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唇が触れ合って、シャーロットは耳まで赤くなって口をはくはくさせながらユリウスを見る。
「ほら。ロッテの背が高いからキスしやすい」
実は練習の時からよくキスをされていたシャーロットだが、こんな公衆の面前でされるとは思っていなかったのだ。
周りはあからさまに二人を見たりはしていないが、さり気ない視線が刺さるのをシャーロットは感じていた。
「ひ…人前…」
ようやく声を出すと、ユリウスは微笑む。
「ロッテは俺のだと知らしめておかないとな」
なっ。そんな幸せそうな、嬉しそうな瞳で見られたら、何も言えなくなっちゃうじゃない。
それに「ロッテは俺の」だなんて、そんなアピールしなくても私モテませんから!
むしろユリウス殿下の方が、王太子ってハードルがなくなって密かにモテモテなのに。
「ん?」
ユリウスが微笑みながら首を傾げる。
「…ぅぅ」
頭の中で色々言うが、ユリウスの幸せそうな表情を見るとシャーロットはやはり何も言えなかった。
-----
ダンスを終えて、ユリウスはシャーロットの手を取って壁際へと移動する。
「そういえばバネッサさんがダンスができないから練習しなきゃって言ってました」
壁際に置かれた椅子に並んで座って葡萄ジュースを飲む。
「ああ…新学期から四年に編入するんだったか。舞踏会と卒業パーティーがあるからなあ」
「グリフ様が教えると言うと、嫌だって言うんですって。バネッサさん」
「ダンスを?」
「ダンスだけではなくて、近衛…の前にまずはスアレス殿下の護衛騎士になるためには学園の成績も良くないといけないし、もちろん騎士としての鍛錬も必要ですよね?それら全部です」
現王太子の護衛騎士で、次の王太子の護衛騎士たちの指導をする立場のグリフと云う格好の指導者の教えを嫌がるバネッサ。それにはもちろん理由がある。
「それでスアレス殿下の護衛騎士になれたとして、グリフ様のコネだとか贔屓だとか…不公正だと思われたくないんだそうです」
「グリフは贔屓などする奴ではないだろう?」
ユリウスは意外そうに言う。
「それがわかっている人ばかりではないから…」
「ああ…」
シャーロットとユリウスの脳裏にトレイシーの顔が浮かんだ。
「では俺が練習に付き合うか?」
「え?」
「舞踏会や卒業パーティーのエスコートがグリフなら、バネッサの身長だと並の男では練習台にならないだろう?俺やルーカスくらいでないと」
バネッサさんが、ユリウス殿下とダンスを…
確かに、グリフ様と踊るのを想定して練習するなら、相手は身長がないと。
ユリウス殿下となら身長一緒くらいで、バネッサさんなら運動神経良いからすぐ上達して、二人のダンスは見映えがしそう。
「……です」
「ロッテ?」
ユリウスがシャーロットの顔を覗き込む。
「…嫌です」
少し唇を尖らせて言うシャーロット。
「嫌?」
「だって…バネッサさん、背が高いから…」
ユリウス殿下に、より顔が近くなるもん。
シャーロットの呟きに、ユリウスは困ったような笑顔を浮かべた。
「ロッテ、俺は背が高ければ誰でも好きになる訳ではないぞ?」
「…本当?」
唇を尖らせたまま、チラッとユリウスを見るシャーロット。
「本当だ。確かに背が高いのがきっかけの一つにはなったが、俺はロッテだから好きになったんだ」
優しい口調のユリウスの言葉を聞き、シャーロットは急に羞恥心に襲われた。
…私、何を恥ずかしい事言って、拗ねたような態度してるんだろう。こんなのユリウス殿下に「好きだ」って言わせたいだけの我儘じゃない。
「…ごめんなさい」
赤くなって俯く。
「謝る事はない。嬉しいから」
「嬉しい?」
「俺がバネッサに惹かれるのを心配したのだろう?そして、それは嫌だと。つまり独占欲だ」
ユリウスは手袋を取ると、手の平でシャーロットの頬に触れる。
「…独占欲」
シャーロットは目を見開いてユリウスを見た。
「ロッテが俺を独占したいと思ってくれているのが嬉しい。俺もロッテを独占したい」
紫の瞳にシャーロットの姿が映る。
「どうだ?ロッテは嬉しいか?」
にっこり笑うユリウス。
「嬉しいで…」
シャーロットが言い終わらない内に、ユリウスは素早く唇を重ねた。
「…人前ですってば」
真っ赤になってユリウスを軽く睨むシャーロットに、ユリウスは口角を上げて言った。
「ロッテがかわいいのが悪い」
唇が触れ合って、シャーロットは耳まで赤くなって口をはくはくさせながらユリウスを見る。
「ほら。ロッテの背が高いからキスしやすい」
実は練習の時からよくキスをされていたシャーロットだが、こんな公衆の面前でされるとは思っていなかったのだ。
周りはあからさまに二人を見たりはしていないが、さり気ない視線が刺さるのをシャーロットは感じていた。
「ひ…人前…」
ようやく声を出すと、ユリウスは微笑む。
「ロッテは俺のだと知らしめておかないとな」
なっ。そんな幸せそうな、嬉しそうな瞳で見られたら、何も言えなくなっちゃうじゃない。
それに「ロッテは俺の」だなんて、そんなアピールしなくても私モテませんから!
