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63.黒焔公爵家の伝説(1)
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「名前だけは、耳にしたことがあります。何でもこの土地に伝わる古い御伽噺だとか……」
「御伽噺か。そう捉える者もいるだろうな」
美しい顔を、少しだけ皮肉げに歪めてアデルバート様は呟いた。
「我がグロリオサ公爵家の成り立ちは、知っているな?」
「ええ。元々は、王家の分家なのですよね」
「そうだな……。少し、その御伽噺とやらを話してやろう」
アデルバート様は簡易ベッドに腰を下ろした。隣に座るよう促され、私も腰を下ろす。
「でも……スネーストルムは、良いのですか?」
一刻も早く追い詰めようとしていたはずなのに、こんな所で私と話し込んで大事なのかという疑問を口にした。
「あぁ。それも含めての話だ。取り急ぎ、今は奴らを追う必要はなかろう」
アデルバート様がそう言うのだから、何かしら意味があるのだろう。私は、アデルバート様の話に耳を傾けた。
「……何百年も昔。この地は、スノーデンと言う名の、別の国だった。その国を治めていたのは、氷の力を操る一族。氷でこの土地を閉ざし、あの氷河山脈に眠る、炎の竜を封印していたのだ」
スノーデンなんていう国は、初耳だった。国史にも、世界史の書物にも出てきた記憶はない。
「ところがある王の御代に、氷河山脈の山々が火を噴いた。長い年月にわたり炎の竜を封印していたことで、火の魔力が蓄積されたのだ。……全てを焼き尽くす炎が空まで吹き上がり、氷と炎がぶつかる事で発生した火砕流がこの地を全て呑み込んだ。着の身着のまま、スノーデンから逃げ延びた者たちは、我がエルヴァリグル王国に助けを求めた。炎の竜を宥める為に、力を貸してほしいと……」
御伽噺だなんて言っていたけれど、全然そんな雰囲気の話ではない。私は、静かに息を呑んだ。
「スノーデンとエルヴァリグルは隣国でありながら一切国交がなかった。そんな国からの要請に、誰もが見向きもしない中、唯一名乗りを挙げたのは、第六王子・アルノルト・エルヴァリグルだった。アルノルトは、強大な魔力を持つ王子でありながら、生母の身分が低く、何より呪われた死の色とされていた黒髪だった為に王家でも疎まれた存在だった。アルノルトは、スノーデンの者たちと共にこの地を訪れ、そして惨劇の元凶となった炎の竜を倒し、その魂を己の身に封印したのだ」
「竜の、魂を……?」
竜は、神の化身。勿論実物を見たことはないけれど、神々の領域とされる霊峰や聖域には、必ず存在している。
それを生身の人間の中に封印するだなんて、いくら魔力が強くても、正気の沙汰とは思えなかった。
「御伽噺か。そう捉える者もいるだろうな」
美しい顔を、少しだけ皮肉げに歪めてアデルバート様は呟いた。
「我がグロリオサ公爵家の成り立ちは、知っているな?」
「ええ。元々は、王家の分家なのですよね」
「そうだな……。少し、その御伽噺とやらを話してやろう」
アデルバート様は簡易ベッドに腰を下ろした。隣に座るよう促され、私も腰を下ろす。
「でも……スネーストルムは、良いのですか?」
一刻も早く追い詰めようとしていたはずなのに、こんな所で私と話し込んで大事なのかという疑問を口にした。
「あぁ。それも含めての話だ。取り急ぎ、今は奴らを追う必要はなかろう」
アデルバート様がそう言うのだから、何かしら意味があるのだろう。私は、アデルバート様の話に耳を傾けた。
「……何百年も昔。この地は、スノーデンと言う名の、別の国だった。その国を治めていたのは、氷の力を操る一族。氷でこの土地を閉ざし、あの氷河山脈に眠る、炎の竜を封印していたのだ」
スノーデンなんていう国は、初耳だった。国史にも、世界史の書物にも出てきた記憶はない。
「ところがある王の御代に、氷河山脈の山々が火を噴いた。長い年月にわたり炎の竜を封印していたことで、火の魔力が蓄積されたのだ。……全てを焼き尽くす炎が空まで吹き上がり、氷と炎がぶつかる事で発生した火砕流がこの地を全て呑み込んだ。着の身着のまま、スノーデンから逃げ延びた者たちは、我がエルヴァリグル王国に助けを求めた。炎の竜を宥める為に、力を貸してほしいと……」
御伽噺だなんて言っていたけれど、全然そんな雰囲気の話ではない。私は、静かに息を呑んだ。
「スノーデンとエルヴァリグルは隣国でありながら一切国交がなかった。そんな国からの要請に、誰もが見向きもしない中、唯一名乗りを挙げたのは、第六王子・アルノルト・エルヴァリグルだった。アルノルトは、強大な魔力を持つ王子でありながら、生母の身分が低く、何より呪われた死の色とされていた黒髪だった為に王家でも疎まれた存在だった。アルノルトは、スノーデンの者たちと共にこの地を訪れ、そして惨劇の元凶となった炎の竜を倒し、その魂を己の身に封印したのだ」
「竜の、魂を……?」
竜は、神の化身。勿論実物を見たことはないけれど、神々の領域とされる霊峰や聖域には、必ず存在している。
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