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たよりになるのです
しおりを挟む「ご下命あれば一掃──」
アオが言葉を続けるより早く、まるで樹々の影に溶けていたように、忽然と現れた闇衣たちが剣を抜く。
リトは息をのむ。
ジゼとカィトが抜刀するより速かった。
群青の髪が、青空に弧をえがく。
「ぐぁ──!」
剣を抜くことさえなく、拳と蹴りが舞うようにひるがえり、アオが着地すると同時に、昏倒させられた闇衣たちが一か所に折り重なった。
ぴくりと青いふわふわの耳が動いた次の瞬間、アオが跳ぶ。
なにもない虚空に向かって繰りだされた蹴りに
「ぐは──!」
悲鳴をあげて、闇衣が落ちてきた。
「……隠匿魔法か」
呟くカィトに、ノァが悔しそうに唇を噛み、こうべを垂れた。
「気づけなかったなんて申し訳ありません、ルァルさま」
「いや、俺も解らなかった。これは国家機密級だ」
首を振ったルァルの隣で、昏倒している闇衣たちを一瞥したレォンは虚空を見つめ、かすかに眉をしかめた。
ルァルが吐息する。
「……イェルムか」
ぴょこんとリトは跳びあがる。
聞いたことがある、気がする!
確か、隠しキャラ? そう、隣国の王子がやってきて、アリアスといちゃいちゃするんだけど、その国の名前が、確かイェルム王国だった!
アリアスの目も、まるくなってる。
ゲームには闇龍とのバトルはあったけど、隣国が送ってきた暗殺者とのバトルはなかった! と思う。……たぶん。
「あ、あのあの、アリアスしゃま、何か、ご存知でしあ?」
そうっと聞いたら、アリアスは桜の眉をしかめた。
「僕、フルコンプしたけど、ルァル殿下が暗殺されかけるとか、そんなエピソードなかったよ? 全部の台詞を言える僕が──! 見落とすはずないと思う!」
前世の記憶もばっちりなのだろうアリアスが断言するくらいだ、きっとこれはゲームにはない展開なのかもしれない。
「……リト、どうしてアリアス殿に質問を……?」
不審そうなカィトに、あばばばしたリトのしっぽが、ボフボフに!
アオとすごい違いだ……
獣人を代表してるのに、ごめなしあ……!
あわあわしっぽを抱っこするリトに、真っ赤になった皆が胸を押さえてる。
「え、えとえと、あ、あの、アリアスしゃま、とても、よく、おべんきょ、イェルム、ご存知、かと、思て!」
言い訳はいつもくるしい!
「やだなあ、リト、僕なんてまだまだだよ」
照れ照れしてるアリアスがかわいい。
「リトにだけ、こっそり教えてあげるとね」
アリアスは声をひそめた。
「イェルム王国王太子ナティヒ殿下、愛称ナティは隠しキャラで、全員でハッピーエンドを迎えて全員の印象がMaxだと現れる、最難関キャラなんだよ。僕、誰も攻略してないし、誰ともハッピーエンド迎えてないから、出る予定ないよ、きっと」
誰も攻略してないって、それでいいのか主人公──!
ちがう、ジゼとの恋を応援するんだった!
苦しく軋む胸に蓋をしたリトは、アリアスを見あげる。
「な、なるほろ、えと、えと?」
隣国の王太子は出て来ないとだいじょうぶなのかな?
首と一緒にしっぽも傾げるリトに、皆が真っ赤になって胸を押さえてる。
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