むしろユリウス殿下の方が、王太子ってハードルがなくなって密かにモテモテなのに。
「ん?」
ユリウスが微笑みながら首を傾げる。
「…ぅぅ」
頭の中で色々言うが、ユリウスの幸せそうな表情を見るとシャーロットはやはり何も言えなかった。
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ダンスを終えて、ユリウスはシャーロットの手を取って壁際へと移動する。
「そういえばバネッサさんがダンスができないから練習しなきゃって言ってました」
壁際に置かれた椅子に並んで座って葡萄ジュースを飲む。
「ああ…新学期から四年に編入するんだったか。舞踏会と卒業パーティーがあるからなあ」
「グリフ様が教えると言うと、嫌だって言うんですって。バネッサさん」
「ダンスを?」
「ダンスだけではなくて、近衛…の前にまずはスアレス殿下の護衛騎士になるためには学園の成績も良くないといけないし、もちろん騎士としての鍛錬も必要ですよね?それら全部です」
現王太子の護衛騎士で、次の王太子の護衛騎士たちの指導をする立場のグリフと云う格好の指導者の教えを嫌がるバネッサ。それにはもちろん理由がある。
「それでスアレス殿下の護衛騎士になれたとして、グリフ様のコネだとか贔屓だとか…不公正だと思われたくないんだそうです」
「グリフは贔屓などする奴ではないだろう?」
ユリウスは意外そうに言う。
「それがわかっている人ばかりではないから…」
「ああ…」
シャーロットとユリウスの脳裏にトレイシーの顔が浮かんだ。
「では俺が練習に付き合うか?」
「え?」
「舞踏会や卒業パーティーのエスコートがグリフなら、バネッサの身長だと並の男では練習台にならないだろう?俺やルーカスくらいでないと」
バネッサさんが、ユリウス殿下とダンスを…
確かに、グリフ様と踊るのを想定して練習するなら、相手は身長がないと。
ユリウス殿下となら身長一緒くらいで、バネッサさんなら運動神経良いからすぐ上達して、二人のダンスは見映えがしそう。
「……です」
「ロッテ?」
ユリウスがシャーロットの顔を覗き込む。
「…嫌です」
少し唇を尖らせて言うシャーロット。
「嫌?」
「だって…バネッサさん、背が高いから…」
ユリウス殿下に、より顔が近くなるもん。
シャーロットの呟きに、ユリウスは困ったような笑顔を浮かべた。
「ロッテ、俺は背が高ければ誰でも好きになる訳ではないぞ?」
「…本当?」
唇を尖らせたまま、チラッとユリウスを見るシャーロット。
「本当だ。確かに背が高いのがきっかけの一つにはなったが、俺はロッテだから好きになったんだ」
優しい口調のユリウスの言葉を聞き、シャーロットは急に羞恥心に襲われた。
…私、何を恥ずかしい事言って、拗ねたような態度してるんだろう。こんなのユリウス殿下に「好きだ」って言わせたいだけの我儘じゃない。
「…ごめんなさい」
赤くなって俯く。
「謝る事はない。嬉しいから」
「嬉しい?」
「俺がバネッサに惹かれるのを心配したのだろう?そして、それは嫌だと。つまり独占欲だ」
ユリウスは手袋を取ると、手の平でシャーロットの頬に触れる。
「…独占欲」
シャーロットは目を見開いてユリウスを見た。
「ロッテが俺を独占したいと思ってくれているのが嬉しい。俺もロッテを独占したい」
紫の瞳にシャーロットの姿が映る。
「どうだ?ロッテは嬉しいか?」
にっこり笑うユリウス。
「嬉しいで…」
シャーロットが言い終わらない内に、ユリウスは素早く唇を重ねた。
「…人前ですってば」
真っ赤になってユリウスを軽く睨むシャーロットに、ユリウスは口角を上げて言った。
「ロッテがかわいいのが悪い」
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