転生したらついてましたァァァァァ!!!

夢追子(@電子コミック配信中)

文字の大きさ
9 / 187
第一部

第一章 とりあえず責任者よ出てこい!!!⑧『馬車の中』

しおりを挟む
       八

(……何か、すごいこっち見てくる気がするんだけど……。)
 馬車が走り出してしばらくしてから、向かい側に座った女性の視線が、気になってしょうがない。ちらちらとこちらを窺うように、何度も視線を向けられるのだが、そんな視線を向けられている真意が分からない。
 口を開いて何か言うのかと思えば、結局何も言わずに口を閉じてしまう。
 ひどく居心地の悪い思いを沢崎直は感じていた。
 あまりにも居心地が悪いことに耐えかね、こちらから口を開くことにする。
「……あのー、どうかしましたか?」
「い、いえ。あの。」
 返事をする声が裏返っていた。
 沢崎直が続きを待ってじっと見つめると、女性はさっと視線を逸らした。
(……どういうこと?)
 今までの沢崎直としての二十五年の人生で、相手にこんな反応をされたことはない。そのため、どう対処していいか全然全く理解できない。
 とりあえず目の前の女性をじっくりと観察する。
 視線を逸らされてはいるが、嫌悪感をこちらに持っている感じはしない、多分。話が続きはしないが、話をしたくないわけではなさそう。
(そういえば、私、今男だし、この子はご令嬢みたいだし……。男性慣れしていないのかな?)
 他人事のように俯瞰しながら考察する。
(……でも、さっきは普通に話してた気がするし、護衛役の人も男だったよね?ご令嬢と言っても、深窓のというよりは、もっと活発な感じもするし……。)
「……コホン。」
 気を取り直すように女性は品よく咳払いをした。
 考察を一時停止して、女性の言葉を待つ。
 女性は息を整えると、ようやく口を開いた。
「わ、わたくしはハンプシャー伯爵家の次女クリスティーンと申します。先程は助けていただいてありがとうございました。」
「いえいえ。そんな大層なことはしていません。」
 本当に大層なことはしていない。ただ気を失っていた様子の女性に声を掛けただけだ。むしろ、馬車にまで乗せてもらってる自分の方が現在助けられている状況だと、沢崎直は思った。
 女性はふわりと微笑むと控えめにこちらを見つめながら続けた。
「そんな。ご謙遜なさらないでくださいな。あっ、あのー。お名前を聴かせていただいても?」
「あっ、はい。私は……。」
 そこで名乗ろうとして、沢崎直は固まった。
(えっ?これって、どういう状況?)
 スムーズに沢崎直という名を名乗ろうとした自分にブレーキをかけて、脳内をフルスピードで回転させる。
 沢崎直というのは、ここではないどこかで自分が女性として二十五年使ってきた馴染みのある名前ではあるが、このイケメンがイケボで名乗っていい名前なのだろうか?
(……なんか違う気がする。)
 そう脳内で結論付けて、沢崎直は慎重に口を開くことした。
「……えっと、ですね。……名前、なのですが……。分からないと言いますか……。そのー、多分ですが……。先程のえっと、モンスターに襲われたようで、その、そこからの事がよく分からないというか、……曖昧というか。ははは。すみません。」
 最後は笑ってごまかして謝ってみる。
 本当はくまさんに襲われる前からよく分からないことになっているのだが、その辺は適当だ。しどろもどろの説明であることは重々承知だが、これ以上何て説明すればいいか分からない。
 怪しまれたかなぁと思って女性の顔色を窺うと、やはり今回も想像していた反応とは違っていた。
 女性はしどろもどろの説明に不信感も抱かず、心配そうにこちらを見つめていた。
「どこか、お怪我をなされたりは?」
「それは大丈夫だと思うんですけど……。」
「ですが……、お名前も分からないということであれば、記憶喪失ということになりませんか?でしたら、頭を強く打たれたりしたとか?」
「それも……、よく……。あっ、でも、その、頭を触って確認した限りは、何か問題があるようには思えませんので、」
 デモンストレーションのように頭を触って平気なことを見せる。
 女性は確認するように慌てて近づくが、すぐに距離を取って、顔を逸らした。
「あっ、申し訳ございません。私ったら、はしたない。」
 女性の顔が心なしか赤く染まっている。
 その時、沢崎直は唐突に理解した。
(あっ!私、イケメンになってるんだ!)
 先程からの女性の理解不能な態度の数々は、イケメンを相手取って恥じらっていたものだったのだ。よく考えれば、命を救ってくれたのが若いイケメンだったなど、とんでもないシチュエーションだ。
 クリスティーンと名乗った伯爵令嬢は頬を染めて上目づかいにこちらを見上げた。
「街に着いたら、お医者様をお呼びします。その後、お礼をさせてください。」
 沢崎直として生まれて二十五年、全く遭遇したことのない事態がこれから始まることだけは確実だった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中に呆然と佇んでいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出したのだ。前世、日本伝統が子供の頃から大好きで、小中高大共に伝統に関わるクラブや学部に入り、卒業後はお世話になった大学教授の秘書となり、伝統のために毎日走り回っていたが、旅先の講演の合間、教授と2人で歩道を歩いていると、暴走車が突っ込んできたので、彼女は教授を助けるも、そのまま跳ね飛ばされてしまい、死を迎えてしまう。 享年は25歳。 周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっている。 25歳の精神だからこそ、これが何を意味しているのかに気づき、ショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  ブックマーク・評価、宜しくお願いします。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

【本編完結】転生令嬢は自覚なしに無双する

ベル
ファンタジー
ふと目を開けると、私は7歳くらいの女の子の姿になっていた。 きらびやかな装飾が施された部屋に、ふかふかのベット。忠実な使用人に溺愛する両親と兄。 私は戸惑いながら鏡に映る顔に驚愕することになる。 この顔って、マルスティア伯爵令嬢の幼少期じゃない? 私さっきまで確か映画館にいたはずなんだけど、どうして見ていた映画の中の脇役になってしまっているの?! 映画化された漫画の物語の中に転生してしまった女の子が、実はとてつもない魔力を隠し持った裏ボスキャラであることを自覚しないまま、どんどん怪物を倒して無双していくお話。 設定はゆるいです

おせっかい転生幼女の異世界すろーらいふ!

はなッぱち
ファンタジー
赤ん坊から始める異世界転生。 目指すはロマンス、立ち塞がるのは現実と常識。 難しく考えるのはやめにしよう。 まずは…………掃除だ。

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

1歳児天使の異世界生活!

春爛漫
ファンタジー
 夫に先立たれ、女手一つで子供を育て上げた皇 幸子。病気にかかり死んでしまうが、天使が迎えに来てくれて天界へ行くも、最高神の創造神様が一方的にまくしたてて、サチ・スメラギとして異世界アラタカラに創造神の使徒(天使)として送られてしまう。1歳の子供の身体になり、それなりに人に溶け込もうと頑張るお話。 ※心は大人のなんちゃって幼児なので、あたたかい目で見守っていてください。

処理中です...