魔法で生きる、この世界

㌧カツ

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Episode.3 出会いと別れのセブンロード

24話 はまる

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 消えた宿の跡は、昨日見たそれと変わらないものだった。
 そこにあった物だけが、他の何かを巻き込むこともなく消滅する。
 物体が空間ごと『持っていかれた』かのような痕跡は、爆発や衝撃による破壊よりも恐ろしい何かを感じさせる。

「ルミネ、立てる?」

「ぁ、うん……」

 ルミネは出たばかりの店が消滅するのを目の前で見たと言った。
 正直それほどまでに恐ろしいものなのかと思った。

 だがその考えは甘かった。甘すぎた。
 こうして目の前にしてみれば分かる。

「これに飲み込まれたら、本当の意味で消えて滅びる――!」

 ルミネが恐怖を抱いたのも無理はない。
 これは純粋に強力な『消滅』だ。
 これを目の前にすれば、相当に肝が座っている者出ない限りは恐怖を抱くに決まっている。

 そして宿の消滅が起きたとなれば、当然他の建物も街ごと――


「――?」

 何も起きない。
 またもやあの惨劇が繰り返されるのだと思った僕は、大通りへと振り向いたままの姿で硬直した。
 何処にも消滅が起きた気配はない。
 何秒経っても、何処かが消えることはない。

「どうなってる……? 宿は消えたのに、どうして周りに異変が起きない?」

 喜ぶべきことだ。
 消滅は起きたにしろ、宿が消えてしまうだけで終わったのだ。
 だがその状況は僕に大きな疑問を与えた。

 何故宿が消えたのに、ほかの建物は消えないのか。
 何故だ、考えろ。
 何故だ、何故。何故。何故。何故何故何故何故何故――



「そういう……ことか」

 閃いた。

 閃いたのだ。

「ロ、ロトル?」

「犯人は街を消したかったんじゃない! 宿屋を消したかったんだ!」

 今までの違和感が、穴の空いた壁を埋めるようにはまっていく。

「街を全て消したのは、宿屋が目的だと思わせないためのカモフラージュだ!」

 犯人はそのカモフラージュを実行するのに、決断を鈍ってしまった。
 だからミクトが宿が消える瞬間を目撃した時、周りの建物はどこも消えていなかった。

 それは最初に消したのが宿であり、消滅の目的が宿にあることの証拠になる。

「そしてあの時バーニンの街の宿屋にあって、一番の動機となりそうなのは……!」

『憤怒の魔本』。
 それはダリッツ・ファーラが持っていた『七魔道具』であり、彼の手によってバーニンの街の宿屋に送られたものだ。
 このことを知っているのは僕とダリッツだけ。
 ならば犯人はダリッツ以外に有り得ない――

「……はず、なのに。どうしてこうも釈然としない気持ちなんだ」

 ともかく、犯人はダリッツということで問題ないだろう。
 そういうことならば、今すぐに確かめなくては。

「炎の中にいるはずのあいつが、どうしてこんな事をできたのかを!」

「待ってよ、ロトル!」

 走り出そうとした僕の背中に、呼び止めるルミネの声が届く。

「何処に行くの? 一体何が――」

「直ぐに戻ってくるから。無茶もしない。だから、待ってて」

「……ロトル」

 それだけ言って、僕はもう一度大通りの方に顔を向けて走り出した。
 今度は止める声は無く、後ろ髪を引かれることはなかった。


 ただその背中を見つめる少女が。


「……嘘つき」



 そう小さく呟いたのは、誰の耳にも届かなかった。


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 短くてすみませんでした。
 連続投稿しますから、許してください!
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