超ゲーム初心者の黒巫女召喚士〜動物嫌われ体質、VRにモフを求める〜

ネリムZ

文字の大きさ
84 / 101
黒巫女召喚士と暴食の悪魔

84

しおりを挟む

『小賢しい虫共め!粉砕してやる【ダークハンマー】』

 ベルゼブブの真上の虚空から黒紫の大きなトンカチが現れる。
 そしてゆっくりと私と剣士骸骨に向かって振られて行く。
 大きいからかスピードはゆっくりだ。

 剣士骸骨以外の通常骸骨達は私達の動きに付いて行く事が出来ないで呆然としている。

「スケルトンナイト達の蘇生にも魔力は消費する。どうかあれを防ぎたい!」
「え、わ、分かりました」

 あんな大きな物どうやって防ごうか?
 いや、防ぐ必要無いね。
 あの速度ならマナちゃんの方が速い!

「マナちゃん!」

 マナちゃんに飛び乗り皆も乗る。
 そしてマナちゃんの足で剣士骸骨さんを回収して霊符【風弾】を骸骨達──スケルトンナイトに向かって放つ。
 四方八方に飛んで行くスケルトンナイトを見て黒紫のハンマーの射程範囲から弾き飛ばす。
 そしてハンマーの持ち手は細いのでそこの横をすれ違うように飛んで通る。
 くるりんと1回転してマナちゃんはベルゼブブの方向に向き直る。
 マナちゃんの魔法を放ってやりたいがベルゼブブには意味が無いので辛い。
 私達の戦い方では魔法と妖術がメイン火力だ。
 ベルゼブブは地面に居るので空中に居ると逆に戦い難い。
 マナちゃんから飛び降りて地面に着地する。
 もすぐでベルゼブブのHP3割を減らせる。

「行きます!」
「ああ!」

 鎌を構え直してベルゼブブに接近する。
 マナちゃんが最初に突進でベルゼブブのバランスを崩す。ベルゼブブは地面に手を着けて後ろに回転して体制を直したがすぐに私と剣士骸骨さんが接近していた。
 鎌と剣を同時に振るう。
 鎌が弱点の下の方、剣は弱点の上の方を斬り裂き互いにベルゼブブの横を通ってベルゼブブの後ろに移動した。

『なん、でだ?』

 ベルゼブブは急に連携が出来るように成った事に驚愕を隠せないようだ。

 でも、私もびっくりだよ。ここまで連携取れるのって有り得なくない?

『多分、剣士骸骨の戦い方がわたしに近いから何となく動き方が分かるんだろ?違う人格だから何とも言えないけど』

 確かに、最早超能力レベルだよね、これ?
 でも、周りから見たら頭の⋯⋯今は考えないでおこう。

 ベルゼブブに再度集中して接近する。
 片手で鎌を振るい空いている左手を地面に着けて回し蹴りを放ち鎌で地面を弾き体を上げてベルゼブブを足場に跳躍して後ろに下がる。
 交代するかのように剣士骸骨が移動して剣を2連続で振るい、続いて十字斬りで攻撃してベルゼブブの反撃の拳を盾で捌きネマちゃんが弱点に攻撃して互いにバックステップ。

「そろそろ魔法が再使用可能になりますね」

 ベルゼブブにはあれが1番効果的だ。
 食べる行為をしないのでベルゼブブの動きを制限したいのだが、【呪縛】では妨害にも成らないだろう。
【竜巻】だと食われるがその間の時間は稼げるかもしれないがMPが回復しきれていない。
 ならば、やる事は1つ。ガンガン攻撃して相手に避けると言う隙を与えない。

 私はベルゼブブの背後に回る。

『【ダークバースト】!』

 ベルゼブブを中心に黒紫の光がドーム状に広がって行く。
 通過した地面を抉りながら広がる。
 スケルトンナイトは既に離れた所で弓矢の準備を初めて居るので多分問題ない。
 剣士骸骨さんも逃げている模様だ。師匠のお父さんは魔法で自分を守る結界を張っている。今回は全体では無いようだ。

「ギャラー!」
「ありがとう」

 私はマナちゃんの上に乗り上空へと逃げる。
 数秒後にベルゼブブの魔法が収まりベルゼブブの場所に向かって徐々に深く成っているような円が地面に完成する。
 しかし、この場所は不思議な事に地面が盛り上がって来て再生を始めている。
 ベルゼブブも合わせて徐々に上って来て顔をさらけ出す。
 怒りに満ちたその顔を。

