52 / 83
51
しおりを挟む
51
「リリー様…」
ベッドに横たわるローゼは、起き上がりながらリリーを迎えた。
「ローゼ、良かったわ」
リリーは涙ぐんでローゼの手を取る。
「もう。サイオン殿下ったらなかなかローゼに会わせてくれないんだもの。昨日眠ってるローゼの顔は見たんだけど、目が覚めたなら早く会いたいのに」
リリーはプリプリしながら言う。
今は誘拐事件の翌々日の夜だ。
ローゼは事件の翌日に亡くなったとされ、クレイグとリリー、サイオンとイヴァンがその最期を看取った事になっている。
リリーは王太子の婚約者なので王宮にリリーが滞在するため部屋があり、事件の日からそこで待機しているのだ。
「リリー様、リリー様の『お願い』、殿下から伺いました」
ローゼがそう言うと、リリーの頬が少し赤くなる。
「あ、あら。もう聞いたの?」
「リリー様」
ローゼはリリーに取られた手を逆に握り返す。
「私…湖で、このまま死ぬんだと思った時に『この世界が消えませんように』『リリー様が世界で一番幸せになられますように』って願って…」
「自分の命が消えるかという時に、私の幸せを願ってくれたの…?」
「それはもう。私はリリー様が大好きなので…だから、リリー様には絶対に幸せになっていただきたいんです」
リリーの目を見ながら手をぎゅっと握る。
「わかったわ。私、絶対に幸せになるわ」
もう私にはリリー様とサイオン殿下が婚約解消しないで欲しいなんて言えないから…
リリーの「お願い」が叶って、誰よりも幸せになって欲しい。
ローゼはリリーの手を握りながら心からそう祈った。
-----
翌日。
まだ安静にと言われ、ベッドに座るローゼの傍らに、黒い服を着て黒いレースの付いたトーク帽を被るコーネリアが立っている。
「随分とゲームとはかけ離れた展開になって来たものねぇ」
感心したように言うコーネリア。
「まあ、そもそもゲームの設定とは違う部分もあるからどんな展開になっても不思議じゃないけどね」
確かに。ゲームではそもそもヒロインであるローゼ自体が「幸せな家庭」育ちだし、コーネリアも未亡人ではなく、イヴァンとも本当の恋人同士だったのだ。
「登場人物のキャラも違うし…ローゼさんも私もゲームのキャラとは違うけど、一番違うのはやっぱりサイオン殿下よねぇ」
「…ですね」
ローゼは深く頷く。
「ローゼさんはゲームのサイオン殿下と現実のサイオン殿下だと、どっちが好き?」
ゲームのサイオン殿下は控えめに言っても「神」だけど、こっちのサイオン殿下は…とても人間っぽい。
「……」
ローゼは頬を真っ赤にしてコーネリアを見上げる。
「ん?」
「…正直……こっちの方が断然好きですぅ」
両手で頬を押さえて俯く。
「私が殿下に惹かれてるのは『ゲームの力』のせいですから!って意地を張ってるローゼさんより、素直なローゼさんの方がかわいいわよ」
コーネリアはローゼの頭に手を乗せてナデナデと撫でた。
「あ、私ちょっと思ったんだけど、私ってゲーム通りだとイヴァン様の事本当に好きでしょ?」
「はい」
「でも今の私ってイヴァン様を恋愛対象に見た事がないのよ。王宮の侍女になった事とか、ロイズ殿下付きになった事はゲームの力だと思うけど、気持ちに関してはゲームの力、働いてないなって」
コーネリアは頬に人差し指を当てて首を傾げた。
「でね、もしかして生まれ変わり…転生者って言うの?その人の『気持ち』にはゲームの力って働かないのかな~って」
「……え?」
「だってローゼさんもゲームの力が働いてたら少なからず全ての攻略対象者に『好意』くらいは抱きそうな物じゃない?」
それは、そう、なのかも?
