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魔山羊のお母さんのミルク、すごい
しおりを挟む僕を育ててくれるので、魔山羊が、僕のお母さんだ。
ということは、子山羊は、僕のお兄ちゃんだよ。
「めええ」
お母さんのお乳を奪ってゆく僕にも、子山羊のお兄ちゃんはやさしくしてくれる。
「ありがとう、お兄ちゃん」
「ふにーにー、ふにーに」
みたいな僕の言葉に、子山羊のお兄ちゃんは、誇らしそうに鼻を鳴らして、頷いてくれた。
こっくり甘い、濃厚なのに、後味すっきりな、魔山羊のミルク、おいしー!!
歓喜して飲んでたら、僕は、あっという間に、3歳児くらいになった。
今ひとつ年頃が分かってないけど、ちょこちょこ歩いて、ちょこちょこ話せるくらいね。
愕然。
え、こんなにすぐおっきくなるものなの?
食べ応えまで最速じゃない?
魔山羊のお母さんを見あげると、ふふんと胸を張ってくれる。
死にかけだったのも、嘘みたいに元気になった。
変なほうに曲がっていた腕は、元通りにしゃんと治り、ちゃきちゃき動いてくれる。痛くない!
毒で青黒かった肌も、ちゃんと人間の肌色に蘇った!
舌足らずだけど、話せるよ!
すごい!
だけじゃなく。
僕と一緒に乳を飲んでたクロまで、喋れるようになった!
魔山羊のミルクが、凄すぎる!
僕の絶賛に、魔山羊のお母さんは、ふふんと鼻を鳴らした。
腕が治って、肌が肌色になって、元気になった僕に、魔族は目を瞬いた。
「もしかして、腕、ぐしゃぐしゃに骨折して、毒飲まされてた?」
頷く僕に、魔族のちいさな顔が歪む。
「個性かと思ってた。
……ごめん」
ぎゅう、と抱きしめてくれる魔族の腕のなかは、あったかい。
涼やかなのに、ほのかにやさしい香りがする。
前世を含めて、僕を心配してくれたのは、クロと、魔族だよ。
ちいさな手で、おおきな魔族の背を、抱きしめる。
零れた涙と、首を振った。
しかし、大きくなった僕への、
「食べ頃になったな」
魔族の感想は、心臓に悪い。
「…………食べる?」
びくびくする僕の頭を、わしゃわしゃ撫でて、魔族が笑う。
僕の目は、最近見えるようになった。
うーん、ちょっと見え過ぎるような気もするが、お母さんパワーだと思う。
魔族は、びっくりの、超絶美形だった。
さらっさらの銀煤色の髪に、柘榴の瞳の、涎が落ちそうな美青年だ。
頭からにょっきり生える角が、ねじれていて銀煤色に輝いて、めちゃくちゃかっこいい。
「はー、かっこいーね」
見えるようになった目で感嘆したら、魔族は笑った。
「今更か」
「今、見えるようになったよ」
柘榴の瞳が、瞬いた。
「そっか」
銀煤色の爪の、大きな手が、頭をわしゃわしゃ撫でてくれた。
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