悪役令嬢に転生したと気付いたら、咄嗟に婚約者の記憶を失くしたフリをしてしまった。

ねーさん

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「何するのよ!?私は王子の恋人よ!離して!!」
 身体を捩って抵抗するフローラ。警備員が両側からその腕を取り、フローラを立たせる。
「フローラ、機密情報を漏洩した罪で君を捕縛する」
 アレクシスが低い声でそう告げると、フローラは大きく眼を見開いた。
「……え?機密情報?ただの薔薇の花の情報でしょ?」
 そうフローラが呟くと、アレクシスは眉を顰める。
 …フローラ、貴女本当にアレクシスがどんな思いで青い薔薇を咲かせようとしてたのか、理解できてなかったのね。
 だから研究を売るなんて事ができるし、それをした事でアレクシスに完全に愛想を尽かされた事も理解できないんだわ。
 それでも、このままフローラをケネット男爵家に帰らせたら…それこそ義母や兄、実の父親からさえ、どんな目に遭うか……
 この捕縛はある意味フローラの保護でもあるのよ。
「連れて行け」
 アレクシスは辛そうに目を伏せる。

 警備員が講堂の出入口の方へフローラを引き立てた。
「いやあ!何で!?アレク様ぁ!放して!放してよ!」
 アレクシスは引き摺られるように連れて行かれているフローラから目を逸らした。
「アレク」
 いつの間にか近くに来ていたユージーン様がアレクシスに話し掛ける。
「王城へ遣いを出して、フローラ嬢の身柄は近衛騎士団へ引き渡すよう指示してある」
「ああ」
 頷いたアレクシスは、私の持っている青い薔薇に目を向けた。
「俺が咲かせた薔薇でプロポーズしたかったな…」
 ポツリと呟く。
「アレクシス」
 私が言い掛けた時、講堂の空気がザワリと揺れた。

 生徒たちが皆、自然に舞台の方へ注目する。
 舞台袖からゆっくりとイライアス王太子殿下と、マチルダ妃殿下が出て来て、舞台の中央で止まった。
 あんなにザワついてた空気が登場しただけで静まったわ。さっきアレクシスが跪いた時も静かになったし、やっぱり王族のオーラって凄い…
「多少騒ぎはあったが、本日のこの場は学園を巣立つ者たちへの学園生活の労いと前途を祝すもの。卒業生諸君の学園での学びを活かした今後の活躍に期待している。卒業おめでとう」
 イライアス殿下の言葉に生徒たちがワッと沸く。
 そして改めて生徒会長の送辞、卒業生代表の答辞があり、そこから卒業パーティーは滞りなく進行して行った。

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 卒業パーティーから一週間後の今日、私は王宮のアレクシスの宮の応接室を訪れている。
 何故かというとこの後イライアス王太子殿下とマチルダ妃殿下…マティ様がアレクシスの宮に来られて私たちと面会する予定だからだ。
 長ソファに並んで座るアレクシスと私。アレクシスの側にはユージーン様が立っている。
「『夢幻』のストーリーでアレクシスが青い薔薇を咲かせたのは、駆け落ちから数年後だから…もう少しだったのに」
 私がそう言うと、隣に座るアレクシスが深く頷く。
「あれからフローラの持っていた薔薇を調べて、樹国から開示された情報を精査した結果、俺の研究の路線は間違っていなかった事がわかった。近年、樹国が希少な植物や花卉の栽培に成功したとの発表を立て続けにしているのは、こうして他国の研究結果を買っているから…なんだろうね。それにしてもこの短期間で実際に開花までさせるとは、樹国の技術は凄いな」
「国を挙げて他国の研究を買う。つまり盗用だ。到底褒められた話じゃない」
 ユージーン様が悔しそうに言った。
 ユージーン様は卒業パーティーの時から私の前でもアレクシスと普段通りに接するようになった。私に対してもあまり仰々しくない態度と言葉遣いになったので、アレクシスの幼なじみ兼側近のユージーン様に認められて受け入れられたみたいで嬉しい。
「その通りだ。樹国にはもちろん強く抗議したよ」
 その抗議の結果、樹国からは情報開示されたらしいけど…どれだけ強く抗議したんだろ…?

「フローラ…今は王城の貴族の拘禁部屋なのよね?」
 フローラは、樹国に売った情報の中に機密情報が含まれていたので、情報漏洩の疑いで拘禁されている。
 と言っても、それは建前で、実際はフローラをケネット男爵家へ帰さないためだ。
「ええ。ケネット男爵家には、フローラ嬢は王子の研究を他国へ流出させた事で大逆罪に問われる可能性もあると通告してあります。これでケネット男爵はフローラ嬢を切り捨てるはず」
 ユージーン様の言葉に私とアレクシスは頷いた。
 大逆罪とは、王族に対して危害を加えたり、背信行為をする罪。場合によっては処刑など、厳しい罰を与えられる事になる。
 ケネット男爵家への累を恐れてフローラを男爵家の籍から抜いてくれれば、フローラは貴族令嬢ではなくなるけど、修道院へ入れるとか、国外追放とかのていで実は市井で自由に生きる事ができるから。







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