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22 微※
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目が覚めれば悪夢が待っているのは2日で学習した。1日目は起きた後に、2日目は起きたら既に身体が薬で火照り自分ではどうしようもなくなっていた。
今日はまだそんな火照りはない。また1日目のように段々上がっていく熱を感じなければならないのか、と目を開けて貴斗は固まる。
目の前に、何かいる。
そうだ、ご主人様に会えて嬉しい犬はこんな感じじゃなかったか。へっへっへっ、と息をはいて見下ろしてくるそれが何なのかをしばし考えて。腰に押し付けられた熱に気が付いたと同時に悲鳴を上げた。滾ったものが目に入ったからだ。
「嫌だーッ!離せ!離せーーッ!!」
何をされるのか察し、半ばパニックになって急に暴れ出した相手に驚いたのか黒鉄の毛が逆立つ。
「暴れル、と、あぶない、ゾ」
子供のようにバタつかせた足を掴もうとして、黒鉄はまたハッと全身を震わせた。
「傷、つけるな……ッテ、言われタ!」
こんなに暴れる身体を無闇に掴もうとしたら誤って爪で引っ掻いてしまうかもしれない。アワアワと自分もまたパニックに陥り、考えた彼は貴斗のシャツを掴んだ。これなら爪が引っ掛かっても大丈夫だ。
「嫌だ!イヤ……ッ!!」
「ア痛!」
必死な貴斗に蹴りあげられて怯んだ隙に、掴まえていたシャツからスポッと抜け出されてしまう。ベッドから降りて扉に向かおうとした彼を止めたのは紅月だ。
もうこの際裸のままでいいから助けを呼ぼうとした彼の思惑はそれで途絶えた。
「あ……」
ガタガタと震えるその身体を押さえ込もうとする前に、あっちの狼男よりマシ、と思ったのか紅月のシャツを掴む。
「い、や、……イヤだ。お願い、嫌です……イヤだ……ッ!!」
青ざめて必死に懇願する姿を見下ろして、めんどくさい、と思った。
めんどくさい。さっさと明け渡してあの方の物になればいいのに。
「黒鉄」
「ダッて、傷……怒られル」
しょぼーん、と自分の爪を見るワーウルフに溜め息をつく。イヤだ、イヤだ、と泣く貴斗を引き摺って、たった今抜け出したベッドへと放り投げた。スプリングで跳ね、その反動でまた逃げようとする身体をうつ伏せに押さえ込む。
「押さえてろ。骨は折るなよ」
「……こう、カ?」
腰を高く上げさせて、その下に自分の片膝を差し込む。そして左手は傷つけないように気を付けて、背中に回した両腕を、右手は捩ろうとする肩を押さえた。
「裂けたら困るからな」
ドプ、とローションを注ぎながら言われた言葉に貴斗はまた絶叫した。
「イヤだァァァァーーーーッ!!」
「暴れル、とダメだ。オレ、骨折ると……怒られル」
知るか、離せ!と言わんばかりに懸命に身を捩らせる。2日間何度も貫かれたとは言え、まだ固いそこを時間をかけて少しずつ解していく。恐怖の為かいつも以上に時間のかかる準備に薬を使おうかとも思ったが。
(確かにこの怯えぶりなら、一度で終わるか)
使わない方がより確実だ。ただ魔を取り込めばしばらく浄化の為の精気は蓄えられない。だからこそ太陽も最後の手段として残していたのだろう。
太陽の身体の為、と丹念に解し終わった頃には暴れ疲れた貴斗は涙にまみれたままグッタリしていた。
「黒鉄」
待て、と言われ続けたワーウルフはフライング気味に舐め回していた背中から顔を上げる。待たされすぎて涎を垂らさんばかりだ。
「イイ?もう、イイのカ?」
