【完結】もふもふ獣人転生

  *  ゆるゆ

文字の大きさ
135 / 253

たよりになるのです

しおりを挟む



「ご下命あれば一掃──」

 アオが言葉を続けるより早く、まるで樹々の影に溶けていたように、忽然と現れた闇衣たちが剣を抜く。

 リトは息をのむ。

 ジゼとカィトが抜刀するより速かった。

 群青の髪が、青空に弧をえがく。

「ぐぁ──!」

 剣を抜くことさえなく、拳と蹴りが舞うようにひるがえり、アオが着地すると同時に、昏倒させられた闇衣たちが一か所に折り重なった。

 ぴくりと青いふわふわの耳が動いた次の瞬間、アオが跳ぶ。

 なにもない虚空に向かって繰りだされた蹴りに

「ぐは──!」

 悲鳴をあげて、闇衣が落ちてきた。


「……隠匿魔法か」

 呟くカィトに、ノァが悔しそうに唇を噛み、こうべを垂れた。

「気づけなかったなんて申し訳ありません、ルァルさま」

「いや、俺も解らなかった。これは国家機密級だ」

 首を振ったルァルの隣で、昏倒している闇衣たちを一瞥したレォンは虚空を見つめ、かすかに眉をしかめた。
 ルァルが吐息する。

「……イェルムか」

 ぴょこんとリトは跳びあがる。


 聞いたことがある、気がする!
 確か、隠しキャラ? そう、隣国の王子がやってきて、アリアスといちゃいちゃするんだけど、その国の名前が、確かイェルム王国だった!

 アリアスの目も、まるくなってる。

 ゲームには闇龍とのバトルはあったけど、隣国が送ってきた暗殺者とのバトルはなかった! と思う。……たぶん。


「あ、あのあの、アリアスしゃま、何か、ご存知でしあ?」

 そうっと聞いたら、アリアスは桜の眉をしかめた。

「僕、フルコンプしたけど、ルァル殿下が暗殺されかけるとか、そんなエピソードなかったよ? 全部の台詞を言える僕が──! 見落とすはずないと思う!」

 前世の記憶もばっちりなのだろうアリアスが断言するくらいだ、きっとこれはゲームにはない展開なのかもしれない。

「……リト、どうしてアリアス殿に質問を……?」

 不審そうなカィトに、あばばばしたリトのしっぽが、ボフボフに!

 アオとすごい違いだ……
 獣人を代表してるのに、ごめなしあ……!

 あわあわしっぽを抱っこするリトに、真っ赤になった皆が胸を押さえてる。


「え、えとえと、あ、あの、アリアスしゃま、とても、よく、おべんきょ、イェルム、ご存知、かと、思て!」

 言い訳はいつもくるしい!

「やだなあ、リト、僕なんてまだまだだよ」

 照れ照れしてるアリアスがかわいい。

「リトにだけ、こっそり教えてあげるとね」

 アリアスは声をひそめた。

「イェルム王国王太子ナティヒ殿下、愛称ナティは隠しキャラで、全員でハッピーエンドを迎えて全員の印象がMaxだと現れる、最難関キャラなんだよ。僕、誰も攻略してないし、誰ともハッピーエンド迎えてないから、出る予定ないよ、きっと」

 誰も攻略してないって、それでいいのか主人公──!

 ちがう、ジゼとの恋を応援するんだった!


 苦しく軋む胸に蓋をしたリトは、アリアスを見あげる。


「な、なるほろ、えと、えと?」

 隣国の王太子は出て来ないとだいじょうぶなのかな?

 首と一緒にしっぽも傾げるリトに、皆が真っ赤になって胸を押さえてる。





しおりを挟む
感想 405

あなたにおすすめの小説

異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!

めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈ 社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。 もらった能力は“全言語理解”と“回復力”! ……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈ キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん! 出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。 最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈ 攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉ -------------------- ※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!

【新版】転生悪役モブは溺愛されんでいいので死にたくない!

