【完結】ずっと、だいすきです

  *  ゆるゆ

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ぜんぶ

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 くちびるが、かさなる。

 はだえが、かさなる。

 ぬくもりが、とけて。

 といきが、もえる。


 ゲォルグの寝室で、ゲォルグの寝台で、抱きあっているだなんて、セバには夢だとしか思えない。


 口が裂けても言えないけれど
 セバが精通したとき、夢に見たのは、ゲォルグだった。

 ゲォルグが微笑んでくれるたび、ほんの指のさきがふれるたび、あまい疼きに、からだがふるえた。

 セバがゲォルグに夢中なのは誰から見てもわかるはずなのに、ゲォルグがセバを性欲処理にさえ使ってくれないのは、愛するノザのためだと思っていた。

 自分はまったくの範疇外なのだと。

 かなしく思うたび、身体はふるえた。

 天変地異でも起きて、ゲォルグが自分を抱いてくれたら、どんな心地がするだろう。


 ゲォルグのくちびるに、くちびるをかさねて。

 ゲォルグのといきに、といきをかさねて。

 ゲォルグのくちびるが、うなじにふれて。

 ゲォルグのしろい歯が、うなじを噛んで。

 ゲォルグの熱い昂ぶりが、奥の奥まで貫いてくれたら。


 どれほどの悦びが降るだろう。


 夢のなかでなら、ゲォルグは自分を抱いてくれたから。

 とろけるような、あまい、背徳の夢のはずだった。



 なのに

 最愛の、あるじが

 最愛の、あなたが

 ほんとうに、口づけて

 吐息を、肌をかさねて

 白い歯をたてて、うなじを噛んでくれたら


「──っ……ぁ、あ──!」

 過ぎる愉悦にまっしろになる視界で、セバのからだが、あまやかな弓をえがく。

 ぐしゃりと濡れた下肢と荒い息と、噴きあがる羞恥に耳が燃える。

「……ご、ごめ、なさ……!」

 ゲォルグが、カリリとうなじを軽く噛んでくれただけで……達してしまうだなんて。


 どれだけ、あなたを求めていたか

 どれだけ、あなたに餓えているのか

 濡れる身体が、燃える吐息が、ほんのささいな刺激で達してしまう身体が、あるじがふれてくださって、うれしくてたまらないと、あなたが欲しくてたまらないと、叫んでる。

 恥ずかしくて、いたたまれなくて、布団をかぶって小さくなりたいのに、わがきみから、離れたくない。


「かわいい、セバ」

 とろけるように、ゲォルグが笑ってくれる。

 愛しくてたまらないものを、やさしく包みこむように、やわらかく細められる蒼の瞳さえ、あまい。

 ほのかな紅にまなじりを染めて、いつも氷のように透きとおるかんばせが、あまやかにほどけて、くちびるが笑みをえがいてく。


「……ゲォルグ、さま……」

 わがきみが、そんなお顔をなさるなんて、10年もお仕えしてきて、初めて見ました。

 10年、ずっと、お傍にいたのに。
 知らないあなたが、たくさんいて。

 ひとつ知るたび、歓喜が満ちる。


 きっと、情欲に濡れるセバをゲォルグが見たのは、初めてだと思う。

 恥ずかしくて、たまらないのに。

 もっと、知ってほしいだなんて。


 燃える頬で、セバは、そっと、そっと、手をのばす。

 あなたに、ほんとうに届くのか、恐れるように。


 すぐに気づいたゲォルグの指が、セバの手を握ってくれる。


「あいしてる、セバ」

 とろけるように、笑ってくれる。


 うれしくて、涙があふれるだなんて、初めて知った。


「あいしています、わがきみ」

 叱られないか、ふるえる指で、あるじにすがる。


「……お慈悲を、ください、ゲォルグさま」

 燃える頬で、熱に溶けた瞳で、ささやいた。


 ゲォルグのまなじりが紅に染まる。


「俺を、ぜんぶ、セバにあげる」


 微笑みが、くちびるに、とけてゆく。






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