尻尾が最速で振られているのに呆れながらも、黒鉄と位置を交代する。最後の抵抗なのか弱々しく身を捩るその身体を仰向けに、上半身を抱き込んだ。
「あ、あ、……やめて、お願い、イヤ……」
太腿を持ち上げた狼男が良く見える体勢にされて、身体が病的なほど震える。
「ヤダ、イヤだ……」
拘束する紅月の腕を退かせようとしたその瞬間。
「ひ、ギ……ッ、あぁぁぁッ!!イヤーーッ!!痛い!痛い、抜いてぇ!ヤダーーーッ!!うぁぁぁぁッ!!」
絶叫と共に爪をたてられた。
メリメリと音がしそうな激痛に意識を失いかけてはズグリとまた少し入り込むそれに引き戻される。
「ぃ、ぐ、ぁぁぁッ!!」
助けて、と脳裏に甦る彼の名を呼ぶ。
「ソラぁーーーーッ!!」
「はぁい」
パリン、なんて可愛い音じゃない硝子の割れる音が響いて、貴斗を拘束する紅月が飛び退く。その身体を蹂躙しかっていた黒鉄は蹴り飛ばされて吹っ飛んだ。
足元に転がってきた巨体をつま先で受け止めて長身の男が叫ぶ。
「てっめ、こっちに飛ばすな!」
「てめぇこそ窓割るとか非常識だろ!」
場違いな怒鳴り合いが響いて、呆然としている貴斗をシーツでくるんだのは今しがた脳裏に描いた彼。
「喧嘩してる場合じゃないだろ。行くぞ」
鋭い華生の声で我に返ったのは紅月も同じ。
「黒鉄!」
窓に駆け寄る彼らの前にワーウルフが立ち塞がる。
「逃がす、ト、怒られル……ッ!!」
「おすわりッ!!」
本能で華生との実力差を感じた黒鉄がビシッ、と正座している間に横をすり抜けて、窓枠に足をかけた。
「しっかり掴まってて」
呆然としたまま、それでもその声だけは耳に入ってギュ、としがみつく腕に力を込める。途端に襲ってきた銀の弾丸を並外れた動体視力で撃ち落としたのは諒真だ。
「こないだは手荒い挨拶ありがとよ。お返ししとくぜ!」
右腕を撃ち抜かれ銃を取り落とした紅月に満足そうに笑った姿が窓の向こうに消えた。
今日はまだそんな火照りはない。また1日目のように段々上がっていく熱を感じなければならないのか、と目を開けて貴斗は固まる。
目の前に、何かいる。
そうだ、ご主人様に会えて嬉しい犬はこんな感じじゃなかったか。へっへっへっ、と息をはいて見下ろしてくるそれが何なのかをしばし考えて。腰に押し付けられた熱に気が付いたと同時に悲鳴を上げた。滾ったものが目に入ったからだ。
「嫌だーッ!離せ!離せーーッ!!」
何をされるのか察し、半ばパニックになって急に暴れ出した相手に驚いたのか黒鉄の毛が逆立つ。
「暴れル、と、あぶない、ゾ」
子供のようにバタつかせた足を掴もうとして、黒鉄はまたハッと全身を震わせた。
「傷、つけるな……ッテ、言われタ!」
こんなに暴れる身体を無闇に掴もうとしたら誤って爪で引っ掻いてしまうかもしれない。アワアワと自分もまたパニックに陥り、考えた彼は貴斗のシャツを掴んだ。これなら爪が引っ掛かっても大丈夫だ。
「嫌だ!イヤ……ッ!!」
「ア痛!」
必死な貴斗に蹴りあげられて怯んだ隙に、掴まえていたシャツからスポッと抜け出されてしまう。ベッドから降りて扉に向かおうとした彼を止めたのは紅月だ。
もうこの際裸のままでいいから助けを呼ぼうとした彼の思惑はそれで途絶えた。
「あ……」
ガタガタと震えるその身体を押さえ込もうとする前に、あっちの狼男よりマシ、と思ったのか紅月のシャツを掴む。
「い、や、……イヤだ。お願い、嫌です……イヤだ……ッ!!」
青ざめて必死に懇願する姿を見下ろして、めんどくさい、と思った。
めんどくさい。さっさと明け渡してあの方の物になればいいのに。
