黒焔公爵と春の姫〜役立たず聖女の伯爵令嬢が最恐将軍に嫁いだら〜

玉響

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18.ティータイム

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私はアデルバート様と向かい合い、エブリンとドミニクが用意してくれたお茶を頂いている。
その間もしきりにアデルバート様が私に、寒くないかとか、体調は大丈夫かなどと尋ねてくる。

「私は普通の令嬢よりは丈夫な方だと思いますわ。それに、多少の寒さなら加護魔法で緩和できますもの」

私がそう答えると、アデルバート様は感心したように頷いた。

「加護魔法とは便利なものなのだな。まさか、シャトレーヌが加護魔法の使い手とは思わなかったが……」

やはり、加護魔法の使い手など役に立たないと思われていたのね……。

「私ではご期待に添えず申し訳ありません……」

私は思わず謝罪の言葉を口にする。

「何を謝る?」

ぴくり、とアデルバート様の整った眉が吊り上がった。

「己に非がないのに、やたらに謝るものではない。弱い心は、隙を生む」
「隙……」

アデルバート様の言葉は厳しい。ずっと、そういう環境で生きてきたから。
常に、迫りくる危険から国を守り領民を守ることに人生を捧げてきたのだから。

「……そうですね。お城の中でさえも安全ではないと聞いて、私は驚きました。これまで、聖女としてお務めを果たしてきたつもりでしたが、ここに来て自分の覚悟が甘かったと実感いたします。……そういうことが、アデルバート様の仰る隙、なのでしょう」

私は俯いた。きっと、アデルバート様は私に呆れてらっしゃるだろう。

「……シャトレーヌ、私はお前を見くびっていたようだな」
「え?」

私は意外な言葉をかけられて、顔を上げた。

「私が考えていたよりもずっと、芯が強く、賢い女性だな」
「どういう、事ですか?」
「私の知る女性は、欠点を指摘するとすぐに怒り出すし、そもそも素直に聞き入れようとしない。だがお前はどうだ?私の言葉を、すんなりと受け入れ、冷静に分析してそれを改善しようとしている。私はそのような女性は見たことがなかった」

アデルバート様は感心したように、私を見ている。
別に、私の言動は至極普通だと思いますが……。アデルバート様の女性の価値観がよくわかりませんわね。

「勉強させてもらったぞ。では私はそろそろ鍛錬に戻る。先程教えた温室にも足を運んでみるといい」
「分かりましたわ。ありがとうございます」

結局、アデルバート様は何がしたかったのか分からないうちに、ティータイムは終わりを告げた。アデルバート様は何故かご満悦のようなので、ご一緒して良かったのかもしれませんけれど。
私は立ち上がってアデルバート様を見送ると、スカートの裾を整える。

「温室ね……折角だから行ってみようかしら」
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