国一番の淑女結婚事情〜政略結婚は波乱の始まり〜

玉響

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本編(アルフォンシーナ視点)

156.決意

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だが、アルフォンシーナはすぐに気を取り直した。
今の状態を悲観し、絶望していても、助けなど来ない。危機に陥った時に王子様が助けに来てくれるのは、『めでたし、めでたし』で終わる子供向けの童話の中だけだ。

「………ベルナルド、様………」

まるで自分を勇気づけようとするかのように、アルフォンシーナは愛しい夫の名を呟く。
それから、ぎゅっと両手を握りしめた。

(建物の前の街道は、石畳になっていて整備されていた………。ということは、ここは王都の外れか、その近郊ということになるわね。王都の繁華街にさえ入ってしまえば何とかなるとは思うけれど………問題は、この建物からどうやって逃げ出すかだわ。そもそもあの扉は鍵がかかっているのかしら………?)

アルフォンシーナは扉を見つめた。
ブルーノが出ていった時に鍵がかけられた音は特にしなかったが、だとすると部屋の外に見張りがいる可能性が高い。
そもそもこの建物の中には一体何人の人間がいて、どこにいるのか。
それすらも全く把握が出来ないのだから、仕方がない。
だが、見つかる心配ばかりしていたら、行動を起こす前にブルーノが戻ってきてしまう。
ーーー今最も危惧するのは、ブルーノが、戻ってくることだ。だとしたら、仮に捕まって連れ戻されたとしても、逃げ出すべきではないのだろうかーーー。

そんな結論に至ると、アルフォンシーナは勇気を出して、前へと進んだ。
そして、扉の正面まで来ると、ドレスが汚れることも厭わず、扉の前に腰を下ろした。
そして、縋るように扉の方へと手を伸ばした。

「誰か…………、いませんか?」

かろうじて外に聞こえる程度の声を張り上げ、アルフォンシーナは外へと助けを求めた。
しかし、外からは何の返事もなかった。

「………?誰も、いないのですか?」

もう一度、警戒しながら声を張り上げてみたが、やはり返答はなかった。
いや、それどころか物音一つ聞こえてこなかった。

本当に、誰もいないのだろうか。
それとも、敢えて油断をさせ、逃走を謀った人間だけを効率的に懲罰の対象に加えようとしているだけなのだろうか。
疑えばきりがなかった。

アルフォンシーナは音を立てないようにそっと、扉のノブの部分に触れた。

(………どうか、誰もいませんように…………)

心のなかでただひたすらそう祈りながら両手に力を込めた。
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