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番外編6 護衛騎士の恋心(3 ドミニク視点)
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「脇をもっと締めろ!攻撃を受けた時に剣が飛ばされるぞ!」
黒焔公爵様の怒声が響き渡る。
ああ、やっぱり格好いいなあ………。
俺は任務を忘れて、ついうっかり黒焔公爵様に見惚れてしまった。
普通に鍛錬している最中に見惚れたら、完全に命取りだから、こんな時しか出来ないんだけどな。
「皆さん熱心に鍛錬なさっているのですね」
奥方様が感心していると、こちらに気がついた黒焔公爵様が足早にやって来た。
鍛錬に没頭しすぎて食事すらも忘れるような鍛錬を中断するだなんて、一体どういうことだろう?
奥方様に話し掛ける黒焔公爵様を観察してみる。
普段は無口なお方なのに、やけに饒舌だ。
そもそも黒焔公爵様が、いくら奥方様とは言え、殆ど初対面に近い人間に対してこんなにも優しくしているところなんて見たことがない。
俺なんか騎士団に入りたての頃、まるで存在していないかのように扱われていたけどな………。初めて話しかけられたのは入団から一年半が過ぎた頃だったっけ………。
そんなことを考えていたら、奥方様がこの場を切り上げようとしだした。
奥方様は自分が鍛錬の邪魔になったと考えたらしい。………本当に、控えめな方だな。
「……待て」
「はい?」
「そろそろ休憩の時間だ。もしよければ一緒に茶でも、と思ったのだ」
「休憩?」
俺は思わず声を上げてしまう。
え………聞き間違いか?鍛錬の鬼と言われるあの黒焔公爵様が休憩だって?
そんな俺に、黒焔公爵様は何も言うなと言わんばかりの殺気を含んだ視線を投げてきた。
「皆、少し休憩を取れ!」
………鍛錬中の騎士達も、皆一様に固まっている。そりゃそうだろう。
今までそんな事は一度もなかったどころか、厠に行くのにも恐る恐る許可を得ているのに、休憩だなんて………。
啞然とする俺達をよそに、黒焔公爵様はエブリンさんに声を掛けた。
「そちらに休憩室がある。シャトレーヌの侍女……エブリンと言ったか。すまんが茶を用意してくれるか?」
「は、はい!只今!」
エブリンさんはびくりと肩を震わせて、慌てた様子で駆け出した。
「あ、エブリンさん!そちらではありませんよ!俺が案内しますから付いてきてください!」
給湯室とは真逆の方向へと走り出すエブリンさんを、俺は慌てて追いかける。
「ドミニク様は、お嬢様の護衛騎士様では………?」
エブリンさんが戸惑ったように俺を見つめてきた。
まるで雪兎のようなつぶらな瞳に俺は、心を射抜かれたような衝撃を覚える。
「い、今は黒焔公爵様がご一緒ですので、離れても問題ありません!むしろ奥方様の側にいると邪魔になりますから!」
無駄に大きな声が出てしまい、平常心が保てない。
「そ、そうですか………?」
エブリンさんが少し驚いたように目を見開き、それから柔らかな春の陽射しみたいな、温かい微笑みを浮かべてくれた。
その瞬間に、全身の血が逆流するような衝撃が俺を襲う。
雷に打たれたような、心の中に光が差し込んできたような、何とも言い表せないようなその感覚。
でも俺はこの時、唐突にそれが恋なのだと、そう直感した。
黒焔公爵様の怒声が響き渡る。
ああ、やっぱり格好いいなあ………。
俺は任務を忘れて、ついうっかり黒焔公爵様に見惚れてしまった。
普通に鍛錬している最中に見惚れたら、完全に命取りだから、こんな時しか出来ないんだけどな。
「皆さん熱心に鍛錬なさっているのですね」
奥方様が感心していると、こちらに気がついた黒焔公爵様が足早にやって来た。
鍛錬に没頭しすぎて食事すらも忘れるような鍛錬を中断するだなんて、一体どういうことだろう?
奥方様に話し掛ける黒焔公爵様を観察してみる。
普段は無口なお方なのに、やけに饒舌だ。
そもそも黒焔公爵様が、いくら奥方様とは言え、殆ど初対面に近い人間に対してこんなにも優しくしているところなんて見たことがない。
俺なんか騎士団に入りたての頃、まるで存在していないかのように扱われていたけどな………。初めて話しかけられたのは入団から一年半が過ぎた頃だったっけ………。
そんなことを考えていたら、奥方様がこの場を切り上げようとしだした。
奥方様は自分が鍛錬の邪魔になったと考えたらしい。………本当に、控えめな方だな。
「……待て」
「はい?」
「そろそろ休憩の時間だ。もしよければ一緒に茶でも、と思ったのだ」
「休憩?」
俺は思わず声を上げてしまう。
え………聞き間違いか?鍛錬の鬼と言われるあの黒焔公爵様が休憩だって?
そんな俺に、黒焔公爵様は何も言うなと言わんばかりの殺気を含んだ視線を投げてきた。
「皆、少し休憩を取れ!」
………鍛錬中の騎士達も、皆一様に固まっている。そりゃそうだろう。
今までそんな事は一度もなかったどころか、厠に行くのにも恐る恐る許可を得ているのに、休憩だなんて………。
啞然とする俺達をよそに、黒焔公爵様はエブリンさんに声を掛けた。
「そちらに休憩室がある。シャトレーヌの侍女……エブリンと言ったか。すまんが茶を用意してくれるか?」
「は、はい!只今!」
エブリンさんはびくりと肩を震わせて、慌てた様子で駆け出した。
「あ、エブリンさん!そちらではありませんよ!俺が案内しますから付いてきてください!」
給湯室とは真逆の方向へと走り出すエブリンさんを、俺は慌てて追いかける。
「ドミニク様は、お嬢様の護衛騎士様では………?」
エブリンさんが戸惑ったように俺を見つめてきた。
まるで雪兎のようなつぶらな瞳に俺は、心を射抜かれたような衝撃を覚える。
「い、今は黒焔公爵様がご一緒ですので、離れても問題ありません!むしろ奥方様の側にいると邪魔になりますから!」
無駄に大きな声が出てしまい、平常心が保てない。
「そ、そうですか………?」
エブリンさんが少し驚いたように目を見開き、それから柔らかな春の陽射しみたいな、温かい微笑みを浮かべてくれた。
その瞬間に、全身の血が逆流するような衝撃が俺を襲う。
雷に打たれたような、心の中に光が差し込んできたような、何とも言い表せないようなその感覚。
でも俺はこの時、唐突にそれが恋なのだと、そう直感した。
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