301 / 392
本編(アルフォンシーナ視点)
310.攻防
しおりを挟む
すると、パルヴィス伯爵は実に不愉快だ、とでも言うように小さく鼻を鳴らした。
アルフォンシーナの知る限り、父はあまり感情を表に出さない人だった。
そんな父が、明らかにベルナルドへの不満を露わにしていることが、不思議でならなかった。
「娘との離婚と婚姻を報告する手紙を送りつけておいて、よくもそんな口が利けたものだな」
パルヴィス伯爵の低い声は、微かに震えているように聞こえた。
その言葉を聞いて、アルフォンシーナは驚き、同時に納得した。
ベルナルドは律儀にも、領地に引きこもっていた両親の元へ、王命での婚姻の解消と、自分達の意思での再婚について、報告をしていたのだ。
そして、その手紙を読んだ両親が、真相を確かめる為にシルヴェストリ侯爵邸へ押し掛けた、というのが今回の真相らしかった。
確かに『結婚』とは、家と家との契約だ。当主にその旨を知らせるのは当然の行為と言える。
だが、離婚と同時に再婚の報告が届いたとなれば、どんなに感情の起伏が少ない人間でも驚くだろう。
そもそも、離婚した直後に同一人と婚姻をした事例など、今まで聞いたこともない。
両親が驚き、また怒るのは当然だった。
「私は、きちんと筋を通しただけですよ」
パルヴィス伯爵に向き直るベルナルドは、実に冷静だった。
「私が何も知らないと思っているのなら、大間違いだぞ。あれだけ娘を蔑ろにして、更には笑い者にするつもりなのか?」
淡々とした口調でこそあったが、パルヴィス伯爵からは、確かな怒りが感じられた。
「………お父様、違うのです」
「お前は、黙っていなさい」
堪らずアルフォンシーナが口を挟もうとする。
しかしすぐにパルヴィス伯爵によって遮られた。
アルフォンシーナは開きかけた口を噤むと、父から視線を逸らす。
パルヴィス伯爵の隣に座る伯爵夫人ーーーアルフォンシーナの母は、じっとしたままパルヴィス伯爵とベルナルドのやり取りを静観しているだけだった。
「王都から遠く離れたパルヴィス伯爵領にも、社交界の噂くらい届いていることは存じております。………ですが、伯爵ともあろう方が、またしてもそんなつまらない噂話を真に受けるとは思いませんでしたよ」
きっぱりとそう言い切ると、ベルナルドは不気味なほどに綺麗な笑顔を浮かべて見せた。
アルフォンシーナの知る限り、父はあまり感情を表に出さない人だった。
そんな父が、明らかにベルナルドへの不満を露わにしていることが、不思議でならなかった。
「娘との離婚と婚姻を報告する手紙を送りつけておいて、よくもそんな口が利けたものだな」
パルヴィス伯爵の低い声は、微かに震えているように聞こえた。
その言葉を聞いて、アルフォンシーナは驚き、同時に納得した。
ベルナルドは律儀にも、領地に引きこもっていた両親の元へ、王命での婚姻の解消と、自分達の意思での再婚について、報告をしていたのだ。
そして、その手紙を読んだ両親が、真相を確かめる為にシルヴェストリ侯爵邸へ押し掛けた、というのが今回の真相らしかった。
確かに『結婚』とは、家と家との契約だ。当主にその旨を知らせるのは当然の行為と言える。
だが、離婚と同時に再婚の報告が届いたとなれば、どんなに感情の起伏が少ない人間でも驚くだろう。
そもそも、離婚した直後に同一人と婚姻をした事例など、今まで聞いたこともない。
両親が驚き、また怒るのは当然だった。
「私は、きちんと筋を通しただけですよ」
パルヴィス伯爵に向き直るベルナルドは、実に冷静だった。
「私が何も知らないと思っているのなら、大間違いだぞ。あれだけ娘を蔑ろにして、更には笑い者にするつもりなのか?」
淡々とした口調でこそあったが、パルヴィス伯爵からは、確かな怒りが感じられた。
「………お父様、違うのです」
「お前は、黙っていなさい」
堪らずアルフォンシーナが口を挟もうとする。
しかしすぐにパルヴィス伯爵によって遮られた。
アルフォンシーナは開きかけた口を噤むと、父から視線を逸らす。
