国一番の淑女結婚事情〜政略結婚は波乱の始まり〜

玉響

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本編(アルフォンシーナ視点)

155.現状把握

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「………とにかく、ブルーノが戻ってくる前にここから逃げ出さなければ、今度は本当に無事ではいられないわ………」

 一呼吸置いてから、アルフォンシーナは自分に言い聞かせるように呟いた。
 それから改めて部屋の中をぐるりと見渡す。
 趣味が良いとは言えない、富を誇るようなギラギラとした家具が置かれ、窓は小さく、そして室内は妙な匂いが充満していることに改めて気がつく。
 今アルフォンシーナが座っているベッドの寝具も何やら淫靡な雰囲気を醸し出すような意匠だった。

「本当に、ここは一体どこなのかしら………?」

 逃げ出すにしても、現在地が分からなければ、どこへ逃げればいいのか分からない。
 アルフォンシーナは暫しの間、じっと考えを回らせていたが、思い立ったようにベッドの上を移動し、床へと降りた。
 そして、先程ブルーノが出ていった扉を見、それから小さな窓の方へと視線を移した。

「あ……………っ」

 先程感じた恐怖の余韻なのか、それとも怪しげな薬の影響なのか、思ったよりも足に力が入らずにもつれてしまう。
 転びそうになるのを、何とか踏みとどまると、ふらふらとした足取りのまま窓の方へと歩み寄った。

 赤地に紫色の、悪趣味なカーテンが掛かった小窓は、明り取り程度のささやかなものだった。

(………この大きさでは、もし硝子を割って脱出を図ったとしてもくぐり抜けることすら難しそうだわ………)

 近くに顔を寄せ、まじまじと窓を観察するが、そもそも硝子が嵌め込みになっており、窓は開かない構造だった。
 仕方なくアルフォンシーナは硝子に触れながら、階下を覗き込んだ。
 窓の位置から地面まではかなりの距離があるように見える。目測で判断するに、ここは建物の三階部分だろうか。
その事実を知り、アルフォンシーナは少しがっかりした。

せめて一階なら、どうにかして逃げ出すことが出来るかもしれないと考えていたが、三階となれば、脱出するにはやはり、先程ブルーノが出ていった扉から逃げるしかない。
だが、建物の構造も分からない中で、出口まで誰にも見つからずに逃げるのは、常識的に考えてかなり難しい。
それに、考えてみればいくらブルーノが、思慮深い人間ではないと言っても誘拐してきた人間を、逃げ出しやすい部屋に一人で置いてはおかないだろう。
胸の中に僅かに灯っていた希望の灯消えていくのを、アルフォンシーナは感じた。
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