国一番の淑女結婚事情〜政略結婚は波乱の始まり〜

玉響

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本編(アルフォンシーナ視点)

310.攻防

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すると、パルヴィス伯爵は実に不愉快だ、とでも言うように小さく鼻を鳴らした。

アルフォンシーナの知る限り、父はあまり感情を表に出さない人だった。
そんな父が、明らかにベルナルドへの不満を露わにしていることが、不思議でならなかった。

「娘との離婚と婚姻を報告する手紙を送りつけておいて、よくもそんな口が利けたものだな」

パルヴィス伯爵の低い声は、微かに震えているように聞こえた。
その言葉を聞いて、アルフォンシーナは驚き、同時に納得した。

ベルナルドは律儀にも、領地に引きこもっていた両親の元へ、王命での婚姻の解消と、自分達の意思での再婚について、報告をしていたのだ。
そして、その手紙を読んだ両親が、真相を確かめる為にシルヴェストリ侯爵邸へ押し掛けた、というのが今回の真相らしかった。

確かに『結婚』とは、家と家との契約だ。当主にその旨を知らせるのは当然の行為と言える。
だが、離婚と同時に再婚の報告が届いたとなれば、どんなに感情の起伏が少ない人間でも驚くだろう。
そもそも、離婚した直後に同一人と婚姻をした事例など、今まで聞いたこともない。
両親が驚き、また怒るのは当然だった。

「私は、きちんと筋を通しただけですよ」

パルヴィス伯爵に向き直るベルナルドは、実に冷静だった。

「私が何も知らないと思っているのなら、大間違いだぞ。あれだけ娘を蔑ろにして、更には笑い者にするつもりなのか?」

淡々とした口調でこそあったが、パルヴィス伯爵からは、確かな怒りが感じられた。

「………お父様、違うのです」
「お前は、黙っていなさい」

堪らずアルフォンシーナが口を挟もうとする。
しかしすぐにパルヴィス伯爵によって遮られた。
アルフォンシーナは開きかけた口を噤むと、父から視線を逸らす。
パルヴィス伯爵の隣に座る伯爵夫人ーーーアルフォンシーナの母は、じっとしたままパルヴィス伯爵とベルナルドのやり取りを静観しているだけだった。

「王都から遠く離れたパルヴィス伯爵領にも、社交界の噂くらい届いていることは存じております。………ですが、伯爵ともあろう方が、そんなつまらない噂話を真に受けるとは思いませんでしたよ」

きっぱりとそう言い切ると、ベルナルドは不気味なほどに綺麗な笑顔を浮かべて見せた。
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