きみの騎士

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 騎士団長の短い鋼の髪は、鍛えあげられた分厚い身体によく似合う。

 リイの憧れ、鋼の筋肉に覆われた丸太のような腕と足と腰にうっとりしかけて、あわあわしたリイは背を正す。


「お目に掛かれて光栄です、ザイン殿!」

 胸に手をあて、右足を引いて頭を下げる、騎士の礼をとったリイに、ザインは凛々しい眉を顰めた。


「…………うるさくなるな…………」

 挨拶しかしてないのに上司の評価が酷いです!

「静かにします!」

 ここで解雇されたらルフィスに逢えない!!
 必死なリイに、吹きだして笑ったザインは首を振った。


「リイの話じゃない。
 お前、鏡を見たことあるか」

「あります! 
 歯に青のりがついてないか、いつも確認しています!」

 優秀な新人だよ!
 …………たぶん。

 いや、希望!
 だから解雇反対!!!

 リイのアピールに、ザインは腹を抱えて笑った。


 ……異世界だけど、青のりあるよ。
 ミナエの川でも採れるよ。美味しいよ。

 出勤初日なのに、上司の評価はびみょうみたいです……





 光騎士殿に入ったリイは、息をのむ。

 吹き抜けの高いホールには白亜の柱が真っ直ぐ連なり、最奥の中央にひときわ高くしつらえられた光騎士長席へと続く。

 その後ろには、藍の地に白銀の星がきらめくレイサリア光国旗が掲げられていた。

 真っ白な御殿は一見簡素に見えるが、壁にはレイサリア光国の象徴、星の意匠が浮き彫りにされ、柱にはやわらかに蔦が絡まるように彫りあげられている。

 泥靴や血濡れた短靴で入っても構わないようにだろう、ふかふかの絨毯などは一切ない。
 敷き詰められた石は白く輝き、窓から射しこむ光を反射した。

 入ってすぐが、招集と伝達、出陣に備えるホールだ。
 その広やかな場に整列する光騎士の多さと、誰もが纏う気魄に目を瞠る。

 リイを一番前へと促したザインは、光騎士長席に上がると居並ぶ光騎士たちを見おろした。

「皆に紹介する。
 新たに光騎士となった、リイだ」

 ぴしりと立ったリイは、左手を胸にあて、右足を引いて頭を下げた。
 白と白銀で彩られた光騎士の装束がひるがえる。


「ミナエ出身、リイでございます。
 ご指導ご鞭撻のほど、どうぞよろしくお願い申しあげます」

 饅頭を売り過ぎて掠れた声が、真っ白な光騎士殿を伝ってゆく。


「………………絶望だ。
 僕の栄光の1年が終わった…………!」

 コルタの嘆きに、ぴしりと並んでいた光騎士たちが肩を揺らして笑った。


「残念だったな、コルタ」

「まあ、まだ美少年枠でいけるんじゃないか?」

「最年少じゃなくなったけど」

「リイの前では霞むけど」

「うわぁあああんん――――!」

 泣きじゃくるコルタに、わたわたしたリイは、声を張る。


「コルタは、めちゃくちゃ美少年です!
 歌って踊って欲しいです!」





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