魔法で生きる、この世界

㌧カツ

文字の大きさ
49 / 73
Episode.3 出会いと別れのセブンロード

14話 回想~5 days~③

しおりを挟む
 僕が『デイブルーム』の食堂に着いた時には、既に昼食の時間が始まっていた。
 僕はカウンターで料理を受け取り、空いている席に座る。

 そしてフォークを手に取り食事を始めようとした時、ふと隣に誰かが座った。

「おはよう、ロトル。ていうかもう『こんにちは』か?」

「ミクトか。おはよう……で、いいんじゃない?」

 僕は料理を口に運びつつ、ミクトの疑問に答える。
 朝起きてから最初に会ったというのは事実だし、昼頃に起きようがまず最初に発する挨拶は「おはよう」なので特に間違いはないのではないかと思う。

「なんだロトル、なんかテンション低いな」

「そりゃあまあ、疲れてるんだよ」

「一晩寝たのにか?」

 確かにミクトの言う通りではあるのだが、この疲れはそういう類のものでもないような気がする。
 一晩眠ったからといって、頭の中から不安や疲れが完全に消え去るわけでもないのだ。

「分からない。でも疲れた」

「まぁ分からんでもないけどな」

 そんなことを話しつつ、二人並んで昼食を食べる。

 しかし、昨日に比べればえらく平和な光景になったものだと思う。
 殺気が肌を刺すような空間とはうってかわって、ここでは殺気よりも美味しそうな香りが鼻腔を刺激する。
 口の中に広がるのは乾いた空気ではなく、スープの温かい味だ。

「なら僕は、この平和な空間にいることで存在の意味を為せるのか?」

 平和な世界で生きていくだけで何ができるというのか。

 ただ生きるだけでは意味が無い。
 誰かに必要とされたい。誰かの助けになりたい。
 そんな欲求が頭の中に棲みついて離れない。

 僕でも俺でもない自分が、どこかから訴えかけているような気がするのだ。

 ――それをしなくてはならない、と。

「……面倒くさい」

「誰がめんどくさいだと!?」

「誰もミクトには何も言ってないから」

 ならその欲求が満たされるためには、この温かな時間を投げ出さなくてはいけないのか。

 違う。
 僅かな時間でも、探して見つけて作ればいい。
 今のような楽しい時間を、作ればいい。

 長く続くことになるであろう道の中でも、きっとそれぐらいできるはずだ。

「ご馳走様でした」

「早くね!? ちょ、ちょ待って」

「急いで食べなくていいから。はしたないからやめてくれ」

 それでも、僕には仲間がいるのだから。


-----------------------------------


「後はまだ買ってないマナポーションとかを買って終わりかな」

「三人分の用意を準備するのってこんなに大変なんだな……」

「私もう疲れたんだけど……」

 昼食の後、ルミネを加えて三人分の荷物を買い揃えた僕達は最後にポーション類を買うために道具屋に向かっていた。
 ちなみに各自自分の分の買い物には自分でお金を出してもらった。
 そのため繰り返しクエストを消化する作業が続き、やっと終わるということになった現在の時間はもう夕方を過ぎている。

 出発まであと四日ほどの時間、僕は何をしようか考えていた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

どうぞ添い遂げてください

あんど もあ
ファンタジー
スカーレット・クリムゾン侯爵令嬢は、王立学園の卒業パーティーで婚約もしていない王子から婚約破棄を宣言される。さらには、火山の噴火の生贄になるように命じられ……。 ちょっと残酷な要素があるのでR 15です。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

処理中です...