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いってらっしゃいの
しおりを挟む「がんばれ。困ったことがあったら、王宮にいるから呼べばいいよ」
微笑んでくれるトートに、ノィユは顔をあげる。
「ご迷惑をお掛けしないようがんばります!」
両親と一緒に拳を握った。
「ついてく?」
心配そうに聞いてくれるヴィルを、後ろから羽交い絞めにしたエヴィが止めてる。
「だめだめだめだめだめ! お兄さまは僕を甘やかして可愛がってくれなくちゃ──!」
「エヴィ──!」
トートが泣いてる。
「……お仕事頑張ってきたら、褒めてあげてもいい」
ふいと顔を逸らしたエヴィのまなじりが紅い。
「エヴィ──!」
歓喜にだろう真っ赤になったトートのお尻に、ぶんぶん揺れるしっぽが見える気がする。
「気を、つけて」
ヴィルが頭をなでなでしてくれる。
きゅ、とヴィルのちいさな頭を抱き寄せた。
「伴侶になったら、いってらっしゃいは、ちゅうなんだよ」
燃える頬で、ぽそぽそささやいてみた。
恥ずかしさで憤死しそうだけど、でもでも、憧れだったよ!
いってらっしゃいの、ちゅう!
「ちゅー?」
首を傾げるヴィルが尊すぎて死にそうだ。
「ちゅう」
ちゅ
あまい、あまい音をたてて、ヴィルの頬に口づける。
「……ちゅう」
ささやくノィユに、もしゃもしゃの雪の髪からのぞくヴィルの耳が真っ赤になった。
「……の、ノィユ……」
「……いや……?」
うるうるの目でしょんぼりしそうなノィユに、ヴィルはぶんぶん首を振った。
ぎゅ
ノィユのちっちゃな手を、おっきなヴィルの手が握ってくれる。
「……い、いって、らっしゃい」
ちゅ
おでこにふれる、ヴィルのやわらかな唇に、指先まで溶けてゆく。
「……ヴィル、だいすき」
ぎゅうぎゅう抱きついたら、ぎゅうぎゅう抱きしめてくれる。
「……俺も」
真っ赤な頬で、はにかむように笑ってくれる。
「あぅぁあぁアァア──! お兄さまがぁあァアァ──!」
エヴィが絶叫してる。
阻止しようと腕を伸ばすエヴィを止めていてくれたらしいトートが
「いいなぁあぁ──! えエヴィ、僕にも『ちゅう』を──!」
「ぜ、絶対絶対絶対、しないんだからぁアァ──!」
真っ赤なエヴィに、押しのけられてる。
ぎゅう、とノィユはごつごつのヴィルの手を握る。
「めちゃくちゃ離れたくないけど、でもヴィルにふさわしくなるためにも、お勉強してきます!」
断腸の思いで離そうとした指を、ヴィルの手が掴んだ。
「ヴィル?」
「……あ……」
あわてたようにノィユの指を離そうとするヴィルの手を、抱きしめる。
「うわあん! ヴィル、あいしてる──!」
絶叫した!
耳まで真っ赤になったヴィルが
「……俺も」
ぎゅっと抱きしめてくれる。
ロダがによによして
「あぁあぁアァア──! お、お兄さまがぁあぁアァア──!」
エヴィが号泣して、エヴィを押さえるトートがとてもうれしそうだ。
両親は微笑ましそうな、恥ずかしそうな赤い頬で目を伏せる。
「……出かけるたびにコレか……」
赤いまなじりで遠い目になる母に
「僕たちみたいだね!」
赤い頬で父がにこにこしてる。
………………確かに。
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