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ないてる
きゅっと髪を頭のうえで、やわらかな紐で縛った俺は、出勤です!
初出勤だよ、どきどきする……!
「俺の隣で、ちょろちょろしてれば、いいから」
恋人つなぎで、俺と手をつないでくれるラザさまが、にこにこしてる。
「……いえ、あの……ラザさま、それは、ちょっと……議会のときに、隣に座っていただくだけ、ではなく……?」
ラザの執務室へと向かう道を先導してくれるヤヤが、引きつってる!
「なら髪を縛らなくてもいいだろう」
ふんと鼻を鳴らすラザに、ヤヤは眉をさげた。
「ラザさまは、今まで浮いた噂ひとつもなく、寝所にひめをお呼びになることもなく、それはそれは身ぎれいでいらっしゃったのですが──」
「ほんとですか──!」
跳びあがった俺の目は、めちゃくちゃ輝いていたと思う。
思わず抱きついてしまった俺を、不敬だと、とがめることもなく、あたりまえみたいに抱きとめてくれたラザが目をそらす。
「……俺が、誰かと懇意になることは、帝国内の均衡を乱すことでもあり、他国との関係を変えることでもあるからな」
ぼそぼそ、つぶやくラザさまの、まなじりが、ほんのり朱い。
ほ、ほんとみたい……!
めっちゃくっちゃ慣れてると思ってた!
うれしい!
跳びあがって喜びたい俺は、実際に跳んでいたらしい。
ぴょこぴょこ跳ねて抱きつく俺を、ほんのり紅くなったラザが抱きとめて、とろけるようにやさしい瞳で抱きしめ返してくれる。
大歓喜の俺とは反対に、ヤヤさんの目は、さらにげんなりに──!
「毎夜、レイさまと共寝をされることくらいは、わたくしが、噂になるのを、おさえます。
しかし執務の場までお連れになっては、おさえられなくなります。
人の口は、羽よりも軽く、矢よりも速いのですよ!」
泣きそうなヤヤに、ラザの喉が鳴る。
「だから、面白いことになるだろう?」
「面白いのは、ラザさまだけです──!」
泣いてる!
「あ、あの、ラザさま、ご迷惑なようですし、わたくしは宮で魚を愛でております」
にこにこして辞退しようとしたのに、抱き寄せられる。
「だめだ。
帝国と属国中から、ひめを集めたのには理由がある。
ヤヤを相手に芝居を打とうと思っていたが──」
「俺ですか──!」
跳びあがったヤヤが、ちょっと、うれしそうだ。
「俺に微塵も興味がないのは、ヤヤくらいだろう」
「……ラザさまに微塵も興味のないメゼア帝国人など、存在するわけがないでしょう……!」
真っ赤になって叫ぶヤヤに、首をかしげたラザは、うなずいた。
「ああ、うん。ヤヤが勘違いしても、可哀想だからな。
レイなら、構わない」
刺さる言葉に、うつむいた。
──真実を告げられることは、どうしてこんなに、痛いのだろう。
「……最小国レィゼのひめなど、どうなっても構わないと……?」
そうっと聞いたら、顎に指をかけられ、上向かされる。
「レイとなら、真になっても、構わない」
瞳が、かさなる。
唇が、かさなる。
やわらかに、唇を食まれる。
それだけで、あなたの言うことを、なんだって聞いてしまいそうになる。
「レイの身に危険が及ばぬように、守るから。
刺さる視線と暴言だけ、しばし耐えてくれるか」
指をとられて、口づけられたら。
答えなんて、ひとつだけ。
「はい、わがきみ」
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