 ベルゼブブは魔神【ハデス】から生み出された悪魔生産機の1人。
 原初の悪魔で『暴食』を司る。
 悪魔は自分の感情には素直だ。故に自分の絶対的な強者としてのプライドを犯した相手には毎度絶対的な力の差を示してから倒している。
 だが、現在はどうだろうか。
 圧倒的弱者である有象無象に押されているでは無いか。
 そんなのは有り得ない。有り得て良いはずが無い。
 自分の力が弱っているからと言う弱者の逃げ道等ベルゼブブは使わない。
 そんなプライドがあるからこそベルゼブブは更なる怒りを覚える。
 精神生命体である悪魔は肉体を基本的に持たない。
 そして感情に対しては敏感だ。
 ベルゼブブとて自分の怒りを感じて居るが、それに呑み込まれる事は無い。
 怒りに狂って冷静に成れなかったら、それこそ弱者。
 己の感情を操作出来る事もまた強者。
 ベルゼブブの己の強者と言う絶対信頼は今も尚、崩れない。

 ベルゼブブは両手を掲げる。
 そして再び巨大な球体を生成する。だが、その生成される速度は尋常じゃ無かった。
 高速で体積を増幅させる黒紫の球体。
 あれをどうやって防ぐかを考える事も億劫になる程に大きく巨大な力の波動のような威圧を感じる。

『死に晒せ【ダークボール・ブレイク】』

 両手を下に下げるのと同時にベルゼブブが生み出した黒紫の巨大な球体は私達に向かって落ちて来る。
 HP3割を減らして居ないベルゼブブの魔法でここまでの威力を出すとかゲームバランス崩壊も良い所だ。
 ふざけている。そう言いたいがそんな時間も惜しい。
 ベルゼブブの背後を抜けるように飛べば助かるが、スケルトンナイト達はそうは行かない。
 もしも【竜巻】が使えるとしてもなんの役にも立たない。
 せめて剣士骸骨さんだけでも回収するべきか?
 そして動き出したのは師匠のお父さんだった。

「タロット様、今一度我々に力を【アンチデヴィルホーリープリズン】」

 聖なる光、暖かくも冷たいようなそんな眩しい光がベルゼブブの生み出した巨大な黒紫の球体を包み込む。
 全てを包み込み体積を減らして行く。
 圧倒的な強さと思われたベルゼブブの魔法を完全に突破した師匠のお父さん。
 その場では私のみが唖然としていた。
 理由は簡単だ。
 スケルトンナイトも剣士骸骨さんも師匠のお父さんの実力を信じて居たからだ。
 それに対して私はどうやって切り抜けるか焦り考えていた。
 だけど、必要無かったんだ。
 ここには私よりも頼もしく強く、そして師匠の親戚が居るんだから。
 仲間に対して信頼していなくてどうする。

「フーー」

 1度息を吐いて考えを改める。
 この中で1番弱いのは私だ。
しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。 ─────── 自筆です。 アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

癒し目的で始めたVRMMO、なぜか最強になっていた。

branche_noir
SF
<カクヨムSFジャンル週間1位> <カクヨム週間総合ランキング最高3位> <小説家になろうVRゲーム日間・週間1位> 現実に疲れたサラリーマン・ユウが始めたのは、超自由度の高いVRMMO《Everdawn Online》。 目的は“癒し”ただそれだけ。焚き火をし、魚を焼き、草の上で昼寝する。 モンスター討伐? レベル上げ? 知らん。俺はキャンプがしたいんだ。 ところが偶然懐いた“仔竜ルゥ”との出会いが、運命を変える。 テイムスキルなし、戦闘ログ0。それでもルゥは俺から離れない。 そして気づけば、森で焚き火してただけの俺が―― 「魔物の軍勢を率いた魔王」と呼ばれていた……!? 癒し系VRMMO生活、誤認されながら進行中! 本人その気なし、でも周囲は大騒ぎ! ▶モフモフと焚き火と、ちょっとの冒険。 ▶のんびり系異色VRMMOファンタジー、ここに開幕! カクヨムで先行配信してます!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

処理中です...