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95.執着心(アデルバート視点)
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翌日、先触れもなしに従兄妹のマリアンヌが現れて、いつもの癇癪を起こした上にシャトレーヌを傷付けたと知ったときには、マリアンヌを殺してしまいたい衝動に駆られた。勿論流石にそこまでの事はしなかったが、今後一切、領地に足を踏み入れさせない事を言い渡し、追い払った。
大切なシャトレーヌを傷付けたのだから、生温い処分だったかもしれないが、殺したらシャトレーヌは心を痛めるだろう。
とにかく、大事にならなくて良かった………。
私は心の底から安堵したのだった。
それから毎晩、私は彼女の体を貪った。
心は寄り添うことが出来ずとも、体だけは深く繋がる事が出来る。
私の、シャトレーヌへの執着は日に日に増していった。
勿論、私に組み敷かれながら彼女が何を思っているのか、子を成した後どうするのかと不安になる事はあった。
そう思えば思うほど、彼女への思いは膨らむのだった。
久しぶりに魔獣の群れが出たという知らせは、ある意味私には朗報だったのかもしれない。
シャトレーヌと距離を置けば、少しは冷静になれるかも知れないと考えたのだ。
私はすぐに出発することにした。
「急ぎ、討伐に行かなければならない」
「そう、ですか………」
討伐に行く事を告げると、シャトレーヌは何も言わずに目を潤ませた。
「留守を、頼む」
「畏まりました。………そうだわ。気休めにしかならないかもしれませんが、加護の魔法を」
シャトレーヌは思い出したようにそう言うと、私の胸に右手を当てる。
「神のご加護を」
シャトレーヌの手から、優しい魔力が流れ込んできて、私の全身を包むのが分かった。
「加護魔法とは、このようなものなのだな。強化魔法や、結界魔法とは違う、温かな魔法なのだな。まるで厳しい冬を溶かす、温かな春の日差しのような………」
私の知るどんな魔法よりも穏やかで美しい、そんな魔法だった。
「案ずるな。必ず、戻る」
私は、シャトレーヌを真っ直ぐ見つめた。
「はい。お待ちしております。………ご武運を、お祈りしております」
そう言われた途端に、私は堪らずシャトレーヌを抱きしめた。
すると、甲冑に覆われた私の背に、シャトレーヌの手が回った。
不思議と胸の中が、幸福感で満たされていく。
………ああ、やはりシャトレーヌは私にとっての『春の姫』………最愛の人なのだと改めて思い知ったのだった。
大切なシャトレーヌを傷付けたのだから、生温い処分だったかもしれないが、殺したらシャトレーヌは心を痛めるだろう。
とにかく、大事にならなくて良かった………。
私は心の底から安堵したのだった。
それから毎晩、私は彼女の体を貪った。
心は寄り添うことが出来ずとも、体だけは深く繋がる事が出来る。
私の、シャトレーヌへの執着は日に日に増していった。
勿論、私に組み敷かれながら彼女が何を思っているのか、子を成した後どうするのかと不安になる事はあった。
そう思えば思うほど、彼女への思いは膨らむのだった。
久しぶりに魔獣の群れが出たという知らせは、ある意味私には朗報だったのかもしれない。
シャトレーヌと距離を置けば、少しは冷静になれるかも知れないと考えたのだ。
私はすぐに出発することにした。
「急ぎ、討伐に行かなければならない」
「そう、ですか………」
討伐に行く事を告げると、シャトレーヌは何も言わずに目を潤ませた。
「留守を、頼む」
「畏まりました。………そうだわ。気休めにしかならないかもしれませんが、加護の魔法を」
シャトレーヌは思い出したようにそう言うと、私の胸に右手を当てる。
「神のご加護を」
シャトレーヌの手から、優しい魔力が流れ込んできて、私の全身を包むのが分かった。
「加護魔法とは、このようなものなのだな。強化魔法や、結界魔法とは違う、温かな魔法なのだな。まるで厳しい冬を溶かす、温かな春の日差しのような………」
私の知るどんな魔法よりも穏やかで美しい、そんな魔法だった。
「案ずるな。必ず、戻る」
私は、シャトレーヌを真っ直ぐ見つめた。
「はい。お待ちしております。………ご武運を、お祈りしております」
そう言われた途端に、私は堪らずシャトレーヌを抱きしめた。
すると、甲冑に覆われた私の背に、シャトレーヌの手が回った。
不思議と胸の中が、幸福感で満たされていく。
………ああ、やはりシャトレーヌは私にとっての『春の姫』………最愛の人なのだと改めて思い知ったのだった。
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