魔法で生きる、この世界

㌧カツ

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Episode.3 出会いと別れのセブンロード

17話 バーニンの街

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 道中に散らばっていた二人の荷物を回収しつつ、僕は『バーニンの街』へと歩いていた。
 あれからはこれといって大きなアクシデントも無く、着々と旅は続いた。
 と言ってものんびりしている暇など勿論無く、せっかくの綺麗な景色も無視して僕は走り続けていた。

「あ、あれが、バーニンの街……か」

 二人分程の荷物を背負い抱えて走っていたおかげで無駄に体力を消費し、バーニンの街を目の前にして僕は体力の限界を迎えていた。
 腕の中にある荷物が、やたらと重く感じる。
 しかし目の前にまで迫った街の姿を目にしてここで倒れるわけにも行かず、僕は運動不足で痛む足を酷使しつつ街の入口へと向かった。

「お、おい君。大丈夫……か?」

「え、あぁ、はい。大丈夫、です。ありがとうございます」

 大量の汗を流しながら息を荒らげている僕を見て、何か心配したのか門番が駆け寄ってきた。
 僕はそのありがたい気持ちにお礼を言いつつ、問題は無いことを告げて街の中へと足を踏み入れようとする。

「あー、大丈夫ならいいんだけどね。街に入るなら冒険者カードを見せてもらうことになるんだけど……」

「――あ」

 ようやく訪れるのだと確信した休息を前に、思わぬ壁が立ちはだかる。
 別に自分の荷物はどうでもいいのだが、二人の荷物はどこに置けばいいのだろうか。
 少し軽く感じていた荷物が、再び腕の中で重みを増した気がした。


------------------------------------------


 僕は荷物を床に下ろし、部屋のベッドの上に倒れ込んだ。

「とりあえず、一段落ついたかな」

 ――ようやく休むことが出来る。

 そう思ったのも束の間、直ぐに部屋の扉が叩かれる音がした。
 休ませて欲しいのだが。
 そんな気持ちを胸の中に抑えつつ、僕は扉をゆっくりと開く。

「俺の荷物ちょーだい」

「――――」

「あっ、ちょま」

 無言で扉を閉じ、鍵をかけてベッドの縁に座り込む。
 何か見えて聞こえたような気もするが、恐らく気のせいだろう。

 しかし何だか扉の外が騒がしいような気がして仕方がない。
 声の正体に注意ついでに文句を言うため、僕はもう一度扉を開いた。

「あ、おいロトル! いきなり扉閉めるんじゃ」

 バタリと、扉が音を立てて閉じられた。

「すみません、人の部屋の前で騒ぐのは控えてもらっていいですか?」

「誰のせいだよ!」

 扉の向こうの声の主に向かって、扉越しに話しかける。
 すると返ってきたのは、何だか聞き覚えのある声だった。

「誰ですか?」

「お前わざとだろ! 絶対にわざとだろ!」

 一層騒がしくなる声に嫌気がさした僕は、勢いよく扉を開け放った。

「あだっ!」

「ミクト? どうかしたのか?」

「お前……絶対に許さないからな……」

 鼻を抑えながらこちらを睨みつけてくるミクトに、僕は最初の言葉に対する返答を返す。

「荷物ならもう宿の人に預けたよ。受付に行けば受け取れるんじゃないかな」

「それを早く言ってくれればいいんだよ……ありがとう」

 僕の答えを聞いたミクトが、僕の部屋の前を離れて階段を降りていく。
 その背中は、いつもよりも曲がっているような気がした。

 足音が次第に薄れていき、廊下では階下から響いてくる騒がしい声しか聞こえなくなった。
 僕は部屋の中に戻り、ゆっくりとベッドに倒れ込んだ。
 その柔らかい布の感触は、僕にどこか安心感を与えてくれた。

 僕はそのまま沈んでいくような感触に身を任せ、ゆったりと夢の中に落ちていった。


------------------------------------------


 ミクトとルミネは、街の外壁に体を預けるような形で気を失っていたそうだ。
 どうやら運良く衝撃吸収の結界に受け止められたようで、ルミネは分からないがミクトの体には目立った外傷は見られなかった。
 門番をしていた衛兵に発見され、そのまま今いる宿に引き渡されたらしい。
 冒険者カードは落としていなかったようで、身分の確認に問題はなかった。

「そしてそこに僕が合流し、今に至ると」

「何でまた俺ら買い物してんの?」

 次の日の朝、僕達は朝食を済ませて大通りらしき道を歩いていた。

 ミクトが疑問を持つのも無理はない。
 僕はその質問に答える。

「『憤怒の魔本』を回収するために色々いるんだよ」

「直接触っちゃダメなのか?」

「直接触ると憤怒に侵食される」

「何その響き何か怖い」

 僕はふと見つけた店で板や棒を買い、そのまま宿の部屋に持ち帰った。
 帰り道で「俺はついてくる必要があったのか」とミクトが呟いていたが、敢えてスルーしておいた。

「さて、これで触れずに持てるはずだけど……無いみたいだな」

 あまり信じてはいなかったが、やはり奴は『憤怒の魔本』をここに送らなかったのだろうか。
 それはそれで燃え尽きるだけなのでいいのだが、もう一度探し直さなければいけないのでかなり面倒くさい。

「とりあえず、昼食まで散歩でもしてようかな」

 特にすることもないので、僕はバーニンの街を探索することにした。
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