国一番の淑女結婚事情〜政略結婚は波乱の始まり〜

玉響

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本編(アルフォンシーナ視点)

255.不可思議な行動

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再び沈黙が、空間を制した。
手首を掴まれたまま身動きも取れず、アルフォンシーナは戸惑いつつもそっとベルナルドの様子を窺う。
彼は美しい顔を歪め、アルフォンシーナの傷口を見つめている。

「このような傷、放っておいても構わないでしょうに………」

先に沈黙を破ったのはアルフォンシーナだった。
するとベルナルドは、はっと顔を上げた。

「放っておいて良いはずがないだろう!傷口が膿んだり、痕が残ったりしたらどうするつもりだった?!………いや、それよりも何故こんなふうに自分を傷付けた?!」

大声で問いつめられ、アルフォンシーナは驚いて息を呑む。
何故彼が、書類一枚で切れてしまうような関係である自分の傷ごときでこんなにも怒るのだろうか。
しかし、現時点では自分はまだ彼の妻だ。だとすると、彼は自分の所有物に傷がついたから怒っているのかもしれないと思い、納得する。

「………先程も申し上げましたとおり、予期せぬ事故で出来た傷です。自分で自分を傷つけようとしたわけではありませんわ」

淡々と答えると、ベルナルドの手の力が僅かに緩んだ気がした。
しかし、彼から逃げよう手に力を込めて振り解こうとするが、彼の手はびくともしなかった。

「私は…………っ!」

ベルナルドが掠れた声で、何かを訴えようとした瞬間、先程の侍女が戻ってきた。

「お待たせして、申し訳ありませんでした」

ベルナルドとアルフォンシーナは一瞬だけ見つめ合い、それから示し合わせたように視線を逸らした。

「すぐに手当てを………」
「………いや」

薬箱を手にした侍女が慌てて近寄ってくると、それをベルナルドが制止した。

「やはり、私が手当てをする。もう下がっていい」

顎で薬箱をテーブルに置くよう指示すると、ベルナルドは冷たく言い放った。
侍女はテーブルに薬箱を置くと、そそくさと逃げ出した。
取り残されたアルフォンシーナは、戸惑い、目を瞬くしかなかった。

形だけの、それももうすぐ他人となる妻の小さな傷など、彼にとっては取るに足らない事だろうに、一体、どういうつもりなのだろう。
まさか、最後の罪滅ぼしということなのだろうか。

そう考えただけで、喉の奥から苦い痛みが込み上げてきて、アルフォンシーナは深く息を吸い込み、それをぐっと堪えた。

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