国一番の淑女結婚事情〜政略結婚は波乱の始まり〜

玉響

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本編(アルフォンシーナ視点)

314.両親の愛情

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「お父様………」

アルフォンシーナは小さな声で、パルヴィス伯爵に呼び掛けた。

父の言葉を聞いて、ベルナルドに教えて貰った『両親が、アルフォンシーナの事を案じてベルナルドからの求婚を断った』という話が思い出された。
あの話は、ベルナルドがアルフォンシーナを気遣って吐いた嘘ではなかったということに、驚きと嬉しさがこみ上げてくる。

自分は、両親の望むような娘ではなかったのかもしれない。
両親の期待に応えられなかったのかもしれないと、いつも心の何処かで不安に思っていた。
だが、両親は『国一番の淑女』という政治的な駒としてではなく、きちんと『娘』として愛情をもっていてくれたのだ。

「………」

思わず涙ぐむアルフォンシーナに対して、パルヴィス伯爵は無言で頷き、それから申し訳なさそうに肩を縮め、顔を顰めた。

彼は他者に厳しい人であるが、それ以上に自分にも厳しい人だ。
そして、曲がったことが大嫌いな人だ。
ベルナルドの指摘で己の過ちに気がついたことで、酷く自分を責め、また深く後悔しているに違いなかった。

「………分かっていただければ良いんですよ。実際に彼女を傷つけていたのは私ですから、私がどうこう言えるような立場でもありませんし………」

少し苦しげな笑顔を浮かべ、ベルナルドが囁く。
彼もまた、パルヴィス伯爵と同じように己の行いを悔いているのだ。

それを感じ取ったアルフォンシーナは背筋を伸ばすと、深く息を吸い込み、口を開いた。

「………確かに一度目の結婚の時は色々なことがありましたけれど………わたくしは今、幸せです。ベルナルド様の元に嫁いで、良かったと思っております。それに、二度目の結婚は、わたくしの意思で決めたことです。ベルナルド様を責めるのであれば、わたくしも叱られるべきです」

穏やかで透き通った声が、はっきりと自分の意見を告げる。
パルヴィス伯爵夫妻も、ベルナルドも、はっとしたように顔を上げた。

「アルフォンシーナ…………」

少しして小さな呟きが、パルヴィス伯爵から零れた。
大人しく従順で、自分から意見することの少なかったアルフォンシーナが堂々と宣言したことに驚いたのだろう。
そんな父に、アルフォンシーナは柔らかな笑顔を浮かべて見せた。
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