【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  ゆるゆ

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いってらっしゃいの

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「がんばれ。困ったことがあったら、王宮にいるから呼べばいいよ」

 微笑んでくれるトートに、ノィユは顔をあげる。


「ご迷惑をお掛けしないようがんばります!」

 両親と一緒に拳を握った。


「ついてく?」

 心配そうに聞いてくれるヴィルを、後ろから羽交い絞めにしたエヴィが止めてる。


「だめだめだめだめだめ! お兄さまは僕を甘やかして可愛がってくれなくちゃ──!」

「エヴィ──!」

 トートが泣いてる。


「……お仕事頑張ってきたら、褒めてあげてもいい」

 ふいと顔を逸らしたエヴィのまなじりが紅い。


「エヴィ──!」

 歓喜にだろう真っ赤になったトートのお尻に、ぶんぶん揺れるしっぽが見える気がする。


「気を、つけて」

 ヴィルが頭をなでなでしてくれる。

 きゅ、とヴィルのちいさな頭を抱き寄せた。


「伴侶になったら、いってらっしゃいは、ちゅうなんだよ」


 燃える頬で、ぽそぽそささやいてみた。

 恥ずかしさで憤死しそうだけど、でもでも、憧れだったよ!
 いってらっしゃいの、ちゅう!


「ちゅー?」

 首を傾げるヴィルが尊すぎて死にそうだ。


「ちゅう」

 ちゅ

 あまい、あまい音をたてて、ヴィルの頬に口づける。


「……ちゅう」

 ささやくノィユに、もしゃもしゃの雪の髪からのぞくヴィルの耳が真っ赤になった。

「……の、ノィユ……」

「……いや……?」

 うるうるの目でしょんぼりしそうなノィユに、ヴィルはぶんぶん首を振った。

 ぎゅ

 ノィユのちっちゃな手を、おっきなヴィルの手が握ってくれる。


「……い、いって、らっしゃい」

 ちゅ

 おでこにふれる、ヴィルのやわらかな唇に、指先まで溶けてゆく。


「……ヴィル、だいすき」

 ぎゅうぎゅう抱きついたら、ぎゅうぎゅう抱きしめてくれる。


「……俺も」

 真っ赤な頬で、はにかむように笑ってくれる。



「あぅぁあぁアァア──! お兄さまがぁあァアァ──!」

 エヴィが絶叫してる。
 阻止しようと腕を伸ばすエヴィを止めていてくれたらしいトートが

「いいなぁあぁ──! えエヴィ、僕にも『ちゅう』を──!」

「ぜ、絶対絶対絶対、しないんだからぁアァ──!」

 真っ赤なエヴィに、押しのけられてる。



 ぎゅう、とノィユはごつごつのヴィルの手を握る。

「めちゃくちゃ離れたくないけど、でもヴィルにふさわしくなるためにも、お勉強してきます!」

 断腸の思いで離そうとした指を、ヴィルの手が掴んだ。

「ヴィル?」

「……あ……」

 あわてたようにノィユの指を離そうとするヴィルの手を、抱きしめる。


「うわあん! ヴィル、あいしてる──!」

 絶叫した!


 耳まで真っ赤になったヴィルが

「……俺も」

 ぎゅっと抱きしめてくれる。


 ロダがによによして

「あぁあぁアァア──! お、お兄さまがぁあぁアァア──!」

 エヴィが号泣して、エヴィを押さえるトートがとてもうれしそうだ。
 両親は微笑ましそうな、恥ずかしそうな赤い頬で目を伏せる。

「……出かけるたびにコレか……」

 赤いまなじりで遠い目になる母に

「僕たちみたいだね!」

 赤い頬で父がにこにこしてる。


 ………………確かに。




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