ヒロインに転生しましたけど、私、王太子より悪役令嬢が好きなんです。

ねーさん

文字の大きさ
42 / 83

41

しおりを挟む
41

 ああ、私、また溺れて死ぬのか…
 
 湖に落ちたローゼはキラキラ光りながら遠ざかる水面を見ながら思う。

 ああ、どうか、デビィが助かりますように。
 願わくば、私が死んでもこの世界が消える事なく、リリー様が世界一幸せになれますように。
 …サイオン殿下が、幸せに、なれますように。

-----

「うーん、いくらかわいくてもこんなお子ちゃま好きになるものかなあ?」
 前世で、スマホの画面を見ながら私は呟く。
 ここは私の部屋で、私の他に人は居ない。完全な一人言だ。

 画面に映るのは、攻略対象者の王太子サイオン。青紫の髪に青紫の瞳、穏やかに笑う大人の男性だ。対するヒロインはまだ十五歳の少女。
「十五って、中三でしょ?サイオンは二十四だっけ。歳の離れた結婚があるあるの時代設定だって言っても二十四歳婚約者ありの王太子が、中学三年生の男爵令嬢を好きになるなんて、リアリティがないよねぇ」
 重ねて言うけど、これは一人言。
 友達がいないから一人言の癖がついちゃったんだよね。

 とか言いつつ、結局今回もサイオンルートにしちゃうんだよね。
 推しだから仕方ないよね。

 ルート確定の救護室での初チューも良いけど、卒業パーティーの後二人きりになってからのプロポーズあーんどチューが最高なんだよねぇ。
「学園を卒業したら私の妃になりなさい」からの、少し情熱的なキス。
 はあ…カッコいい…

 こんな人に「好き」って言われるのって、どんな感じなんだろう。

 いや、その前に私、人に好かれた事ないな…

 もし生まれ変わるなら、家族の仲が良くて、友達もいっぱいいて、サイオンみたいな人に「好き」って言ってもらえるような人になりたいな。
 生まれ変わりなんて、所詮夢物語なんだけどね。

「ローゼ」
 ぼんやりと青紫が見える。
 …あれぇ?私、ゲームしながら寝ちゃったのかな…?
 夢にまでサイオンが出てくるなんて、どんだけハマってんだか。
「殿下、とにかく呼吸が戻ったので、運びましょう」
「ああ」
 ふわりと身体が浮く感覚。
 自分の手足が重い。
「殿下私が…」
「いや、ローゼは俺が運ぶ」
 俺…サイオンは自分の事いつも私って言ってたのに…夢だからアレンジ効いちゃってるのかな?
 本当に抱き上げられてるみたいな浮遊感。ふわふわして気持ちい…
 お姫様抱っこなんてされた事ないのに妙にリアルな夢…だな…

-----

「クレイグ殿は何者なんですか?」
 湖の近くのキャストン伯爵家の屋敷にデボラを運び込み、呼んでいた医者に診てもらう間、血の付いた服を着替えているクレイグにイヴァンが話し掛ける。
「ん?」
「王都で一番大きな娼館の主にすぐに会えて、情報をもらえるなんて普通じゃないです」
 クレイグはシャツを脱ぐと、伯爵家が貸してくれたシャツに袖を通す。
「…良い筋肉ついてますね」
「はは。まあ、あの男…父が生きている間は、何をしでかすか判らなくて、対抗するために鍛えていましたから。今も惰性で鍛錬は続けているので」
「あー…」
 シャツのボタンを留めながらクレイグは言う。
「ローゼを公爵家へ行かせた後、あの男から爵位を奪うために娼館や闇人身売買の事を調べていて、流れで違法に小児買春を行って居た組織を一つ潰した事がありまして」
 さらりと何て事言うんだこの人。
「その潰した組織の元頭が今経営しやっているのが、王都で一番大きな娼館で。そのおかけでそちら方面に少し顔が利きます」
 少し顔が利く、なんてもんじゃあ…
「ローゼを連れて来いと依頼をしたのは、とある侯爵でした。これは下位貴族の私の手には余る相手なので、王太子殿下に対処していただこうと考えているんです」
 サイオンにローゼを攫おうとした奴の対処をさせようとか、本当は恐らく自分でも対処できるんだろうに…何だこの人…格好良すぎるだろ。
「クレイグ殿…惚れそうなのでもう止めてください」
 イヴァンは両手で顔を覆いながら言う。
 サイオンもローゼもいなければ惚れていたぞ。これは。
「ん?惚れても良いですが応えられませんよ」
 クレイグはイヴァンに笑顔を向ける。
「私は今日、生まれて初めて異性に心を奪われたので」
 クレイグは笑いながら言った。






しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

王宮に薬を届けに行ったなら

佐倉ミズキ
恋愛
王宮で薬師をしているラナは、上司の言いつけに従い王子殿下のカザヤに薬を届けに行った。 カザヤは生まれつき体が弱く、臥せっていることが多い。 この日もいつも通り、カザヤに薬を届けに行ったラナだが仕事終わりに届け忘れがあったことに気が付いた。 慌ててカザヤの部屋へ行くと、そこで目にしたものは……。 弱々しく臥せっているカザヤがベッドから起き上がり、元気に動き回っていたのだ。 「俺の秘密を知ったのだから部屋から出すわけにはいかない」 驚くラナに、カザヤは不敵な笑みを浮かべた。 「今日、国王が崩御する。だからお前を部屋から出すわけにはいかない」 ※ベリーズカフェにも掲載中です。そちらではラナの設定が変わっています。(貴族→庶民)それにより、内容も少し変更しておりますのであわせてお楽しみください。

【完結】僻地の修道院に入りたいので、断罪の場にしれーっと混ざってみました。

櫻野くるみ
恋愛
王太子による独裁で、貴族が息を潜めながら生きているある日。 夜会で王太子が勝手な言いがかりだけで3人の令嬢達に断罪を始めた。 ひっそりと空気になっていたテレサだったが、ふと気付く。 あれ?これって修道院に入れるチャンスなんじゃ? 子爵令嬢のテレサは、神父をしている初恋の相手の元へ行ける絶好の機会だととっさに考え、しれーっと断罪の列に加わり叫んだ。 「わたくしが代表して修道院へ参ります!」 野次馬から急に現れたテレサに、その場の全員が思った。 この娘、誰!? 王太子による恐怖政治の中、地味に生きてきた子爵令嬢のテレサが、初恋の元伯爵令息に会いたい一心で断罪劇に飛び込むお話。 主人公は猫を被っているだけでお転婆です。 完結しました。 小説家になろう様にも投稿しています。

行き遅れのお節介令嬢、氷の公爵様と結婚したら三人娘の母になりました

鳥柄ささみ
恋愛
お節介焼きで困っている人を放っておけないシアは、数多のご令嬢達から人気の令嬢だ。毎日ファンレターが届き、社交界に出れば令嬢に取り囲まれるほどである。 けれど、それに反比例するように男性からの人気はなく、二十七だというのに嫁の貰い手もないため、毎日母から小言をもらっていた。 そんなある日のこと、突然公爵家から縁談の話が。 シアは公爵家がなぜ自分に縁談など持ち掛けるのかと訝しく思いつつ話を受けると、なんと公爵の後妻として三人の娘の母代わりになれと言われる。 困惑するも、自分へ縁談を持ちかけた理由を聞いて、お節介なシアは嫁ぐこと決めたのだった。 夫になるレオナルドはイケメンなのに無表情で高圧的。三人の娘も二女のアンナを除いて長女のセレナも三女のフィオナもとても反抗的。 そんな中でもお節介パワーを発揮して、前向きに奮闘するシアの物語。 ※他投稿サイトにも掲載中

【完結】モブ令嬢としてひっそり生きたいのに、腹黒公爵に気に入られました

22時完結
恋愛
貴族の家に生まれたものの、特別な才能もなく、家の中でも空気のような存在だったセシリア。 華やかな社交界には興味もないし、政略結婚の道具にされるのも嫌。だからこそ、目立たず、慎ましく生きるのが一番——。 そう思っていたのに、なぜか冷酷無比と名高いディートハルト公爵に目をつけられてしまった!? 「……なぜ私なんですか?」 「君は実に興味深い。そんなふうにおとなしくしていると、余計に手を伸ばしたくなる」 ーーそんなこと言われても困ります! 目立たずモブとして生きたいのに、公爵様はなぜか私を執拗に追いかけてくる。 しかも、いつの間にか甘やかされ、独占欲丸出しで迫られる日々……!? 「君は俺のものだ。他の誰にも渡すつもりはない」 逃げても逃げても追いかけてくる腹黒公爵様から、私は無事にモブ人生を送れるのでしょうか……!?

【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない

朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。

ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…

ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。 一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。 そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。 読んでいただけると嬉しいです。 2/26 番外編を投稿しました。 読んでいただけると嬉しいです。 思っていたよりずっとたくさん読んでいただいていてとても嬉しいです。 とてもとてもありがとうございます!!   

ストーカー婚約者でしたが、転生者だったので経歴を身綺麗にしておく

犬野きらり
恋愛
リディア・ガルドニ(14)、本日誕生日で転生者として気付きました。私がつい先程までやっていた行動…それは、自分の婚約者に対して重い愛ではなく、ストーカー行為。 「絶対駄目ーー」 と前世の私が気づかせてくれ、そもそも何故こんな男にこだわっていたのかと目が覚めました。 何の物語かも乙女ゲームの中の人になったのかもわかりませんが、私の黒歴史は証拠隠滅、慰謝料ガッポリ、新たな出会い新たな人生に進みます。 募集 婿入り希望者 対象外は、嫡男、後継者、王族 目指せハッピーエンド(?)!! 全23話で完結です。 この作品を気に留めて下さりありがとうございます。感謝を込めて、その後(直後)2話追加しました。25話になりました。

処理中です...