国一番の淑女結婚事情〜政略結婚は波乱の始まり〜

玉響

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本編(アルフォンシーナ視点)

248.ソフィアの思い

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最後にベルナルドはもう一度だけアルフォンシーナに謝罪をすると、部屋を出ていった。

残されたアルフォンシーナは、遂に堪えきれなくなり、そのまま寝台に突っ伏したかと思うと、声を押し殺して泣いた。

気が付くと、朝になっていた。
どうやらあのまま泣き疲れて眠ってしまったらしかった。

「………酷い、顔………」

起き上がり、鏡を確認したアルフォンシーナは一人呟いた。
泣き腫らした瞼を何度か瞬き、窶れた頬にそっと触れる。
指先からは温もりが伝わってくるのに、鏡に映る顔は、血が通っているとは思えない程に青白かった。

と。
不意に扉が叩かれた。
一瞬、ベルナルドが来たのかと思い、返事を躊躇う。
だが、聞こえてきたのはソフィアの声だった。

「奥様………?」
「あ………、大丈夫よ。入ってきて頂戴」

一晩泣いたせいなのか、少し掠れた声で、返事をする。
間を置いて、ゆっくりと扉を開けて入ってきたソフィアは、沈痛な面持ちをしていた。
おそらく、昨晩の事をベルナルドから聞いたのだろう。
アルフォンシーナは、何だか気不味くて、曖昧な笑みを浮かべた。

「………ベルナルド様から、聞いたのでしょう?」

殆ど確信に近い疑問を口にすると、ソフィアは隠す素振りもなく頷いた。

「………これで、普通のご夫婦としてお過ごしになれると、使用人一同、喜んでおりましたのに………。オリヴァーもビアンカも、消沈しております………」

震える声でそう呟いたソフィアの目には、涙が浮かんでいた。

「………仕方がない、事だわ。このままでは、誰も幸せにはなれないもの。…………悪いのだけれど、荷造りを、手伝ってくれるかしら?実家から持ってきたものは殆どないのだけれど、それでもあまり図々しく居座る訳にはいかないものね?」

ソフィアを少しでも励まそうと、アルフォンシーナはわざと明るい声で軽口を叩くと、無理矢理笑顔を作った。
だが、上手く笑えているとは、とても思えなかった。
すると、ソフィアが一瞬顔をくしゃりと歪めた。
それと同時に、彼女の目からは涙が零れ落ちるのが、はっきりと見えた。

「……………っ」

形だけだった女主人である自分のことを心から慕ってくれていたのだということを、改めて実感する。

「……ありがとう………」

アルフォンシーナはソフィアの手を己のそれでそっと包むと、ふわりと微笑んだのだった。
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