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しあわせのつづき
いちばん
しおりを挟む今まで見てきた涼真の部屋とはまるで違う、愛らしい部屋を遥斗は見渡した。
涼真のベッドの周りも棚にも、ふあふあのぬいぐるみがたくさん、グラデーションになるよう並べられていて、リボンやレースでおめかしされていて、めちゃくちゃかわいい。
「りょーくんが、いちばんすきなぬいぐるみは?」
赤い頬で、涼真は真っ白な犬のぬいぐるみを選んだ。
「はるる」
「僕の愛称?」
首をかしげる遥斗に、ふうわり涼真のまなじりが朱くなる。
「……ハルと、いっしょの名前だから……」
「あ、この犬の名前が『はるる』なの?」
こくんと涼真がうなずく。
『涼真が可愛い』スイッチが入ると、うなずく角度から、揺れる髪から、上目遣いな瞳から、ちょっと心配そうに握られた指まで、何もかもが、めちゃくちゃかわいい──!
「はぁ、かわいいよ、りょーくん……!」
鼻息が荒くなりそうな遥斗にも引くことなく、涼真は照れ照れらしい紅い頬で、ぽふりと遥斗の頬に『はるる』を押しつけた。
ふあふあ!
「……名前も、まっしろで天使なところも、可愛いところも、ハルに似てる、と思って……」
ぽつぽつ、一生懸命話してくれる涼真の頭を、なでなでする。
「うれしい」
にこにこ笑った遥斗は、ちょうど鞄につけられそうな大きさの『はるる』を涼真の頬に、むにむにする。
びっくりしたみたいに目を丸くする涼真が、とびきりかわいい。
「『はるる』いっしょに鞄につけよう、りょーくん」
ふうわり紅くなった涼真は、ふるふる首をふった。
「りょーくん、かわいーよ。だいじょうぶ、勇気をだしてみよう!」
涼真の手をにぎる遥斗に、ふるふる首をふった涼真は、夜空みたいな犬のぬいぐるみを棚の端から取りだした。
「『りるる』いつも陰気で後ろ向きで、名前まで僕に似てる。
『りるる』を見捨てないで、いつも励まして、やさしくしてくれるのが『はるる』なんだ。……だから、ハルには『りるる』を持ってほしくて……」
赤い耳で、めちゃくちゃかっこいー、りょーくんが、もじもじしてる……!
「りょーくんが可愛すぎて、鼻血が出そうだよ」
思わず鼻を押さえてしまう遥斗に、見開かれた夜空の瞳が揺れる。
「……きもちわ……」
「二度と言ったら、りょーくんのこと、きらいになっちゃうんだから!」
言うだけで泣きそうになった遥斗に、涼真がビクリと止まる。
「そんなこと、させないで! 僕、りょーくんが、だいすきだよ。どんなりょーくんだって、だいすきだよ!」
抱きしめたら、夜空の瞳が泣きだした。
「……ハル、だいすき」
ぐすぐす鼻をすする涼真を、包みこむように抱きしめる。
「うれしい、りょーくん」
真っ赤な涼真が、上目遣いで見あげてくれる。
「……あ、あの……ハルのこと……はるちゃんって、呼んでもいい?」
そうっと聞かれた遥斗は、とろけて笑った。
「もちろん。かわいい」
また泣きだしそうな涼真を抱きしめたら、ちいさな顔が遥斗の肩にうまる。
「ずっと、ずっと、はるちゃんって呼びたかった」
ちいさな頭をなでなでして、ささやいた。
「無理させて、ごめんね」
涼真は首をふる。
「……はるちゃんに、きらわれたくなくて。……きもちわ……って思われたくなくて。ほんとじゃない僕なら、かっこいー僕なら、はるちゃん、僕を見てくれるかもって……」
ふるえる涼真を、抱きしめる。
「そんなことを、りょーくんに思わせて、ごめん。10年も隣にいたのに、ほんとにごめんなさい……!」
涙声で謝ったら、涼真は首をふる。
遥斗の頬で、夜空の髪がさらさら揺れた。
「しあわせだった。はるちゃんの傍、いつも、泣きそうなくらい、しあわせ」
ぎゅう
抱きしめてくれたら、笑顔が溶ける。
「これからは、ほんとのりょーくんを見せて。
ほんとのりょーくんを、だいすきにさせて」
ささやいた遥斗は、首をふる。
「ああ、ちがう、僕はもう、ほんとのりょーくんが、だいすきだよ。
りーくんの恋日記が、大すきなんだから!」
泣きだした夜空の瞳を、ふるえる肩を、愛しい、愛しい幼なじみを抱きしめる。
「りょーくん」
「はるちゃん」
そっと涼真の涙をぬぐう。
傾けた首が、どきどきの胸が、ふわふわの唇が、ちかづいて。
とろけるような、キスをしました。
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