魔法で生きる、この世界

㌧カツ

文字の大きさ
68 / 73
Episode.3-B 日常の終わり

2話 己が目を覚ました世界は何処か

しおりを挟む
 扉を開いた。
 いつもと同じ扉だった。
 変わらないドアの冷たさが、俺の手のひらに伝わって消えるはずだった。

 ――なのに、その先にあった光景はいつも通りの日常を消し去って目に飛び込んできた。

「何だよ、何処だよ……ここ」

 中世風の街並みの中で、様々な格好をした人々が歩いている。
 杖を持って歩く者や、頑丈そうな鎧に身を包む者がいる。
 髪の色もそれぞれ違うようだ。
 金髪の者も居れば、赤色の髪の者も居る。

 ここは何処だろうか。
 俺は気づかないうちにどこでもドアを潜り、ヨーロッパにでも来てしまったのだろうか。

「なわけあるか……よ」

 目にしたことのない異様な光景と、起こり得るはずのない現象の発生に、俺は思わず後退りしてしまう。

 ――そしてその背中に、硬く冷たい感触が伝わってきた。

「な、なんで壁があるんだよ……俺が、俺が開けたドアは!?」

 振り向いた視線の先にあったのは、先程から視界の中に映り込んでいたクリーム色の壁だった。
 日本のようなコンクリートの壁ではなく、レンガと思わしき物体を積み重ねて作られているようだ。
 空いている手で壁を触ってみるが、指先に砂のようなものが付くことは無い。

「日干しレンガじゃない……? 普通のレンガに色でも塗ったのか?」

 しかし、指先にペンキ等の塗料の感触が伝わってくることは無かった。
 ならばこのレンガは何で出来ているのか?

「……わっかんねえ。ここが何処なのかも、どのくらいの時代なのかも」

 振り返り、改めて周囲を見回してみる。
 すると、割と近い場所に森っぽいものや洞窟っぽいものが見えた。

 成程、通りで日干しレンガなど使われていないわけだ。

「木材や石材があるのに、わざわざ砂で作る必要はないか。ていうか周りほとんど草だし。砂見えないし」

 と、そんなことを言っているうちに、俺は自分が落ち着いてきていることに気づく。
 そこでようやく、俺はある一つの答えを見出すことが出来た。

「――これはあれか。異世界転生ってやつか」

 俺の視界に映る人々の格好は、よくよく見ればあまりにもそれらしすぎた。


------------------------------------------


「でも俺死んでないし。神様に会ってないし」

 その上買ってきたばかりの『エイトカレー』と『綾鷲』まで持っていては、転生というには無理がある気がする。
 しかし神様にも会っていなければ、召喚士的な風貌で話しかけてくる者もいない。

「あれ、こういう場合ってなんて言えばいいの? 異世界転移?」

 死んでない上に神様にも会っておらず召喚されたような痕跡もない今回の現象は、どのように表せばいいのだろうか。

 しかしまぁ、そんなことはこの際どうでもいい。
 俺の中で気になっていることが、もう一つある。

「俺パーカーにジーパンで黒目黒髪っていう感じの格好してるんだけど。何で誰も相手にしてくれないん?」

 今まで見た限りでは居なかった以上、この服装や髪色等が一般的であるとはとてもじゃないが言い難いはずだ。
 それなのに何故、好奇の目で見られるようなことや、辺りがざわついて人が集まってくるなどの恒例イベントが発生しないのか。
 因みに俺は街の大通り的なところに立っており、気がついてここに立っていた時から大きな移動はしていない。

「なんかあるよな、絶対。これで何もなかったら俺は異世界の常識に異議を唱えたい」

 鏡などはないのだろうか。
 俺の姿が俺にだけ本来の姿で見えてるとかがあるかもしれない。

 あれ? でもその場合鏡に映った俺も俺のままじゃね?

「異世界だし、ステータス的な何かに期待を――お、これは」

 適当な言葉を念じていた俺の前に、半透明の板のようなものが浮かび上がる。
 しかしそれに触れることは出来ず、指先からウィンドウの奥に抜けていくだけだ。

 そしてそこに書かれていたステータスを眺め、俺はあるものに気がついた。

「これ……は」


 名:ヒノ・カゲト
 職:―――

 生命力:68
 物攻:32
 物防:23
 魔攻:24
 魔防:19
 俊敏:17
 運:17
 魔力:33

 固有スキル
 ――――――

 ――――

 ――
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

どうぞ添い遂げてください

あんど もあ
ファンタジー
スカーレット・クリムゾン侯爵令嬢は、王立学園の卒業パーティーで婚約もしていない王子から婚約破棄を宣言される。さらには、火山の噴火の生贄になるように命じられ……。 ちょっと残酷な要素があるのでR 15です。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

処理中です...