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きみの傍
僕の!
しおりを挟む光王補佐としてレイティアルトの執務室で日中を過ごすようになったルフィスは、リイの隣で、レイティアルトのかんばせを羨ましそうに見つめる。
「兄さまみたいな凛々しい男になると思ってたのにな。
似てないよね」
肩を落としたルフィスが吐息する。
花のきみ、と相変わらず讃えられるルフィスは、自分の顔があまりすきじゃないみたいだけれど。
ちいさなルフィスを覚えているリイは、なんて立派に大きく成長したんだろうと、毎日がうっとりだ。
初めて出逢った日の、ちょっと突くと、くずおれてしまいそうだった貴族のおぼっちゃまのルフィスは、もういない。
どんな苦難も薙ぎ払って微笑むルフィスは、風に向かう獅子に見える。
出逢った時も、レミリア様として再会した時も、ずっと見おろしていたルフィスを見あげることになったのも、感慨深かった。
ああ、もう、ちいさいルフィスじゃないんだな。
見あげるたび、どきどきする。
「兄さま、今度の光騎士選では、絶対に! 僕の邪魔をしないでくださいね。
リイは僕のです!!」
ふくれるレミリアみたいなルフィスに、眉をあげたレイティアルトが笑う。
「リイを譲るは口惜しいな」
「絶対にあげない!
仕事はね、今まで以上に僕が手伝うから安心してよ」
「いつも三人でいればいいじゃないか」
「一緒にいても、リイは僕の騎士なの!」
ぎゅぅう、とルフィスに抱きつかれたリイの頬が燃えて、レイティアルトは声をたてて笑った。
レイティアルトの笑顔を見つめたルフィスの蒼碧の瞳に、涙が滲む。
「──兄さまが幼くして亡くなった時のために生かされていた僕は、兄さまが10歳になった日に殺される筈だった。
殺すときに哀しみがないよう遠ざけられ、母さまの、父さまの、兄さまの顔さえ知らなかった。
…………誰にも望まれない子だと思ってた。
生まれてきてはいけなかったと思ってた」
ルフィスの瞳が、揺れる。
「すべてを、兄さまが、変えてくれた」
ふるえるルフィスを、兄の腕が抱き締める。
「当たり前だ」
兄の手が、弟の髪をくしゃくしゃにする。
蒼にも碧にもきらめく瞳を涙に潤ませて、ルフィスがくすぐったそうに、とびきりうれしそうに、蕩ける頬で笑った。
胸に手を当て、頭をさげたリイが下がろうとするのを、レイティアルトが手を挙げて制する。
「義妹に聞かれて困る話など、何もない」
跳びあがるリイを、レイティアルトの腕の中から飛び出したルフィスが抱き締めた。
レミリアとは違う腕だ。
あたたかな、やさしさはそのままの、ルフィスの腕に、包まれる。
「だから、人目をはばかれ!」
叫ぶレイティアルトに、熱い頬で、ふたりで笑った。
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