黒焔公爵と春の姫〜役立たず聖女の伯爵令嬢が最恐将軍に嫁いだら〜

玉響

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57.消えたスネーストルム

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結局、小一時間捜索したけれど、見つかった生存者は私が助けた青年だけだった。
あの酷い吹雪のせいもあり、凍死してしまった人もいたようだ。
あの青年は、足を潰した氷塊と、他の氷塊の隙間にいたため、怪我は酷かったけれど、凍死しないで済んだらしい。冷たい氷が寒さから守ってくれるなんて、何だか不思議だわ。
本当なら亡骸を埋葬したいところだったけれど、また雪が降り始めてきたため、私達は野営場所に戻ることになった。

「しかし、スネーストルムの奴等は一体、何処に潜んでいるのだ……」

焚火で暖を取りながら、アデルバート様が呟いた。

「リーテの村が襲われたのは、三日前。だが、生存者がいたという事は、少なくとも今朝まではあの村に滞在していた可能性が高い」

確かに、あの青年の怪我の出血量からすれば、半日は持たないと思う。逆算すれば、アデルバート様の読み通りと言うことだ。

「あの吹雪の中、そう遠くには行けまい。そうすると、この近くに潜んでいると考えるのが妥当だろう」

……つまり、この野営地もいつ襲われても不思議ではないということだ。
でも、スネーストルムは本当に何処へ行ったのかしら……。

「奴等は、雪と共にやってくる。特に……ラーシュが来ているときは」

アデルバート様が、またラーシュの名を口にした。
そのたびに、苦い顔をするのは余程憎いということなのかしら。

「ラーシュとは、どういう人物なのですか?」

私は、そう聞かずにはいられなかった。ただの好奇心ではなく、敵を知るべきだという使命感と言ったほうが正しいかもしれない、そんな気持ちだった。

「ラーシュは、私が公爵位を父上から譲り受ける直前にスネーストルムの首領となった男だ。非常に腕が立ち、殊に氷魔法に長けている。……その腕前は、吹雪でさえも操る事が出来ると噂されるほどだ」

アデルバート様が黒焔公爵なら、そのラーシュという人は氷将軍……いやむしろ冬将軍と言ったところかしら。

「何度か剣を交えたことがあるが、一度も勝負がついたことはない。言うなれば宿敵だな」

アデルバート様でも勝てない相手……想像もつかないそのラーシュという人物。
会ってみたいとも思うけれど、やはりあの村の惨状を見たあとだと、恐ろしいと感じる。
でも、そんな甘えた事を言っている場合じゃないわ。
私達は、その人が率いるスネーストルムを退けるために来たのだもの。
私は、湧き上がった恐れの感情を拭い去るかのように、きゅっと唇を噛んだ。
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