煮卵
BL
ゲーム会社に勤めていた俺はゲームの世界の『婚約破棄』イベントの混乱で殺されてしまうモブに転生した。 処刑の原因となる婚約破棄を避けるべく王子に友人として接近。 なんか数ヶ月おきに繰り返される「恋人や出会いのためのお祭り」をできる限り第二皇子と過ごし、 婚約破棄の原因となる主人公と出会うきっかけを徹底的に排除する。 最近では監視をつけるまでもなくいつも一緒にいたいと言い出すようになった・・・ やんごとなき血筋のハンサムな王子様を淑女たちから遠ざけ男の俺とばかり過ごすように 仕向けるのはちょっと申し訳ない気もしたが、俺の運命のためだ。仕方あるまい。 クレバーな立ち振る舞いにより、俺の死亡フラグは完全に回避された・・・ と思ったら、婚約の儀の当日、「私には思い人がいるのです」 と言いやがる!一体誰だ!? その日の夜、俺はゲームの告白イベントがある薔薇園に呼び出されて・・・ ーーーーーーーー この作品は以前投稿した「転生悪役モブは溺愛されんで良いので死にたくない!」に 加筆修正を加えたものです。 リュシアンの転生前の設定や主人公二人の出会いのシーンを追加し、 あまり描けていなかったキャラクターのシーンを追加しています。 展開が少し変わっていますので新しい小説として投稿しています。 続編出ました 転生悪役令嬢は溺愛されんでいいので推しカプを見守りたい! https://www.alphapolis.co.jp/novel/687110240/826989668 ーーーー 校正・文体の調整に生成AIを利用しています。

【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」  洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。 子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。  人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。 「僕ね、セティのこと大好きだよ」   【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印) 【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ 【完結】2021/9/13 ※2020/11/01  エブリスタ BLカテゴリー6位 ※2021/09/09  エブリスタ、BLカテゴリー2位

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。 ----------------------------------------- 0時,6時,12時,18時に2話ずつ更新

この俺が正ヒロインとして殿方に求愛されるわけがない!

ゆずまめ鯉
BL
五歳の頃の授業中、頭に衝撃を受けたことから、自分が、前世の妹が遊んでいた乙女ゲームの世界にいることに気づいてしまったニエル・ガルフィオン。 ニエルの外見はどこからどう見ても金髪碧眼の美少年。しかもヒロインとはくっつかないモブキャラだったので、伯爵家次男として悠々自適に暮らそうとしていた。 これなら異性にもモテると信じて疑わなかった。 ところが、正ヒロインであるイリーナと結ばれるはずのチート級メインキャラであるユージン・アイアンズが熱心に構うのは、モブで攻略対象外のニエルで……!? ユージン・アイアンズ(19)×ニエル・ガルフィオン(19) 公爵家嫡男と伯爵家次男の同い年BLです。

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

白いもふもふ好きの僕が転生したらフェンリルになっていた!!

ろき
ファンタジー
ブラック企業で消耗する社畜・白瀬陸空(しらせりくう)の唯一の癒し。それは「白いもふもふ」だった。 ある日、白い子犬を助けて命を落とした彼は、異世界で目を覚ます。 ふと水面を覗き込むと、そこに映っていたのは―― 伝説の神獣【フェンリル】になった自分自身!? 「どうせ転生するなら、テイマーになって、もふもふパラダイスを作りたかった!」 「なんで俺自身がもふもふの神獣になってるんだよ!」 理想と真逆の姿に絶望する陸空。 だが、彼には規格外の魔力と、前世の異常なまでの「もふもふへの執着」が変化した、とある謎のスキルが備わっていた。 これは、最強の神獣になってしまった男が、ただひたすらに「もふもふ」を愛でようとした結果、周囲の人間(とくにエルフ)に崇拝され、勘違いが勘違いを呼んで国を動かしてしまう、予測不能な異世界もふもふライフ!

【完結】※セーブポイントに入って一汁三菜の夕飯を頂いた勇者くんは体力が全回復します。

きのこいもむし
BL
ある日突然セーブポイントになってしまった自宅のクローゼットからダンジョン攻略中の勇者くんが出てきたので、一汁三菜の夕飯を作って一緒に食べようねみたいなお料理BLです。 自炊に目覚めた独身フリーターのアラサー男子(27)が、セーブポイントの中に入ると体力が全回復するタイプの勇者くん(19)を餌付けしてそれを肴に旨い酒を飲むだけの逆異世界転移もの。 食いしん坊わんこのローグライク系勇者×料理好きのセーブポイント系平凡受けの超ほんわかした感じの話です。

処理中です...