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本編

第六十一話

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「エリーゼ嬢って、真っ直ぐで、芯がしっかりしていて、凛としていて物凄くキレイだし、まるで氷の華みたいだね」

テオドール様がまたにこりと笑った。

「私は母国では、『冷徹姫』と呼ばれておりましたが、そのように言われるのは初めてですわ」
「冷徹姫か。なるほどね。確かにさっきの、ロゼリア嬢への物言いは見事だったよ。ロゼリア嬢のキャンキャン声が癪に障るからさっさと追い出そうかと思ってたら面白い展開になるから、思わず見物しちゃった」

………見世物ではないのですけれど。

「ジェイドが連れて帰った令嬢だって言うからどんな子かと思ったけど、納得したよ。これからは僕とも仲良くしてね?君のこと、気に入っちゃった」

まるで、犬か猫の扱いですわね。兄弟揃って、仲が良いですこと。

「そうだ。君の事、エリーゼって呼んでもいいよね?僕のこともテオって呼んでよ」
「そんな、第一王子殿下………」

途中で殿下の指が私の唇に押し当てられ、遮られる。

「だーめ。テオって呼んでって言ったでしょ?呼べるよね?」
「畏れ多くてお呼び出来ません」
「ジェイドの事はジェイド様って呼んでるんだよね?ジェイドは良くて何で僕はだめなのかな?おかしくない?」
「………分かりました、テオ様」
「はい、良くできましたー」

何というか、独特な雰囲気の方ですわね。ある意味ジェイド様よりも面倒くさいかもしれないわ。

「エリーゼはさ、良くここに来ているの?」
「ええ。私は属国とはいえ、他国の出身ですのでまだ不勉強なところが多くて………」
「勉強熱心だねえ。そんなのジェイドに任せとけば大丈夫だよ」
「そういう訳には参りませんわ。ジェイド様に負担を掛けるだなんて、従者失格ですもの」
「………従者?」

テオ様がきょとんとしている。私、何かおかしなことを言ったかしら?

「エリーゼを従者………って、ジェイドが言ったの?」
「はい」

やはり、王子の従者を女性がするなんて珍しいことよね。ジェイド様は女性嫌いだと言うし、侍女代わりに連れてこられたと考えたほうがいいのかしら。

「エリーゼは、本気でそう思っているの?」
「はい?」

どういう意味かしら。テオ様が仰ることがわからないのですけれど。

「そっかあ。じゃあジェイドの事は、あくまでもただの主人としか思ってないんだね?」
「?………勿論ですわ」

何故、そんな当たり前の事をわざわざ確認するのかしら?テオ様って本当に変わったお方だわ。
ただの主人………何故か、その一言が妙に私の心に引っ掛かった。
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