孤独な姫君に溺れるほどの愛を

ゆーかり

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そんなある日、偶然見つけた裏庭の木陰で、私は蹲って泣いていました。

痛い、悲しい、苦しい、寂しい──

激しい嗚咽が込み上げます。
でも、ここは体の小さな子どもしか来られない秘密の場所。だからどんなに泣いても問題ないはず、でした。

「どうしたんだ?」

突然人が現れて心底驚きました。はっと顔を上げると、同じ年頃の少年が同じようなビックリ顔でこちらを見ていたのです。

「あ、あ……」

私が何も言えずボロボロ泣いていると、少年は百面相の末私の側にドカっと腰を下ろしました。

「俺はエドヴァルドだ、怪しいものじゃない」

やけに尊大で、子どもらしくない物言いをする少年でした。

「わっ、わたっ……リラ……っ」

「リラ?」

泣きながらコクコクと頷くと、エドヴァルドと名乗る少年は、ムスッと黙り込むのでした。
不機嫌そうなのに立ち去る風でもない彼が気になって、いつの間にか涙も引っ込んでしまいました。

「あの……」

「ん、泣き止んだか。おまえ誰かにいじめられたのか」

「ちが……」

「じゃあ何で泣いてたんだ」

「……さ……から……」

「ん?」

「さみし、かったから……です」

「寂しい? 何で寂しいんだ?」

「ひとりぼっち、だから……」

「誰かが側にいれば寂しくないのか?」

多分そうなのかな、と思いながら私は頷きました。

「仕方ないな、なら俺が側に居てやる。ずっとはムリだけどな」

「エドヴァルド、さまが?」

「エドでいい。おまえシジイが言ってた子だな」

「え、エド……ジジイって」

「おまえはグランジェリン公爵の娘だろ? なら俺の従姉じゃないか」

エドはこの国の王子で、今まで会ったこともない従弟でした。
礼をしなければと頭を下げかけたところ、肩を掴まれ阻まれました。

「で、んか?」

「やめろ、エドでいいし、おまえからそういう敬称とか敬語、礼も要らない」

エドは親戚として親しくしようとしてくれているのだと理解しました。

「わか……ったわ、エド」

その気持ちが嬉しくて、私は自然と微笑んだのでした。エドも笑顔になったので、益々嬉しくなりました。

この時からエドは私にとって、最も近しい友人となったのです。








エドは約束通り、時間が空けば何くれとなく会いに来てくれました。

庭園を散策したり、共にダンスの稽古をしたり、たわいも無い事を語り合ったり。
エドと過ごす時間は、叔母によって深く傷つけられた心を、ゆっくりと癒してゆきました。

とはいえエドはこの国唯一の王子。厳しいスケジュールの元、調整をつけるのは本当に大変なことだったと思います。

そんな事を微塵も感じさせなかったのは、きっと彼なりの配慮だったのでしょう。物言いはぶっきらぼうだけれど、行動は思いやりがあって優しい。

そんなエドは私にとって、いつしかとてもかけがえのない、大切な存在になっていったのです。

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