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さくらの花
しおりを挟む…………え、主人公のレイトって、3人のすきすきメーターMaxなの?
えーと、キーザと、ジェミと、イォ?
あんな感じで??
うわあ、全ッッ然、把握してなかった!!
そっか、主人公を避けるだけじゃなくて、主人公が攻略対象のすきすきメーターを上げるのを阻まなきゃならなかった?
…………そしたら俺、本格的に悪役じゃない??
そんなの、やだ────!!
真っ青になってる間に、さくら公園に着いたらしい。
「よーし、では、各自、お弁当を持って、解散!
3時間後に出発するから、それまでは自由時間だ。
恋せよ、少年!
以上だ!」
テチの言葉に、
「わあ!」
歓声があがって、皆がお弁当を持って、すきな人のところへ駆けてゆく。
こ、これが生恋愛イベントか──!
感動する俺の手を、ディゼが引いてくれる。
「さくら。見るんだろ」
ほわぁあああ!
生イベントスチルなディーが、か、かっこいぃいいい────!!
「うん!」
俺の背中で、お弁当がカタカタ揺れる。
満開のさくらが、蒼の天に広がった。
薄紅の花びらが、頬に、指に、舞い降りる。
ほのかに花の香が、匂い立つ。
さくらを透かして見あげる春が、透きとおる。
「いちばんすき」
囁いたら、ディゼが眉をあげる。
「俺じゃねえの?」
きょとんとした俺は、とろけて笑った。
「愛してる!」
ぎゅう
抱きついたら、
ぎゅう
抱きしめてくれる。
ちゅ
ちゅ
降る唇を、追いかける。
ふれて
とけて
ぬれる。
繋がる指まで、甘くふるえた。
「……ディー……」
「…………遠足でするのは、ちょっとなあ……」
苦い笑みを刷く唇を、唇で追いかける。
「……ん……ほら、弁当食うんだろ?」
わしゃわしゃ頭を撫でられた俺は、ちょっと拗ねてディゼを見あげる。
「……ディーは、ちゅう、したくない?」
「ちゅうで止まらないから、弁当食おうって言ってんの!」
眦を紅くしたディゼに、とろけて笑う。
「えへへへへ♡」
「あ──も──、かわい──!
喰っちまうぞ!」
「食べて、ディー♡」
「あぁああ、もう!!
そこは、だめって止めるとこだろ!!」
乱暴に髪を掻きあげるディゼが、めちゃくちゃかっこい──!
「ほら、弁当出して」
「うん!」
リュックからお弁当を取り出して、蓋を開けた瞬間だった。
バキ────!!
思いきり蹴りつけられたお弁当が宙を舞い、べしゃりと地面に叩きつけられる。
「お前の弁当なんか、誰が食うか────!」
ぴんくの髪を逆立て、レイトが叫ぶ。
「なんっで主人公の俺がひとりで、モブで悪役のお前が、ディゼとそんな仲良くなってんだよ────!」
ぴんくの瞳が、憎しみの炎を噴きあげる。
「許さねえ────!!」
レイトの絶叫の瞬間、世界が変わった。
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