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ゼドのちっちゃな村

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 勇者の村の人たちが村へと帰ってゆくと、ゼドのちっちゃな村は、いつもの日々を
取り戻した。

 ちょっと変わったのは、輝ける虹の竜、ヴァツェーリヤが毎日みたいに飛んでくることだ。


「グィザ!」

 きゅう、とグィザを抱きしめて、ひっついて離れないヴァツェーリヤに、グィザはちょっと迷惑そうにしているけれど、白虎のしっぽは、ふわふわ揺れた。

 ちょっと元気になってきた獣人の皆さんがくすくす笑って、グィザは紅い頬で
ふくれる。


「グィザにいちゃ、すなお、ちがう」

 グィザの弟がふむふむ頷いて、グィザ兄は声をたてて笑った。


「グィザ、ナハロ、ちがう」

 兄の大きな手でなでなでされたグィザは、紅い頬で目を伏せる。


「グィザ」

 ヴァツェーリヤのきらきらの虹の瞳が、グィザを見つめて、微笑む。
 ナハロとは違うグィザのすべてを抱きしめるように、腕のなかに閉じ込める。

 グィザはやっぱり、ちょっと迷惑そうな顔で、なのに頬はもっと、紅くなる。
 白虎の尻尾が、ふわふわ揺れて、周りの皆は、によによ笑った。


「わ、笑う、だめ!」

 真っ赤な頬で、ふくれるグィザは、めちゃくちゃ可愛い。







 ちょっとやる気が出たらしい風磨たんは、キュトたんに魔法を教えてもらってる。

 ぽひゅ!

 繰り出されるちいさな炎に

「おぉお!?」

 風磨が目を輝かせて、キュトの笑い声が、きらきら降った。


「素質あるよ、風磨たん。
 さすが主人公?」

「やっぱり?
 俺、やればできる子なんだよ!!」

 胸を張る風磨の隣で、

 ゴオォオオァアアオオォオ――――!!


「おおお!」

 エォナとチチェが繰り出す炎の龍に、獣人さんたちが拍手した。


「え、俺、もしかしてすごい?」

 チチェの目がきらきらして、エォナが笑う。


「にいちゃは、勇者だから」

 手を繋ぐふたりは、今日も仲良しだ。


「…………あっちは、素材が違うよな。勇者だもんな」

 いじける風磨を、ちっちゃな獣人のうさぎさんがぽふぽふしてくれる。


「ふまたん、かこいーよ」

「うわあん! あ、ありがとう――♡」

 ♡の目でとろける風磨は、今日もちょろい。







「めえぇ?」

『今日は、畑仕事しないの?』

 魔山羊のお母さんが首を傾げて、


「おお! 今からしまっす!
 雑草食み食み、お願いしまーす!」

 お母さんの言葉が解るらしいチチェが、笑顔で手を挙げた。


「ほんとに雑草だけを食べてくださるので、めちゃくちゃありがたいです」

 エォナが丁寧に頭をさげて、魔山羊のお兄ちゃんとお父さんが胸を張る。


「ふふん」

「お母さんのミルクください!」

 僕が手を挙げたら、お母さんは『仕方のない甘えん坊だね』の瞳で、
笑ってくれた。


「えへへ。お母さんのミルクが、一番すき」

「ふふん」

『そうでしょう、そうでしょう』

 お母さんも、お兄ちゃんも、お父さんも、一緒になって胸を張る。


「お母さん、僕の妹か、弟は?」

 聞いたら、ちょっと赤くなったお母さんとお父さんが、もごもごした。


「えへへ。
 楽しみに待ってます!」

「めええ」

 お母さんも、お父さんも、赤い頬で頷いてくれた。









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