おひめさまな俺、帝王に溺愛される

  *  ゆるゆ

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ないてる




 きゅっと髪を頭のうえで、やわらかな紐で縛った俺は、出勤です!

 初出勤だよ、どきどきする……!

「俺の隣で、ちょろちょろしてれば、いいから」

 恋人つなぎで、俺と手をつないでくれるラザさまが、にこにこしてる。

「……いえ、あの……ラザさま、それは、ちょっと……議会のときに、隣に座っていただくだけ、ではなく……?」

 ラザの執務室へと向かう道を先導してくれるヤヤが、引きつってる!

「なら髪を縛らなくてもいいだろう」

 ふんと鼻を鳴らすラザに、ヤヤは眉をさげた。

「ラザさまは、今まで浮いた噂ひとつもなく、寝所にひめをお呼びになることもなく、それはそれは身ぎれいでいらっしゃったのですが──」

「ほんとですか──!」

 跳びあがった俺の目は、めちゃくちゃ輝いていたと思う。
 思わず抱きついてしまった俺を、不敬だと、とがめることもなく、あたりまえみたいに抱きとめてくれたラザが目をそらす。

「……俺が、誰かと懇意になることは、帝国内の均衡を乱すことでもあり、他国との関係を変えることでもあるからな」

 ぼそぼそ、つぶやくラザさまの、まなじりが、ほんのり朱い。

 ほ、ほんとみたい……!
 めっちゃくっちゃ慣れてると思ってた!

 うれしい!

 跳びあがって喜びたい俺は、実際に跳んでいたらしい。
 ぴょこぴょこ跳ねて抱きつく俺を、ほんのり紅くなったラザが抱きとめて、とろけるようにやさしい瞳で抱きしめ返してくれる。

 大歓喜の俺とは反対に、ヤヤさんの目は、さらにげんなりに──!

「毎夜、レイさまと共寝をされることくらいは、わたくしが、噂になるのを、おさえます。
 しかし執務の場までお連れになっては、おさえられなくなります。
 人の口は、羽よりも軽く、矢よりも速いのですよ!」

 泣きそうなヤヤに、ラザの喉が鳴る。

「だから、面白いことになるだろう?」

「面白いのは、ラザさまだけです──!」

 泣いてる!

「あ、あの、ラザさま、ご迷惑なようですし、わたくしは宮で魚を愛でております」

 にこにこして辞退しようとしたのに、抱き寄せられる。

「だめだ。
 帝国と属国中から、ひめを集めたのには理由がある。
 ヤヤを相手に芝居を打とうと思っていたが──」

「俺ですか──!」

 跳びあがったヤヤが、ちょっと、うれしそうだ。

「俺に微塵も興味がないのは、ヤヤくらいだろう」

「……ラザさまに微塵も興味のないメゼア帝国人など、存在するわけがないでしょう……!」

 真っ赤になって叫ぶヤヤに、首をかしげたラザは、うなずいた。

「ああ、うん。ヤヤが勘違いしても、可哀想だからな。
 レイなら、構わない」

 刺さる言葉に、うつむいた。

 ──真実を告げられることは、どうしてこんなに、痛いのだろう。


「……最小国レィゼのひめなど、どうなっても構わないと……?」

 そうっと聞いたら、顎に指をかけられ、上向かされる。


「レイとなら、真になっても、構わない」

 瞳が、かさなる。

 唇が、かさなる。

 やわらかに、唇を食まれる。

 それだけで、あなたの言うことを、なんだって聞いてしまいそうになる。


「レイの身に危険が及ばぬように、守るから。
 刺さる視線と暴言だけ、しばし耐えてくれるか」

 指をとられて、口づけられたら。

 答えなんて、ひとつだけ。


「はい、わがきみ」






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