「だから、ローゼさんもサイオン殿下をゲームの力とかじゃなく、純粋に好きなんじゃないかな~と思うの」
「…そうなんですかね?」
「きっとそうよ。それで?自分の気持ちもだけど、殿下の気持ちも『ゲームの力』だから受け入れないって頑なだったのに、どういう心境の変化?」
「…あの、念の為に言いますけど、私の意思でここにいる訳じゃないんですよ?」
そう言いつつも、ローゼは耳まで赤くなっている。
ここは、サイオンの私室で、ローゼが座っているベッドはサイオンのベッドなのだ。
「もちろん。サイオン殿下が『ローゼの意思がどうであろうと俺はもうローゼを離さない』って宣言されて、実行するつもりなのは知ってるわ」
「そ、そんな宣言を…?」
ますます赤くなるローゼ。
「イヴァン様とリリー様とクレイグ様の前でそう言われたって聞いたわ」
座っていたローゼはばふっと横に倒れ、両手で顔を覆って
「~~~っ」
と声も出せずに悶絶している。
「『恥ずかしい』『嬉しい』どっちかしら?」
「…両方」
「ふふ。やっぱり素直なローゼさんかわいいわあ」
コーネリアは横たわるローゼの頭を撫でた。
「リリー様…」
ベッドに横たわるローゼは、起き上がりながらリリーを迎えた。
「ローゼ、良かったわ」
リリーは涙ぐんでローゼの手を取る。
「もう。サイオン殿下ったらなかなかローゼに会わせてくれないんだもの。昨日眠ってるローゼの顔は見たんだけど、目が覚めたなら早く会いたいのに」
リリーはプリプリしながら言う。
今は誘拐事件の翌々日の夜だ。
ローゼは事件の翌日に亡くなったとされ、クレイグとリリー、サイオンとイヴァンがその最期を看取った事になっている。
リリーは王太子の婚約者なので王宮にリリーが滞在するため部屋があり、事件の日からそこで待機しているのだ。
「リリー様、リリー様の『お願い』、殿下から伺いました」
ローゼがそう言うと、リリーの頬が少し赤くなる。
「あ、あら。もう聞いたの?」
「リリー様」
ローゼはリリーに取られた手を逆に握り返す。
「私…湖で、このまま死ぬんだと思った時に『この世界が消えませんように』『リリー様が世界で一番幸せになられますように』って願って…」
「自分の命が消えるかという時に、私の幸せを願ってくれたの…?」
「それはもう。私はリリー様が大好きなので…だから、リリー様には絶対に幸せになっていただきたいんです」
リリーの目を見ながら手をぎゅっと握る。
「わかったわ。私、絶対に幸せになるわ」
もう私にはリリー様とサイオン殿下が婚約解消しないで欲しいなんて言えないから…
リリーの「お願い」が叶って、誰よりも幸せになって欲しい。
ローゼはリリーの手を握りながら心からそう祈った。
-----
翌日。
まだ安静にと言われ、ベッドに座るローゼの傍らに、黒い服を着て黒いレースの付いたトーク帽を被るコーネリアが立っている。
「随分とゲームとはかけ離れた展開になって来たものねぇ」
感心したように言うコーネリア。
「まあ、そもそもゲームの設定とは違う部分もあるからどんな展開になっても不思議じゃないけどね」
確かに。ゲームではそもそもヒロインであるローゼ自体が「幸せな家庭」育ちだし、コーネリアも未亡人ではなく、イヴァンとも本当の恋人同士だったのだ。
「登場人物のキャラも違うし…ローゼさんも私もゲームのキャラとは違うけど、一番違うのはやっぱりサイオン殿下よねぇ」
「…ですね」
ローゼは深く頷く。
「ローゼさんはゲームのサイオン殿下と現実のサイオン殿下だと、どっちが好き?」
ゲームのサイオン殿下は控えめに言っても「神」だけど、こっちのサイオン殿下は…とても人間っぽい。
「……」
ローゼは頬を真っ赤にしてコーネリアを見上げる。
「ん?」
「…正直……こっちの方が断然好きですぅ」
両手で頬を押さえて俯く。
「私が殿下に惹かれてるのは『ゲームの力』のせいですから!って意地を張ってるローゼさんより、素直なローゼさんの方がかわいいわよ」
コーネリアはローゼの頭に手を乗せてナデナデと撫でた。
「あ、私ちょっと思ったんだけど、私ってゲーム通りだとイヴァン様の事本当に好きでしょ?」
「はい」
「でも今の私ってイヴァン様を恋愛対象に見た事がないのよ。王宮の侍女になった事とか、ロイズ殿下付きになった事はゲームの力だと思うけど、気持ちに関してはゲームの力、働いてないなって」
コーネリアは頬に人差し指を当てて首を傾げた。
「でね、もしかして生まれ変わり…転生者って言うの?その人の『気持ち』にはゲームの力って働かないのかな~って」
「……え?」
「だってローゼさんもゲームの力が働いてたら少なからず全ての攻略対象者に『好意』くらいは抱きそうな物じゃない?」
それは、そう、なのかも?
「だから、ローゼさんもサイオン殿下をゲームの力とかじゃなく、純粋に好きなんじゃないかな~と思うの」
「…そうなんですかね?」
「きっとそうよ。それで?自分の気持ちもだけど、殿下の気持ちも『ゲームの力』だから受け入れないって頑なだったのに、どういう心境の変化?」
「…あの、念の為に言いますけど、私の意思でここにいる訳じゃないんですよ?」
そう言いつつも、ローゼは耳まで赤くなっている。
ここは、サイオンの私室で、ローゼが座っているベッドはサイオンのベッドなのだ。
「もちろん。サイオン殿下が『ローゼの意思がどうであろうと俺はもうローゼを離さない』って宣言されて、実行するつもりなのは知ってるわ」
「そ、そんな宣言を…?」
ますます赤くなるローゼ。
「イヴァン様とリリー様とクレイグ様の前でそう言われたって聞いたわ」
座っていたローゼはばふっと横に倒れ、両手で顔を覆って
「~~~っ」
と声も出せずに悶絶している。
「『恥ずかしい』『嬉しい』どっちかしら?」
「…両方」
「ふふ。やっぱり素直なローゼさんかわいいわあ」
コーネリアは横たわるローゼの頭を撫でた。
6
あなたにおすすめの小説
【完結】僻地の修道院に入りたいので、断罪の場にしれーっと混ざってみました。
櫻野くるみ
恋愛
王太子による独裁で、貴族が息を潜めながら生きているある日。
夜会で王太子が勝手な言いがかりだけで3人の令嬢達に断罪を始めた。
ひっそりと空気になっていたテレサだったが、ふと気付く。
あれ?これって修道院に入れるチャンスなんじゃ?