「黒鉄」
「ダッて、傷……怒られル」
しょぼーん、と自分の爪を見るワーウルフに溜め息をつく。イヤだ、イヤだ、と泣く貴斗を引き摺って、たった今抜け出したベッドへと放り投げた。スプリングで跳ね、その反動でまた逃げようとする身体をうつ伏せに押さえ込む。
「押さえてろ。骨は折るなよ」
「……こう、カ?」
腰を高く上げさせて、その下に自分の片膝を差し込む。そして左手は傷つけないように気を付けて、背中に回した両腕を、右手は捩ろうとする肩を押さえた。
「裂けたら困るからな」
ドプ、とローションを注ぎながら言われた言葉に貴斗はまた絶叫した。
「イヤだァァァァーーーーッ!!」
「暴れル、とダメだ。オレ、骨折ると……怒られル」
知るか、離せ!と言わんばかりに懸命に身を捩らせる。2日間何度も貫かれたとは言え、まだ固いそこを時間をかけて少しずつ解していく。恐怖の為かいつも以上に時間のかかる準備に薬を使おうかとも思ったが。
(確かにこの怯えぶりなら、一度で終わるか)
使わない方がより確実だ。ただ魔を取り込めばしばらく浄化の為の精気は蓄えられない。だからこそ太陽も最後の手段として残していたのだろう。
太陽の身体の為、と丹念に解し終わった頃には暴れ疲れた貴斗は涙にまみれたままグッタリしていた。
「黒鉄」
待て、と言われ続けたワーウルフはフライング気味に舐め回していた背中から顔を上げる。待たされすぎて涎を垂らさんばかりだ。
「イイ?もう、イイのカ?」
尻尾が最速で振られているのに呆れながらも、黒鉄と位置を交代する。最後の抵抗なのか弱々しく身を捩るその身体を仰向けに、上半身を抱き込んだ。
「あ、あ、……やめて、お願い、イヤ……」
太腿を持ち上げた狼男が良く見える体勢にされて、身体が病的なほど震える。
「ヤダ、イヤだ……」
拘束する紅月の腕を退かせようとしたその瞬間。
「ひ、ギ……ッ、あぁぁぁッ!!イヤーーッ!!痛い!痛い、抜いてぇ!ヤダーーーッ!!うぁぁぁぁッ!!」
絶叫と共に爪をたてられた。
メリメリと音がしそうな激痛に意識を失いかけてはズグリとまた少し入り込むそれに引き戻される。
「ぃ、ぐ、ぁぁぁッ!!」
助けて、と脳裏に甦る彼の名を呼ぶ。
「ソラぁーーーーッ!!」
「はぁい」
パリン、なんて可愛い音じゃない硝子の割れる音が響いて、貴斗を拘束する紅月が飛び退く。その身体を蹂躙しかっていた黒鉄は蹴り飛ばされて吹っ飛んだ。
足元に転がってきた巨体をつま先で受け止めて長身の男が叫ぶ。
「てっめ、こっちに飛ばすな!」
「てめぇこそ窓割るとか非常識だろ!」
場違いな怒鳴り合いが響いて、呆然としている貴斗をシーツでくるんだのは今しがた脳裏に描いた彼。
「喧嘩してる場合じゃないだろ。行くぞ」
鋭い華生の声で我に返ったのは紅月も同じ。
「黒鉄!」
窓に駆け寄る彼らの前にワーウルフが立ち塞がる。
「逃がす、ト、怒られル……ッ!!」
「おすわりッ!!」
本能で華生との実力差を感じた黒鉄がビシッ、と正座している間に横をすり抜けて、窓枠に足をかけた。
「しっかり掴まってて」
呆然としたまま、それでもその声だけは耳に入ってギュ、としがみつく腕に力を込める。途端に襲ってきた銀の弾丸を並外れた動体視力で撃ち落としたのは諒真だ。
「こないだは手荒い挨拶ありがとよ。お返ししとくぜ!」
右腕を撃ち抜かれ銃を取り落とした紅月に満足そうに笑った姿が窓の向こうに消えた。
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