それが一番ベストだ。
 だって俺は獣人で、
 番いと出会ってしまう運命で、
 それはお前ではない。

 本来なら、番い以外に欲情することなんてないはずで
 これは何かの間違いなのだから――――



 チクリと痛む胸を気にしないようにしながらそっとミコトを盗み見る。
 きらりと光る、ミコトの白い腕輪がやけに目に痛かった――――


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