パルヴィス伯爵の隣に座る伯爵夫人ーーーアルフォンシーナの母は、じっとしたままパルヴィス伯爵とベルナルドのやり取りを静観しているだけだった。
「王都から遠く離れたパルヴィス伯爵領にも、社交界の噂くらい届いていることは存じております。………ですが、伯爵ともあろう方が、またしてもそんなつまらない噂話を真に受けるとは思いませんでしたよ」
きっぱりとそう言い切ると、ベルナルドは不気味なほどに綺麗な笑顔を浮かべて見せた。
105
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
私たちの離婚幸福論
桔梗
恋愛
ヴェルディア帝国の皇后として、順風満帆な人生を歩んでいたルシェル。
しかし、彼女の平穏な日々は、ノアの突然の記憶喪失によって崩れ去る。
彼はルシェルとの記憶だけを失い、代わりに”愛する女性”としてイザベルを迎え入れたのだった。
信じていた愛が消え、冷たく突き放されるルシェル。
だがそこに、隣国アンダルシア王国の皇太子ゼノンが現れ、驚くべき提案を持ちかける。
それは救済か、あるいは——
真実を覆う闇の中、ルシェルの新たな運命が幕を開ける。
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
【完結】ジュリアはバツイチ人生を謳歌する
ariya
恋愛
エレン王国の名門貴族・アグリア伯爵家に嫁いだジュリア・アグリア(旧姓ベルティー)。
夫のアベル・アグリア伯爵は、騎士として王妃の護衛任務に没頭し、結婚翌日からほぼ別居状態。
社交界のパーティーでは妻のエスコートを代理人に任せ、父の葬儀にも顔を出さず、事務的な会話と手紙のやり取りだけの日々が続く。
ジュリアは8年間の冷遇に耐え抜いたが、ある朝の食事中、静かに切り出す。
「私たち、離婚しましょう」
アベルは絶句するが、ジュリアは淡々と不満を告げる。
どれも自分のしでかしたことにアベルは頭を抱える。
彼女はすでに離婚届と慰謝料の用意を済ませ、夫の仕事に理解を示さなかった「有責妻」として後腐れなく別れるつもりだった。
アベルは内心で反発しつつも、ジュリアの決意の固さに渋々サイン。
こうしてジュリア・アグリアは、伯爵夫人としての全てを置き去りにし、バツイチ人生を開始する。
【完結】あなたを忘れたい
やまぐちこはる
恋愛
子爵令嬢ナミリアは愛し合う婚約者ディルーストと結婚する日を待ち侘びていた。
そんな時、不幸が訪れる。
■□■
【毎日更新】毎日8時と18時更新です。
【完結保証】最終話まで書き終えています。
最後までお付き合い頂けたらうれしいです(_ _)
【完結】堅物な婚約者には子どもがいました……人は見かけによらないらしいです。
大森 樹
恋愛
【短編】
公爵家の一人娘、アメリアはある日誘拐された。
「アメリア様、ご無事ですか!」
真面目で堅物な騎士フィンに助けられ、アメリアは彼に恋をした。
助けたお礼として『結婚』することになった二人。フィンにとっては公爵家の爵位目当ての愛のない結婚だったはずだが……真面目で誠実な彼は、アメリアと不器用ながらも徐々に距離を縮めていく。
穏やかで幸せな結婚ができると思っていたのに、フィンの前の彼女が現れて『あの人の子どもがいます』と言ってきた。嘘だと思いきや、その子は本当に彼そっくりで……
あの堅物婚約者に、まさか子どもがいるなんて。人は見かけによらないらしい。
★アメリアとフィンは結婚するのか、しないのか……二人の恋の行方をお楽しみください。
旦那様に愛されなかった滑稽な妻です。
アズやっこ
恋愛
私は旦那様を愛していました。
今日は三年目の結婚記念日。帰らない旦那様をそれでも待ち続けました。
私は旦那様を愛していました。それでも旦那様は私を愛してくれないのですね。
これはお別れではありません。役目が終わったので交代するだけです。役立たずの妻で申し訳ありませんでした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる