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おなじ?
「な……! いやなら、可愛い顔で、ねだるみたいに、目を閉じるな!」
あわてたように、ラザが涙をぬぐってくれる。
ぎゅっと、のばしてくれたラザの指をつかまえる。
「……うれしくて」
ささやいたら、ラザは吐息した。
「……そういう嘘は、もっと、うれしそうな顔で言え」
ぐしゃりとラザの指が、俺の頭をかきまぜる。
「郷里に、想い人でもいるのか」
ごつごつのラザの指が、頬をすべる。
うっとり目を閉じた俺は、ささやく。
「『はい』と言えば、どうなさいますか?」
ラザの腕が、のびる。
たくましい腕のなかに、閉じこめられる。
「……殺すとレイは泣くだろうから。……俺を見てくれるよう、尽力する」
ちいさな声に、目をみはる。
「ラザさまが?」
凛々しい眉が、あがる。
「俺は生まれながらに、なにもかもが秀逸かのように言われるが。そんな訳ないだろう」
ごつごつの手のひらを見せてくれる。
一日、二日でなる手じゃない。
絶え間ない鍛錬と研鑽の手だ。
「レイの心を手に入れられるように、尽力する」
ごつごつの手で、頬を包まれる。
荒れた手に、そっと頬を寄せた。
「……一瞬で、手に入れてしまわれたくせに」
うらみごとのように響くささやきに、ラザの瞳がまるくなる。
「……それは俺の台詞だ」
ふくれたラザの頬が、俺の首にふれる。
「ったく、どうして……たる俺が、よりにもよって──に……」
聞こえない声は、ラザの秘密だ。
帝王陛下の弟君だと、あなたが俺に伝えたように。
あなたに、俺が、男であることを黙っているように。
俺と国が飛んでしまうから、黙っていようと思っていた。
──でも今は
あなたに厭われたくないから、真実を言いたくない。
はりぼての、おひめさまでも。
あなたが、愛でてくれるなら。
俺は、ずうっと、おひめさまで──……
……とか、せつなく浸っていましたが──!
「ともに湯を浴びよう」
によによされました──!
え、こ、ここここ寝室、一緒に寝るだけじゃなかったの……!?
や、ややややややや、やばくない!?
「は、はずかしぃ、から、無理、です──!」
涙目で、たくましい胸に両手をついて拒むのに。
「レイに、俺のことで、頭がいっぱいになってもらおうと思って」
にこにこしてる!
「もう、なっています──!」
叫んだ。
ラザの陽の瞳が、まるくなる。
俺の悲鳴は、嘘とは思えぬほど、切迫していたのだろう。
「……そうか」
ちいさくラザが笑った。
やさしく、抱き寄せられる。
「……なら、俺と同じだ」
ささやきが、耳にふれる。
くちびるが、額にふれる。
あまえるように、目を閉じたら。
くちびるが、降ってくる。
はじめての口づけは、びっくりして、どきどきして、天が落ちてきたかと思った。
二度目も、そう。
でも、幾度も、くちびるを、かさねたら。
どきどきは、加速するのに。
もっと、もっと、口づけてほしくなる。
もっと、もっと、あなたが欲しくて。
もっと、もっと、あなたのものに、して欲しい。
頬が、燃える。
「……ラザさま……」
濡れたくちびるで、うるんだ瞳で、すがるように、見あげてしまう。
「……っだから、あまり可愛い顔をするな──!」
白い寝台に、押し倒される。
「するぞ」
低い声に、ふるえる。
『してください』
言いそうな唇を、噛みしめる。
俺、男でした──!
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