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148.神と人と
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『さて、愛しい妻にも会えた。そろそろ我らはあるべき場所に戻るとするか。……此度は些か長く地上に留まりすぎたからな』
火炎神は春の女神を見る。
そういえば、火炎神は氷河山脈で『とある者』を待っていたと言った。それは、他でもない春の女神のことだったのね………。
『待たせていたのは悪いことをしたと思いますが、そう言いながらも、あなたも人の世に関わるのを、楽しんでいたのでしょう?』
春の女神の含み笑いに、火炎神は何も言わない。
その代わりに思い出したかのようにアデルバート様の方を見た。
『………アデルバート。お主の一族には、世話になった。その礼と言ってはなんだが、お主とお主の子孫には、特別に我の加護をつけてやろう。……我はお主の魂から出ていくが、これから先も魔獣や侵略者と戦うことはあるだろう。我の加護があれば、今までどおり強力な火炎魔法を使いこなす事ができる。……だが、今度は単なる加護に過ぎぬからな。今までのように我の力の影響は受けることはなくなる。もう、お主は我の力に怯えずに済むぞ』
くっくっ、と喉の奥で笑いながら火炎神がアデルバート様をからかっている。
『………では、私からはこの土地に、豊かな実りと貴方達とその子孫の繁栄を』
春の女神がそっと手を翳すと、春の匂いを含んだ風が私達の間を吹き抜けていった。
『呪いがなくても、この土地は寒さの厳しいところです。でも、冬が長く厳しいからこそ、春を待ち焦がれる気持ちは膨らみ、春の訪れを喜ぶ気持ちは大きくなるのですよ』
春の女神はそういって、微笑んだ。
「………そうですね」
私はその言葉に頷いた。
生命を育む春を、待ち焦がれるからこそ、厳しい冬を乗り越えられる。
それは、生命の循環と同じなのかもしれない。
『では、そろそろ行くか』
『そうですね。……私達は、いつも貴方達を見守っていますよ』
火炎神と春の女神は、揃って微笑みを湛えている。
元々半分は透けていた体が、空気に溶けるように薄くなっていく。
アデルバート様も、私も、何も言わなかった。
神と人は、存在する世界が違う。おそらく彼らと再び見える事はないだろう。
それでも魔法を通して、いつも繋がっていると知っていたから。
二人の姿が完全に消えるまで、私達は感謝の祈りを捧げながらその場に立っていたのだった。
火炎神は春の女神を見る。
そういえば、火炎神は氷河山脈で『とある者』を待っていたと言った。それは、他でもない春の女神のことだったのね………。
『待たせていたのは悪いことをしたと思いますが、そう言いながらも、あなたも人の世に関わるのを、楽しんでいたのでしょう?』
春の女神の含み笑いに、火炎神は何も言わない。
その代わりに思い出したかのようにアデルバート様の方を見た。
『………アデルバート。お主の一族には、世話になった。その礼と言ってはなんだが、お主とお主の子孫には、特別に我の加護をつけてやろう。……我はお主の魂から出ていくが、これから先も魔獣や侵略者と戦うことはあるだろう。我の加護があれば、今までどおり強力な火炎魔法を使いこなす事ができる。……だが、今度は単なる加護に過ぎぬからな。今までのように我の力の影響は受けることはなくなる。もう、お主は我の力に怯えずに済むぞ』
くっくっ、と喉の奥で笑いながら火炎神がアデルバート様をからかっている。
『………では、私からはこの土地に、豊かな実りと貴方達とその子孫の繁栄を』
春の女神がそっと手を翳すと、春の匂いを含んだ風が私達の間を吹き抜けていった。
『呪いがなくても、この土地は寒さの厳しいところです。でも、冬が長く厳しいからこそ、春を待ち焦がれる気持ちは膨らみ、春の訪れを喜ぶ気持ちは大きくなるのですよ』
春の女神はそういって、微笑んだ。
「………そうですね」
私はその言葉に頷いた。
生命を育む春を、待ち焦がれるからこそ、厳しい冬を乗り越えられる。
それは、生命の循環と同じなのかもしれない。
『では、そろそろ行くか』
『そうですね。……私達は、いつも貴方達を見守っていますよ』
火炎神と春の女神は、揃って微笑みを湛えている。
元々半分は透けていた体が、空気に溶けるように薄くなっていく。
アデルバート様も、私も、何も言わなかった。
神と人は、存在する世界が違う。おそらく彼らと再び見える事はないだろう。
それでも魔法を通して、いつも繋がっていると知っていたから。
二人の姿が完全に消えるまで、私達は感謝の祈りを捧げながらその場に立っていたのだった。
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