国一番の淑女結婚事情〜政略結婚は波乱の始まり〜

玉響

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本編(アルフォンシーナ視点)

315.母の愛情

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「………お父様とお母様が、わたくしの事を案じて下さっていたという事は、良く分かりました。………未熟で至らぬ事の多いわたくしですが、自分の進む道は、自分で決めたいのです。ですから………」
「アルフォンシーナ」

 突然、今まで沈黙を守っていたパルヴィス伯爵夫人が、アルフォンシーナの名を呼んだ。
 アルフォンシーナは驚いて、口を噤んだ。

 母は、人の言葉を遮るようなことはしない。
 それなのにアルフォンシーナの言葉を遮ったという事は、余程アルフォンシーナの言葉が不快だったのだろうか。
 もしかしたら叱咤されるかもしれないと思いながら、アルフォンシーナは母の反応を待った。

 しかし、アルフォンシーナの予想は大きく外れた。
 パルヴィス伯爵夫人は穏やかに微笑むと、その優しい眼差しをアルフォンシーナに向けた。

「辛く、心細い思いをさせてしまってごめんなさいね………。至らぬのは、あなたではなくてわたくしたちの方です。大切な娘が窮地に立たされている時に傍におらず、王都から遠く離れた伯爵領でそんなことも知らずに過ごしていたのですから……。本当に、シルヴェストリ侯爵様の仰る通りなのに、気が付かなかった己が、恥ずかしいわ」

 アルフォンシーナと同じサファイア色の双眸は、真っ直ぐにアルフォンシーナへと向けられている。
 母とこうして向き合ったのは、一体いつぶりだろうか。
 アルフォンシーナはゆっくりと瞬きをした。

「そんな…………」

 何と声を掛ければ良いのか分からず、アルフォンシーナは唇を真一文字に引き結んだ。

「………それに、わたくしはあなたにもっと寄り添うべきだったと、後悔しているのです」

 パルヴィス伯爵夫人が、膝の上でぎゅっと両手を握りしめた。
 その手は、ふるふると小さく震えていた。

「お母様………」
「………あなたは、わたくしの自慢の娘です。誰よりも立派で、誰よりも素晴らしい淑女だわ。………だから、あなたがシルヴェストリ侯爵と添い遂げる事を自分で決めたのなら、わたくしはあなたの意思を尊重します」

 パルヴィス伯爵夫人は、再び綺麗な微笑みをアルフォンシーナに向けた。
 その目には、うっすらと涙が滲んでいるように見えた。
 すると、隣にいるパルヴィス伯爵が、妻の肩をそっと抱き、アルフォンシーナに向かって頷いた。
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