子爵令嬢のテレサは、神父をしている初恋の相手の元へ行ける絶好の機会だととっさに考え、しれーっと断罪の列に加わり叫んだ。
「わたくしが代表して修道院へ参ります!」
野次馬から急に現れたテレサに、その場の全員が思った。
この娘、誰!?
王太子による恐怖政治の中、地味に生きてきた子爵令嬢のテレサが、初恋の元伯爵令息に会いたい一心で断罪劇に飛び込むお話。
主人公は猫を被っているだけでお転婆です。
完結しました。
小説家になろう様にも投稿しています。
とっていただく責任などありません
まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、
団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。
この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!?
ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。
責任を取らなければとセルフイスから、
追いかけられる羽目に。
王宮に薬を届けに行ったなら
佐倉ミズキ
恋愛
王宮で薬師をしているラナは、上司の言いつけに従い王子殿下のカザヤに薬を届けに行った。
カザヤは生まれつき体が弱く、臥せっていることが多い。
この日もいつも通り、カザヤに薬を届けに行ったラナだが仕事終わりに届け忘れがあったことに気が付いた。
慌ててカザヤの部屋へ行くと、そこで目にしたものは……。
弱々しく臥せっているカザヤがベッドから起き上がり、元気に動き回っていたのだ。
「俺の秘密を知ったのだから部屋から出すわけにはいかない」
驚くラナに、カザヤは不敵な笑みを浮かべた。
「今日、国王が崩御する。だからお前を部屋から出すわけにはいかない」
※ベリーズカフェにも掲載中です。そちらではラナの設定が変わっています。(貴族→庶民)それにより、内容も少し変更しておりますのであわせてお楽しみください。
【完結】モブ令嬢としてひっそり生きたいのに、腹黒公爵に気に入られました
22時完結
恋愛
貴族の家に生まれたものの、特別な才能もなく、家の中でも空気のような存在だったセシリア。
華やかな社交界には興味もないし、政略結婚の道具にされるのも嫌。だからこそ、目立たず、慎ましく生きるのが一番——。
そう思っていたのに、なぜか冷酷無比と名高いディートハルト公爵に目をつけられてしまった!?
「……なぜ私なんですか?」
「君は実に興味深い。そんなふうにおとなしくしていると、余計に手を伸ばしたくなる」
ーーそんなこと言われても困ります!
目立たずモブとして生きたいのに、公爵様はなぜか私を執拗に追いかけてくる。
しかも、いつの間にか甘やかされ、独占欲丸出しで迫られる日々……!?
「君は俺のものだ。他の誰にも渡すつもりはない」
逃げても逃げても追いかけてくる腹黒公爵様から、私は無事にモブ人生を送れるのでしょうか……!?
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
行き遅れのお節介令嬢、氷の公爵様と結婚したら三人娘の母になりました
鳥柄ささみ
恋愛
お節介焼きで困っている人を放っておけないシアは、数多のご令嬢達から人気の令嬢だ。毎日ファンレターが届き、社交界に出れば令嬢に取り囲まれるほどである。
けれど、それに反比例するように男性からの人気はなく、二十七だというのに嫁の貰い手もないため、毎日母から小言をもらっていた。
そんなある日のこと、突然公爵家から縁談の話が。
シアは公爵家がなぜ自分に縁談など持ち掛けるのかと訝しく思いつつ話を受けると、なんと公爵の後妻として三人の娘の母代わりになれと言われる。
困惑するも、自分へ縁談を持ちかけた理由を聞いて、お節介なシアは嫁ぐこと決めたのだった。
夫になるレオナルドはイケメンなのに無表情で高圧的。三人の娘も二女のアンナを除いて長女のセレナも三女のフィオナもとても反抗的。
そんな中でもお節介パワーを発揮して、前向きに奮闘するシアの物語。
※他投稿サイトにも掲載中
【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない
朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。
ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…
ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。
一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。
そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。
読んでいただけると嬉しいです。
2/26 番外編を投稿しました。
読んでいただけると嬉しいです。
思っていたよりずっとたくさん読んでいただいていてとても嬉しいです。
とてもとてもありがとうございます!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる