ヒロインに転生しましたけど、私、王太子より悪役令嬢が好きなんです。

ねーさん

文字の大きさ
53 / 83

52

しおりを挟む
52

「コーネリア様…私、前世で母親に殺されたんです」
 ベッドの上で、倒れて顔を手で覆ったままローゼは言う。
「え?」
「前世の事、あまり覚えてないって言いましたけど、本当は覚えてて…父と母は仲が悪くて、子供わたしの事もどっちも無関心で、私も友達もいなくてゲームばっかりしてる暗い子供でした」
「ローゼ…」
 コーネリアはローゼの頭元に座ると、そっとローゼの頭を撫でてくれる。
「中学を出る頃、父と母が離婚して、母と家を出たその日に…母に海に突き落とされて…」
「どうして…」
「よくわからないんですけど『養育費より保険金』って声が聞こえた…聞こえるはずないけど聞こえた気がしたので…お金なのかなあ、と」
「そんな!我が子をそんな…」
 コーネリアの前世は普通の主婦で、子供が巣立ってからゲームに嵌ったと言っていたから、母として、ローゼの言う事が理解し難いのだろう。
「それが、十五歳の時で、今も十五歳で…湖に落ちた時『私って十五で水死するのが運命なのかな』って思って。それで目が覚めた時…もしローゼとして生きていたのが夢で、目を開けたら前世の続きだったら…って考えたら、ものすごく怖くて」
 顔を隠したまま話すローゼの頭をコーネリアは黙って優しく撫でる。
「それで、目が覚めたらの世界で。すごく嬉しくて…あそこで死んだんだと思えば、これからは『おまけ』みたいなものだから、あんまりゲームの力とか拘らなくても良いのかなって思ったんです」
 ローゼは顔から手を離すと、コーネリアに照れ笑いを向けた。

-----

 コーネリアと入れ替わりに、黒いスーツに黒いネクタイのクレイグが寝室へと入って来る。
 ベッドに座ったローゼとぎゅっと抱き合う。
「目が覚めてからは元気な様子だとは聞いていたが、顔を見られてやっと安心したよ」
「お兄様…」
「ああ、でも私の妹としてのローゼと会えるのは今日で最後だと思うと…淋しいな」
 クレイグもベッドに座り、ローゼの頬を撫でる。
 今日はこれから「ローゼの葬儀」なのだ。
 水中で溺れたところをすぐに救助され、その時は問題ない状態だったものの、その後再び状態が悪化し、呼吸不全を起こす。二次溺水などとも呼ばれるこの症状でローゼは王城の医療棟で亡くなった事とされた。
 王城で亡くなったので、王城内の教会で葬儀を執り行う事になり、クレイグも不自然でなくサイオンの元に居るローゼに会いに来る事ができているのだ。
「私は…ずっとお兄様の妹です」
「もちろんだ。公の場では兄妹ではなくなるが、ローゼはずっと私のかわいい妹で、たった一人の家族だからな」
 クレイグはくしゃくしゃとローゼの頭を撫でる。

「お兄様、デビィの具合はどうなんですか?」
 ローゼは目覚めてからずっと気になっていた事を聞く。
「命に別状はないが、出血が多かったので鎮痛剤でまだ眠っている状態だな」
「後遺症とかは…?」
「臓器は傷ついていないし…恐らくは大丈夫だと思う」
 ローゼはほっと息を吐く。
「今日は行けないが、明日はまた様子を見に行く。もう二、三日もすれば王城の医療棟へ移れるだろうから、すぐに会えるさ」
 私が「別人」になっちゃったら、デビィとは会えなくなっちゃうのかな…?
「デビィには、このの事、話して良いんですよね?」
「ああ。ただ、伯爵家でこの話をする訳にはいかないから、デボラ嬢に詳しく説明をするのは医療棟こちらに移ってからだな」
「そっか…」
「そういえば、伯爵家にデボラ嬢の恋人が駆け付けて来たとは聞いていないが…悪役令嬢の恋人と言う事は攻略対象者であり生徒会役員だろう?デボラ嬢の怪我を知らない訳ないと思うが何故会いに来ないんだ?」
「ああ…」
 そういえばお兄様はデビィとマリックがもうお別れしてるって知らないんだっけ。
「マリックさんは幼なじみだから…」
 マリックさんが今でもデビィの恋人なら、貴族じゃないマリックさんが伯爵邸を訪ねるのは難しいけど…それでもきっとどうにかして駆け付けたんだろうけどな。
 多分デビィが医療棟へ移ってから幼なじみとして会いにいくつもりなんじゃないかなあ。

「ローゼ!」
 その時、勢い良く扉が開き、リリーが入ってくる。
「リリー様」
 ガバッとローゼに抱きつくリリー。
「もう!ローゼの葬儀だなんて!本当じゃないって知ってても泣きそうだわ」
「リリー様…」
「ニューマン先生も来られてるの。寝室には入れないって…ローゼ顔を見せてあげて?」


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

王宮に薬を届けに行ったなら

佐倉ミズキ
恋愛
王宮で薬師をしているラナは、上司の言いつけに従い王子殿下のカザヤに薬を届けに行った。 カザヤは生まれつき体が弱く、臥せっていることが多い。 この日もいつも通り、カザヤに薬を届けに行ったラナだが仕事終わりに届け忘れがあったことに気が付いた。 慌ててカザヤの部屋へ行くと、そこで目にしたものは……。 弱々しく臥せっているカザヤがベッドから起き上がり、元気に動き回っていたのだ。 「俺の秘密を知ったのだから部屋から出すわけにはいかない」 驚くラナに、カザヤは不敵な笑みを浮かべた。 「今日、国王が崩御する。だからお前を部屋から出すわけにはいかない」 ※ベリーズカフェにも掲載中です。そちらではラナの設定が変わっています。(貴族→庶民)それにより、内容も少し変更しておりますのであわせてお楽しみください。

【完結】僻地の修道院に入りたいので、断罪の場にしれーっと混ざってみました。

櫻野くるみ
恋愛
王太子による独裁で、貴族が息を潜めながら生きているある日。 夜会で王太子が勝手な言いがかりだけで3人の令嬢達に断罪を始めた。 ひっそりと空気になっていたテレサだったが、ふと気付く。 あれ?これって修道院に入れるチャンスなんじゃ? 子爵令嬢のテレサは、神父をしている初恋の相手の元へ行ける絶好の機会だととっさに考え、しれーっと断罪の列に加わり叫んだ。 「わたくしが代表して修道院へ参ります!」 野次馬から急に現れたテレサに、その場の全員が思った。 この娘、誰!? 王太子による恐怖政治の中、地味に生きてきた子爵令嬢のテレサが、初恋の元伯爵令息に会いたい一心で断罪劇に飛び込むお話。 主人公は猫を被っているだけでお転婆です。 完結しました。 小説家になろう様にも投稿しています。

【完結】モブ令嬢としてひっそり生きたいのに、腹黒公爵に気に入られました

22時完結
恋愛
貴族の家に生まれたものの、特別な才能もなく、家の中でも空気のような存在だったセシリア。 華やかな社交界には興味もないし、政略結婚の道具にされるのも嫌。だからこそ、目立たず、慎ましく生きるのが一番——。 そう思っていたのに、なぜか冷酷無比と名高いディートハルト公爵に目をつけられてしまった!? 「……なぜ私なんですか?」 「君は実に興味深い。そんなふうにおとなしくしていると、余計に手を伸ばしたくなる」 ーーそんなこと言われても困ります! 目立たずモブとして生きたいのに、公爵様はなぜか私を執拗に追いかけてくる。 しかも、いつの間にか甘やかされ、独占欲丸出しで迫られる日々……!? 「君は俺のものだ。他の誰にも渡すつもりはない」 逃げても逃げても追いかけてくる腹黒公爵様から、私は無事にモブ人生を送れるのでしょうか……!?

行き遅れのお節介令嬢、氷の公爵様と結婚したら三人娘の母になりました

鳥柄ささみ
恋愛
お節介焼きで困っている人を放っておけないシアは、数多のご令嬢達から人気の令嬢だ。毎日ファンレターが届き、社交界に出れば令嬢に取り囲まれるほどである。 けれど、それに反比例するように男性からの人気はなく、二十七だというのに嫁の貰い手もないため、毎日母から小言をもらっていた。 そんなある日のこと、突然公爵家から縁談の話が。 シアは公爵家がなぜ自分に縁談など持ち掛けるのかと訝しく思いつつ話を受けると、なんと公爵の後妻として三人の娘の母代わりになれと言われる。 困惑するも、自分へ縁談を持ちかけた理由を聞いて、お節介なシアは嫁ぐこと決めたのだった。 夫になるレオナルドはイケメンなのに無表情で高圧的。三人の娘も二女のアンナを除いて長女のセレナも三女のフィオナもとても反抗的。 そんな中でもお節介パワーを発揮して、前向きに奮闘するシアの物語。 ※他投稿サイトにも掲載中

【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない

朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。

ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…

ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。 一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。 そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。 読んでいただけると嬉しいです。 2/26 番外編を投稿しました。 読んでいただけると嬉しいです。 思っていたよりずっとたくさん読んでいただいていてとても嬉しいです。 とてもとてもありがとうございます!!   

ストーカー婚約者でしたが、転生者だったので経歴を身綺麗にしておく

犬野きらり
恋愛
リディア・ガルドニ(14)、本日誕生日で転生者として気付きました。私がつい先程までやっていた行動…それは、自分の婚約者に対して重い愛ではなく、ストーカー行為。 「絶対駄目ーー」 と前世の私が気づかせてくれ、そもそも何故こんな男にこだわっていたのかと目が覚めました。 何の物語かも乙女ゲームの中の人になったのかもわかりませんが、私の黒歴史は証拠隠滅、慰謝料ガッポリ、新たな出会い新たな人生に進みます。 募集 婿入り希望者 対象外は、嫡男、後継者、王族 目指せハッピーエンド(?)!! 全23話で完結です。 この作品を気に留めて下さりありがとうございます。感謝を込めて、その後(直後)2話追加しました。25話になりました。

処理中です...